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人のつながりと世界の行方 コロナ後の縁を考える
¥1,100
ヒトはその進化の過程において、家族や血族およびそれを超えた集団との「つながり」を育み、独自の社会を築くことで他の生物との差異を獲得し、行動範囲を拡げて数を増やしてきました。人類がここまで地球上の広い範囲に住めるようになったのは、「つながり」をつくってきたからに他なりません。 ところが近年では、家族だけを大切にし、親類づきあいや近所づきあいもあまりせず、コミュニティとの関係をほとんどもたずに暮らす人が多くなっています。また、友人も恋人もほしくない、結婚しない、家族をつくろうとしない人も増え、これについて肯定的な意見も多く耳にするようになりました。さらには若者を中心に、友人がいる人のなかでも、SNSやインターネット上でのバーチャルな「つながり」はあるものの、現実に会って会話をしたり、時間と空間を共有して何かをすることが少なくなってきている傾向があります。 しかし、そうした気運の一方で、誰にも看取られずに孤独死してしまう方がたくさんおられることや、頻発する自然災害への対応にはコミュニティの存在が不可欠なことを思えば、人間にとってリアルな「つながり」の重要性は不変です。それは人と人との接触の削減が求められるコロナ禍においても同様です。むしろ人と会えない時期のつらさは、「つながり」が人類にとってなくてはならないものであることをより強く浮かび上がらせました。 本書では、血縁・地縁・信仰縁・嗜好縁など、世界各地の民族や集団の多様な「つながり」の歴史と現在について、霊長類学、民族学、文化人類学の視点から比較・考察。共通点と差異を観察し、歴史的な変化の状況を踏まえて、コロナ禍を乗り越えて世界の人びとが安全かつ豊かに生きる方途を探ります。 [出版社より] 編著者|山田孝子 出版社|英明企画編集[シリーズ比較文化学への誘い] 定 価|1,000円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|191 ISBN|978-4-909151-06-3 初 版|2020年09月 Contents 刊行にあたって 論考 「霊長類学から考える『つながり』と人間社会──共鳴力と共感力が築いた人類の歴史」山極寿一 座談会Ⅰ 「『つながり』の変容から考える日本の未来──AI 時代にも変わらない共有・共感の必要性」小河久志+桑野萌+小西賢吾+山極寿一+山田孝子 論考 「移動する人々のつながり──カザフ草原に生きる家族の事例から」藤本透子 論考 「ローカル/グローバルをこえるつながりのダイナミズム──チベットのボン教徒を事例に」小西賢吾 論考 「結婚と「つながり」のかたち──中央アジア南部のムスリム社会」和崎聖日 座談会Ⅱ 「『つながり』を取り戻す比較文化力の可能性──ネットから離れて未知のフィールドへ」小河久志+桑野萌+小西賢吾+坂井紀公子+藤本透子+山極寿一+山田孝子 論考 「人はどのような『つながり』のもとで生きてきたのか──希求される『つながり』の未来を読む」山田 孝子 Editor 山田 孝子 Takako Yamada 金沢星稜大学人文学部教授/京都大学名誉教授。専門:文化人類学、比較文化学。研究テーマ:チベット系諸民族の宗教人類学的・民族誌的研究、琉球諸島・ミクロネシアの自然誌的研究、アイヌ研究、シャマニズム、文化復興、エスニシティ。
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弔いにみる世界の死生観
¥1,100
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死と死後の世界をどう認識し、いかなる葬送儀礼を執り行って送り出すのか。 死者と生者との関わりをいかに取り結び、どんな供養をいつまで続けるのか。 そもそも死とは恐れるべきものか、喜ぶべきものなのか──。 死に対する考え方は、世界の各民族・宗教によってさまざまです。 輪廻転生の考えに基づいて遺体を「器」としか捉えていない人びともいれば火葬など遺体が損壊されることは許されないと考える社会も存在します。 「あの世」の存在を認め、死後はそこに行き特定の時期に「この世」に戻ると考える社会もあれば来世での復活までは死者はお墓で待機していると考える民族もいます。 こうした死に対する多様な考え方とそれに基づく弔いの方法はすべて、個人では受け止めきれない人の「死」という社会的喪失をいかに受け止めて乗り越えてゆくかその知恵と方法論が蓄積され結晶化されたものだと考えることができます。 本書では、日本、ヨーロッパ、アフリカ、インド、中央アジア、東南アジア、ミクロネシア、極北地域などの各地について仏教、イスラーム、キリスト教等の教義に基づく弔いのありようと死生観・来世観を比較して観察し世界の各地に暮らす人びとが、全生物に共通して訪れる「死」をいかに受け容れ乗り越えているのかを学びます。 [出版社より] 編 者|小西賢吾・山田孝子 出版社|英明企画編集[シリーズ比較文化学への誘い] 定 価|1,000円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|176 ISBN|9784909151056 初 版|2019年11月 Contents 座談会1 「死」と「死者」と「死後」のとらえ方―死は悪であり、死者は畏怖の対象なのか 論考・人はなぜ弔うのか―「弔い」の宗教的・社会的意味の比較文化 座談会2 イスラームとキリスト教の弔いと死生観―葬送、追悼、供養の儀礼にみるその特徴 論考・キリスト教における弔いと死者との交わり 座談会3 日本における弔いの現状と未来―「死」との断絶を克服する必要性 論考・金沢における戦死者の「弔い」―招魂祭の空間の変遷と祝祭性に着目して 論考・「あの世」が照らし出す「この世」―弔いの比較文化からみえるもの Editor 小西賢吾 Kengo Konishi 金沢星稜大学教養教育部准教授。専門は文化人類学。研究テーマは宗教実践からみる地域社会・共同体論。チベット、ボン教徒の民族誌的研究。 山田 孝子 Takako Yamada 金沢星稜大学人文学部教授/京都大学名誉教授。専門:文化人類学、比較文化学。研究テーマ:チベット系諸民族の宗教人類学的・民族誌的研究、琉球諸島・ミクロネシアの自然誌的研究、アイヌ研究、シャマニズム、文化復興、エスニシティ。
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文化が織りなす世界の装い
¥1,100
人はなぜ装うのか──。 どのような素材や染料を用いて、どんな文様が描かれた服を、いかなる場面で着用する選択をしているのか。私たちも含む世界の人びとの装いには、個人の嗜好のみならず、帰属する社会や集団の文化や価値観が反映されています。 本書では、衣服の起源から素材や加工技術の発見とトランスナショナルな拡散までの「装い」をめぐる歴史を追い、現代における世界の「装い」の諸相を比較するなかから、装う行為および衣服そのものに表れる民族性や地域性を考えます。 [出版社より] 編 者|山田孝子・小磯千尋 出版社|英明企画編集[シリーズ比較文化学への誘い] 定 価|1,000円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|191 ISBN|9784909151049 初 版|2019年01月 Contents 座談会1 装う素材と技術の発見と伝播―なにを用いて、どう加工し、いかに染めるのか 論考 人はなぜ装うのか―「装い」の起源と多様な展開からみる 論考 更紗がつなぐ装いの文化―インドからヨーロッパ、アフリカ、そして日本 座談会2 地域性・社会性の表象としての衣服―いつ、どんな場面で、なにを、いかに纏うのか 論考 伝統ある絞り染め布をファッションとしてまとう―装いからみる現代インド社会の変容 論考 「装い」からケニアの現在を読み解く―プリント更紗と生活環境を手がかりに 論考 オーストラリア先住民アボリジニと装い―伝統と近代の織りなしかた 座談会3 現代の「装い」にみる宗教性・ジェンダー・個別化―宗教間・地域間・男女間・時代間の比較から 論考 インドを表象する装いの変遷―都市部の観察からみえる男女差 論考 「加賀友禅」という文化表象―誰がブランドを生み出したのか Editor 山田 孝子 Takako Yamada 金沢星稜大学人文学部教授/京都大学名誉教授。専門:文化人類学、比較文化学。研究テーマ:チベット系諸民族の宗教人類学的・民族誌的研究、琉球諸島・ミクロネシアの自然誌的研究、アイヌ研究、シャマニズム、文化復興、エスニシティ。 小磯 千尋 Chihiro Koiso 金沢星稜大学教養教育部准教授。専門:インドの宗教・文化。研究テーマ:ヒンドゥー教におけるバクティ、マハーラーシュトラ地域研究、インド食文化。
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マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界
¥2,750
伝説の映画監督が遺した珠玉の作品群を読み解く——。 『細い目』『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ』『タレンタイム』『ラブン』等の作品を通じて「もう一つのマレーシア」を描き、世界に感動をよんだ不世出の映画監督ヤスミン・アフマド。彼女が遺した長編映画6作品と短編1作品を、民族、宗教、言語などの社会的背景を踏まえて多角的に読み解き、その特徴と魅力、より深い愉しみ方を紹介します。 ヤスミン作品を支えた映画人・舞台人、ヤスミンの遺志を継ぐ者たちの情報や、役者名・登場人物名一覧、上映データと劇中に登場する食べ物、音楽、詩などの参考情報等も収録。没後10年を経てなお人びとを魅了し続ける混成的・多層的・多義的な物語世界=「ヤスミン・ワールド」の全貌に迫ります。 