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この世の喜びよ
¥660
SOLD OUT
娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼びさましていく芥川賞受賞作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。 ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、 父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。 [出版社より] 著 者|井戸川射子 出版社|講談社[講談社文庫] 定 価|600円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|288 ISBN|9784065369593 発 行|2024年10月 Contents この世の喜びよ マイホーム キャンプ Author 井戸川 射子 Iko Idogawa 1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。’19 年、同詩集にて第 24 回中原中也賞を受賞。’21 年、『ここはとても速い川』で第 43 回野間文芸新人賞受賞。'23年、本書で第168回芥川賞受賞。著書に『する、されるユートピア』(青土社)、詩集『遠景』(思潮社)、『この世の喜びよ』(講談社)がある。
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キーウで見たロシア・ウクライナ戦争
¥1,320
SOLD OUT
ウクライナ在住16年の記者が語る「戦争のある日常」。 ロシア・ウクライナ戦争に関して、戦局の展望やロシア軍の残虐行為、軍事支援、和平問題といった多くの人の関心事については多様な報道や論考が発表されてきた。しかし、その議論の狭間に、注目されない事実がある。ウクライナ国民が戦争下でどのように生活し、何を感じているかである。 そんな「戦争のある日常」について、2008年から現地に暮らすウクライナ国営通信日本版の編集者が包み隠さず語ったのが本書である。空襲、物資、娯楽、徴兵、復興……過大評価でも過小評価でもない、生活の中にある等身大の戦争を知り、考えるための必読書。 [出版社より] 著 者|平野高志 出版社|講談社 発 行|星海社[星海社新書] 定 価|1,200円+税 判 型|新書判・並製 頁 数|192 ISBN|978-4-06-537679-9 発 行|2024年11月 Contents 第1章 戦時下の生活 食糧や水、電気やガスは足りていますか? 生活用品で特に不足しているものはありませんか? 外国製品はどれくらい流通していますか? ロシアの全面侵攻前後、学校や会社、役所やお店の様子はどうでしたか? ほか 第2章 ウクライナで考えるロシアの全面侵略戦争 ウクライナの人が考える「戦争の終わり」とは何ですか? 日本では核使用の脅威が強調されますが、ウクライナの最大の懸念事項も核戦争ですか? キーウがほぼ元の日常を取り戻したタイミングはいつですか? キーウと他地域で、ウクライナ国内でも温度感の違いはありますか? ほか 第3章 戦時下エッセイ ウクライナの友人たちと戦争 戦時下ウクライナにおける日本 Author 平野 高志 Takashi Hirano ウクライナ国営通信『ウクルインフォルム』日本語版編集者。鳥取県出身。2004年、東京外国語大学外国語学部ロシア・東欧課程ロシア語専攻卒業。2013年、リヴィウ国立大学修士課程修了(国際関係学)。2014年から在ウクライナ日本国大使館専門調査員、2018年よりウクルインフォルム通信日本語版編集者。ウクライナのキーウ在住。著書に『ウクライナ・ファンブック』(パブリブ、2020年)、監修書に『美しきウクライナ 愛しき人々・うるわしの文化・大いなる自然』(日経ナショナルジオグラフィック、2023年)がある。
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光をえがく人
¥770
SOLD OUT
東アジアのアートが照らし出す五つの物語。その一つ一つが大切な人との繋がりを浮かび上がらせる。世界の「今」を感じさせる小説集。 「ハングルを追って」 ハングルが書き込まれたアドレス帳を拾った美大事務職の江里子は、油画科の親友に相談し、ソフィ・カルにちなんで韓国へ行ってアドレス帳の持ち主を探すことに……。 「人形師とひそかな祈り」 伝統の御所人形を作り続ける正風は子どもにも弟子にも恵まれず、そろそろ工房を畳もうと考えていた。そんな折、フィリピンからの留学生を紹介され心を開いていく……。 「香港山水」 現代水墨画家の成龍は、コレクターたちのパーティに駆り出される。そこで本土の実業家の夫人・彩華と出会い、デモ隊と警察が衝突する混乱のさなかに二人は再会し……。 