1950年代後半、カメラの軽量化と同期録音(シンクロ)という技術革新は、ドキュメタリーの世界に革命をもたらしました。 イギリスのフリーシネマ運動、フランスのシネマ・ヴェリテ、アメリカとカナダのダイレクト・シネマ……。そして1995年に起きた、デジタルヴィデオカメラの発売による技術革新が、現在に至る新しい観察的なシネマの潮流を生み出しています。
ダイレクト・シネマの代表選手と言われているフレデリック・ワイズマンや、中国インディペンデント・ドキュメンタリーの雄、ワン・ビン。そして“観察映画”の想田和弘らの映画を考察しながら、ダイレクト・シネマの過去と現在を結ぶミッシング・リンクを発見し、より“事実に近づける表現”に迫る旅を、読者の皆さんと一緒に始められれば、と思っています。
[編集部より]
出版社|neoneo編集室
定 価|1000円+税
判 型|A5判
頁 数|138
ISBN|978-4-906960-10-1
刊 行|2018年7月
Contents
総特集 ダイレクト・シネマの現在
[ 巻頭インタビュー ]
想田和弘 ダイレクト・シネマから生まれた観察映画(聞き手・構成 金子遊)
論考 「観察」をめぐる一考察 想田和弘作品を見る 若林良
[ 作家特集 フレデリック・ワイズマン ]
エッセイ 正解なき映画における〝南北問題〟を真剣に考えてみる 舩橋淳
採録 ある人生のスケッチ フレデリック・ワイズマン〜抜粋〜
訳 冨田三起子(構成 高瀬郁人)
作品論 ショー・マスト・ゴー・オン 結城秀勇
エッセイ 流れる水のように ワイズマンの「営みのドキュメンタリー」 深田晃司
論考 ワイズマンのFASHION白書 フィクション篇〜映画『セラフィータの日記』をめぐって 伊藤弘了
論考 沈黙するための映画 『全貌フレデリック・ワイズマン―アメリカ合衆国を記録する』を読む 菊井崇史
[ ダイレクト・シネマとは何か ]
採録 ジャン・ルーシュ生誕百年記念シンポジウム
登壇者 諏訪敦彦 岡田秀則 マリー=クリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル 金子遊
司会 坂本安美 通訳 福崎裕子
論考 シネマ・ヴェリテの勃興 ―ジャン・ルーシュとクリス・マルケル― 東志保
論考 ダイレクト・シネマ 初めにキャメラありき 村山匡一郎
インタビュー ダイレクト・シネマと作家たち マーク・ノーネス(取材・構成 若林良
論考 カナダ、あるいはダイレクト・シネマの周辺事情 杉原賢彦
作品論 観察映画として見直してみる『ドント・ルック・バック』 若木康輔
[ 作家特集 ワン・ビン ]
インタビュー 『三姉妹~雲南の子』を語る ワン・ビン(聞き手・構成 萩野亮)
エッセイ 土本典昭とワン・ビン ―『鉄西区』を巡って 伏屋博雄
論考 ワン・ビン、光と影の演出 藤城孝輔
論考 庶民の発見 ―ワン・ビンの『鉄西区』を観る 金子遊
[ ダイレクト・シネマの現在形 ]
座談会 中国インディペンデント・ダイレクト・シネマの過去・現在・未来 秋山珠子 土屋昌明 中山大樹(聞き手・構成 佐藤寛朗)
エッセイ 「私」が探る中国の農村の歴史と記憶 ―「民間メモリー・プロジェクト」と徐星 鳥本まさき
論考 導火線に点けられた火 中国ドキュメンタリー監督とワイズマンの出会い 秋山珠子
作品論 フレーム外に広がる音の豊かさ ―『また一年』 佐藤賢
エッセイ 定点の誘惑『ドキュメント72時間』 長谷正人
エッセイ 「ノーナレ」は、テレビにとって知恵の実か 松原翔
論考 日本のダイレクトシネマに関する一考察 中根若恵
ダイレクト・シネマ作品リスト (作成 高瀬郁人)