読めばヤスミン作品の新たな姿が立ち上がり、マレーシア社会の姿がみえてくるとともに作品を観たくなる――そんな映画と世界の読み解きガイドです。 [出版社より] 編著者|山本博之 出版社|英明企画編集 定 価|2,500円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|480 ISBN|978-4-909151-21-6 初 版|2019年7月 Contents ■はじめに――現実と切り結ぶ「映画の力」を珠玉の作品群にみる ■第1部 ヤスミン・アフマド作品の混成的な特徴と魅力――演出、情報提示、脚本、翻訳の視点から 第1章 演出しない演出─演技させるのではなく物語を引き出す 第2章 綿密に計算された情報の提示─余白の解釈を託しつつ常識を揺さぶる 第3章 脚本に見る物語の継承と多層化─マレーシア映画史におけるヤスミン 第4章 文化的基盤の読解と翻訳を希求する作品世界─背景の読み解きと多色字幕 ■第2部 多層的・多義的物語世界の愉しみ方――長編六作、短編一作を読み解く ①オーキッド三部作『細い目』/『グブラ』/『ムクシン』 「もう一つのマレーシア」を美しく描く……山本 博之 約束と父性――オーキッドの「結婚」……山本 博之 共同体の決まり――「いなくなる」こと……山本 博之 オーキッドとジェイソンの物語のもう一つの結末……山本 博之 許しはいつも間に合わない……野澤 喜美子 ジェイソンの母が照らす「もう一つのマレーシア」……篠崎 香織 夢の中のあなた――夢中人と愛の期限……及川 茜 マレー人少女の心をつかんだ金城武と『ラヴソング』……宋 鎵琳・野澤 喜美子 「歌神」サミュエル・ホイの歌による予感と鎮魂……増田 真結子 ジェイソンが本名を名乗らなかったわけ……増田 真結子 「上海灘」が流れるとき……増田 真結子 ヤスミン作品を支えるタイ音楽のフィーリング……秋庭 孝之 タゴールの詩にみえる普遍的な人間愛……深尾 淳一 マレーシアのガザル音楽……山本 博之 ヤスミンとオートバイ……山本 博之 一二歳の旅――ヤスミン映画と児童文学……西 芳実 ②『ムアラフ』 内容紹介 ブライアンは「改宗」したのか……山本 博之 ロハナとロハニが唱える数字……山本 博之 相対化で変わりうる「改宗」の意味……光成 歩 「家路」の旋律が表すもの……増田 真結子 『ムアラフ』に登場するムアラフと再誕……山本 博之 ③『タレンタイム』 内容紹介 「月の光」、そして「もう一つのマレーシア」……山本 博之 翻訳可能性と雑種性――『タレンタイム』に集う才能たち……山本 博之 死による再生と出発――ヤスミンを送る映画……山本 博之 届かない歌に込めた祈り……野澤 喜美子 茉莉花の物語……及川 茜 ビッグフットを求めて――ヤスミンが描く家族のかたち……西 芳実 一七歳の試練――SPMを控えた少年少女の群像……金子 奈央 「ライラとマジュヌン」――『タレンタイム』に至るイスラム文学の系譜……山本 博之 『タレンタイム』にみるマレーシアのインド系世界……深尾 淳一 ④『ラブン』 内容紹介 都会暮らしに慣れたマレー人も……山本 博之 心の庭に招き入れる寛容さ……野澤 喜美子 見えざるものを見る力――ヤスミンとユーハンをつなぐもの……西 芳実 ⑤『チョコレート』 甘くて苦い決意……山本博之 ■第3部 ヤスミン・ワールドを支える人びと――先行の映画人・舞台人たちの物語 ハリス・イスカンダル(スタンダップ・コメディアン/俳優/監督) アイダ・ネリナ(女優) トー・カーフン(脚本家・監督・俳優/ジャーナリスト/書店経営者) ナムロン(俳優/監督) ミスリナ・ムスタファ(女優/芸術家) ラヒム・ラザリ(俳優/監督) イェオ・ヤンヤン(女優) アゼアン・イルダワティ(女優/歌手) ジット・ムラド(脚本家/俳優/スタンダップ・コメディアン) スカニア・ベヌゴパル(女優/演劇人) ■第4部 伴走者・継承者たちの歩み――約束を守り遺志を継ぎ伝える者 ジョビアン・リー――生涯を捧げてヤスミンのメッセージを伝え続ける永遠の「パートナー」 ホー・ユーハン――映画という絆で結ばれた唯一無二の「盟友」 シャリファ・アマニ――見出され開花した才能が期待を集める美しく強き「娘」 ■資料 ①長編監督作品 上映基本データと参考情報 ②ヤスミン・ワールド人名一覧(演者名・役名索引) ③ヤスミン・アフマド年譜 参考・参照文献一覧 あとがき 編著者略歴 Editor 山本 博之 Hiroyuki Yamamoto 京都大学東南アジア地域研究研究所准教授/混成アジア映画研究会代表。専門は東南アジア地域研究/メディア研究。研究テーマはナショナリズムと混血者・越境者、災害対応と社会、混成アジア映画。主な著書に、『映画から世界を読む』(京都大学学術出版会、2015年)、Film in Contemporary Southeast Asia: Cultural Interpretation and Social Intervention(編著、Routledge、2012)、『復興の文化空間学――ビッグデータと人道支援の時代(災害対応の地域研究 1)』などがある。