「写真家」 有名な写真家だった父が、記憶をなくして海外から帰国。娘は世話をしながら、母から写真家としての父の話を聞き、生涯を辿ることになる。知らなかった真実がそこに……。 「光をえがく人」 ミャンマー料理店の店主に、自国の政治犯についての話を聞くことになった。学生のころ反政府運動に加わって投獄され、劣悪な監獄生活のなかでの奇妙な体験とは……。 [出版社より] 著 者|一色さゆり 出版社|講談社[講談社文庫] 定 価|700円+税 判 型|文庫判 頁 数|300 ISBN|978-4-06-532065-5 初 版|2023年06月 Author 一色 さゆり Sayuri Isshiki 1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。
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月ぬ走いや、馬ぬ走い
¥1,650
第67回群像新人文学賞受賞!新たな戦争の時代に現れた圧倒的才能!21歳の現役大学生、衝撃のデビュー作。先祖の魂が還ってくる盆の中日、幼い少年と少女の前に、78年前に死んだ日本兵の亡霊が現れる――。時空を超えて紡がれる圧巻の「語り」が、歴史と現在を接続する。 「読んだものを茫然とさせ、彼のいままでを氷づけにし、そのうえで、読むことをとおしてあたらしい魂を宿らせる、そんな小説でありたい……テクストでの魂込め(まぶいぐみ)とでも呼ぶべきところが、ぼくの目標です」 ——豊永浩平(受賞のことば) ぼくがここにいて、そしてここはどんな場所で、なによりここでぼくはこうして生きてきた、ってことを歌って欲しいんだ、ほとばしるバースはライク・ア・黄金言葉(くがにくとぅば)、おれらは敗者なんかじゃねえぞ刻まれてんのさこの胸に命こそ宝(ぬちどぅたから)のことばが、月ぬ走いや、馬ぬ走いさ! [出版社より] 「島尾敏雄ほか先人のエコーを随所に響かせながら、沖縄に深く堆積したコトバの地層を掘り返し、数世代にわたる性と暴力の営みを、『フィネガンズ・ウェイク』的な猥雑さで、書きつけた作品。Z世代のパワフルな語部の登場を歓迎する」 ―― 島田雅彦 「十四章の構成で沖縄の近現代史を描き切る、しかも連関と連鎖、いわば「ご先祖大集合、ただし無縁者も多い」的な賑わいとともに描き切る、という意図はものになった、と私には感じられた。/この小説はほぼ全篇、ある意味では作者自身のものではない言葉で綴られていて、だからこそ憑依的な文体を自走させている。つまり、欠点は「長所」なのだ、と私は強弁しうる。要するにこの「月ぬ走いや、馬ぬ走い」は小さな巨篇なのだ」 ―― 古川日出男 著 者|豊永浩平 出版社|講談社 定 価|1,500円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|160 ISBN|978-4-06-536372-0 初 版|2024年07月 Author 豊永 浩平 Kohei Toyonaga 2003年、沖縄県那覇市生まれ。現在、琉球大学在学中。本作で第67回群像新人文学賞を受賞。
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日本料理史
¥1,408
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寿司も天ぷらも精進料理も、その起源は海外にあった。古代から現代まで、和食の料理体系の全貌を描く。 いまや世界中で愛される日本食は、どのように生まれ、現在の姿になったのか。本格的に米を採り入れた弥生時代、茶の湯と懐石料理の戦国時代、料理文化が花開いた江戸時代、西洋料理が入ってきた明治時代、そして国際化・多様化の進む現代へ――。 食器、調理法、食事作法から国家・社会・経済との関わりまで、沖縄・北海道を含むあらゆる日本の食文化を網羅する通史。増補決定版。 [出版社より] 著 者|原田信男 出版社|講談社[講談社学術文庫] 定 価|1,280円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|320 ISBN|978-4-06-535678-4 発 行|2024年07月 Contents はじめに――和食という料理 序 章 食の意義と日本料理 第一章 日本料理の前史と文化――先史時代の食文化 第二章 古代国家と食事体系――日本料理の源流 第三章 中世料理文化の形成と展開――大饗、精進、本膳そして懐石 第四章 近世における料理文化の爛熟――自由な料理と庶民の楽しみ 第五章 明治の開化と西洋料理――西洋料理の受容と変容 第六章 大正・昭和の市民社会と和食――日本料理の変容と展開 終 章 料理からみた日本文化 補 章 平成・令和の食――メモ風に コラム1 スシ コラム2 テンプラ コラム3 スキヤキ おわりに 学術文庫版あとがき 参考文献 参考史料 索 引 Author 原田 信男 Nobuo Harada 1949年生まれ。史学博士。明治大学大学院博士後期課程退学。現在,国士舘大学名誉教授。主な著書に『江戸の料理史』(サントリー学芸賞受賞),『歴史のなかの米と肉』(小泉八雲賞受賞),『中世村落の景観と生活』(学位論文)『江戸の食生活』『「共食」の社会史』『食の歴史学』『日本人はなにを食べてきたか』『義経伝説と為朝伝説』『豆腐の文化史』など多数。
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虎のたましい人魚の涙
¥682
SOLD OUT
発売即重版。『うたうおばけ』『桃を煮るひと』最注目の著者による、名エッセイ集。 八月の木曜日、朝八時半すぎ。わたしは通勤中に、琥珀のピアスを衝動買いした――。いま、いまが、いまじゃなくなるなら、いまのわたしが、いまのわたしで、いまを書く。 会社員と作家の両立。書くこと、働くこと。そして、独立。へとへとの夜にじんわり心にしみる23編のエッセイ集。文庫版あとがき収録。 [出版社より] 「花束よりも眩しくて鮮やかな言葉を胸に私たちも、今日という日へ祝祭を」 ――杉咲 花 著 者|くどうれいん 出版社|講談社[講談社文庫] 定 価|620円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|224 ISBN|978-4-06-535422-3 発 行|2024年04月 Author くどう れいん 作家。1994年生まれ。岩手県盛岡市出身・在住。著書に、第165回芥川賞候補作となった小説『氷柱の声』、エッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』『虎のたましい人魚の涙』『桃を煮るひと』、歌集『水中で口笛』、第72回小学館児童出版文化賞候補作となった絵本『あんまりすてきだったから』などがある。俳句短歌は工藤玲音名義で活動。
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うたうおばけ
¥682
SOLD OUT
全国の書店員から熱烈な支持。最注目の著者による、大反響エッセイ文庫化。 人生はドラマではないが、シーンは急にくる。わたしたちはそれぞれに様々な人と、その人生ごとすれ違う。だから、花やうさぎや冷蔵庫やサメやスーパーボールの泳ぐ水族館のように毎日はおもしろい―― 。 短歌、小説、絵本と幅広く活躍する著者が描く、「ともだち」との嘘みたいな本当の日々。 大反響の傑作エッセイ。文庫版あとがき収録。 [出版社より] 著 者|くどうれいん 出版社|講談社[講談社文庫] 定 価|620円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|224 ISBN|978-4-06-532877-4 発 行|2023年10月 Contents うたうおばけ/ミオ/アミ/まみちゃん/Sabotage/パソコンのひと/内線のひと/ 瞳さん/謎の塚澤/暗号のスズキくん/物理教師/回転寿司に来るたびに/ 雪はおいしい/一千万円分の不幸/八月の昼餉/イナダ/不要な金属/ かわいいよね/冬の夜のタクシー/ロマンスカーの思い出/抜けないボクシンググローブ/ からあげボーイズ/エリマキトカゲ/きぼうを見よう/秩父で野宿/うにの上/ まつげ屋のギャル/桃とくらげ/ひとり占め/クロワッサン/終電二本前の雷鳴/ 白い鯨/バナナとビニニ/わたしVS(笑)/ふきちゃん/ 死んだおばあちゃんと死んでないおばあちゃん/喜怒哀楽寒海老帆立/ 山さん/あこがれの杯/あとがき/文庫版あとがき Author くどう れいん 作家。1994年生まれ。岩手県盛岡市出身・在住。著書に、第165回芥川賞候補作となった小説『氷柱の声』、エッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』『虎のたましい人魚の涙』『桃を煮るひと』、歌集『水中で口笛』、第72回小学館児童出版文化賞候補作となった絵本『あんまりすてきだったから』などがある。俳句短歌は工藤玲音名義で活動。
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黒人理性批判
¥2,365
「黒人」の歴史は奴隷制や植民地の過去と切り離すことができない。1957年にカメルーンに生まれ、フランスやアメリカで学んだアシル・ムベンベ(Achille Mbembe)は、主著となる本書(2013年)を「世界が黒人になること」と題された「序」から始めた。それは、奴隷制や植民地が特定の人種に限られたものではないこと、そしてすでに過去のものとなった事態ではないことを冒頭で宣言することを意味している。新たな奴隷制や植民地、そして人種差別は形を変えて席捲しうるし、現にしている。それを可能にする構造が今の世界にはある、ということにほかならない。 だからこそ、不幸や苦痛、弾圧や収奪の歴史だった「黒人」の歴史を知り、共有しなければならない。そのとき「黒人」には新たな意味が与えられる。著者は言う。「途上にある者、旅に出ようとしている者、断絶と異質性を経験する者の形象として、「黒人」を新たに想像しなければならない。しかし、この行路と大移動の経験が意味をもつためには、アフリカに本質的な役割を与えなければならない。この経験は私たちをアフリカに回帰させ、または少なくともアフリカというこの世界の分身を通じて方向転換しなければならない」。 アフリカから到来する何か、「黒人」から到来する何かにこそ、悲惨にあふれ、いや増すことを予感するしかない現在の世界を普遍的に、そして原理的に転換する可能性はある。歴史的事実を踏まえつつその意味を明らかにした本書は、エドゥアール・グリッサンの言葉を借りるなら〈全-世界〉に向けられる希望の書である。 [出版社より] 著 者|アシル・ムベンベ 訳 者|宇野邦一 出版社|筑摩書房[講談社選書メチエ] 定 価|2,150円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|344 ISBN|978-4-06-537793-2 初 版|2024年11月 Contents 序 世界が黒人になること 眩暈するような組み立て/未来の人種 1 人種主体 仮構作用と精神の閉域/新たな等級化/「黒人」という実詞/外観、真実、幻影/囲い地の論理 2 幻想の井戸 猶予中の人類/所属決定、内面化、そして反転/白人の黒人と黒人の白人/名前のパラドックス/世界の巨像/世界の分割/国家‐植民地主義/軽薄さとエキゾティズム/みずから理性を失うこと/友愛の限界 3 差異と自己決定 自由主義と急進的悲観主義/誰もと同じ人間/普遍的なものと特殊なもの/伝統、記憶、そして創造/諸々の世界の交通 4 小さな秘密 支配層の諸々の歴史/謎の鏡/商品のエロティシズム/黒人の時間/身体、彫像、肖像 5 奴隷のためのレクイエム 多様性と超過/ぼろぼろの人間/奴隷と亡霊について/生と労働について 6 主体の臨床医学 主人とその黒人/人種の闘争と自己決定/人間への上昇/大いなる喧噪/被植民者の解放的暴力/栄光の影/民主主義と人種の詩学 エピローグ たった一つの世界しかない 訳者あとがき Author アシル・ムベンベ Achille Mbembe 1957年生まれ。カメルーンの哲学者・歴史学者・政治学者。パンテオン=ソルボンヌ大学で歴史学の博士号を取得し、パリ政治学院で政治学の専門研究課程を修了。コロンビア大学、ペンシルヴェニア大学、イェール大学などで教鞭を執ったのち、アフリカに戻る。現在、ウィットウォーターズランド社会経済研究所(ヨハネスブルグ)研究主任。主な著書として、本書(2013年)のほか、Les jeunes et l’ordre politique en Afrique noire (1985); De la postcolonie (2000); Sortir de la grande nuit (2010); Brutalisme (2020)などがある。 Translator 宇野 邦一 Kuniichi Uno 1948年生まれ。パリ第8大学哲学博士。立教大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想、映像身体論。主な著書として、『ドゥルーズ 流動の哲学』(講談社選書メチエ、のち講談社学術文庫(増補改訂))、『反歴史論』(せりか書房、のち講談社学術文庫)、『非有機的生』(講談社選書メチエ)ほか。主な訳書として、アントナン・アルトー『神の裁きと訣別するため』、『タラウマラ』(以上、河出文庫)、ジル・ドゥルーズ『フランシス・ベーコン』(河出書房新社)、『プルーストとシーニュ』(法政大学出版局)、ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス』(河出文庫)、『カフカ』(法政大学出版局)ほか。
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クソったれ資本主義が倒れたたあとの、もう一つの世界
¥1,980
「株式市場をぶっ壊せ。21世紀の革命は、いま始まったばかりだ」 ——斎藤幸平 「公平で正しい民主主義」が実現した2025年にいるもう一人の自分と遭遇した。分岐点は2008年、そうリーマンショックがあった年だ。2011年に「ウォール街を占拠せよ」と叫んだ、強欲な資本家と政治家に対する民衆の抗議活動はほどなく終わったが、「もう一つの世界」では別の発展をたどることになった。資本主義消滅後のパラレルワールドは、はたして新たなユートピアなのか、それとも? 『父が娘に語る、美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』著者による衝撃のストーリー。 [出版社より] 著 者|ヤニス・ヴァルファキス 訳 者|江口泰子 出版社|講談社 定 価|1,800円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|362 ISBN|978-4-06-521950-8 発 行|2021年09月 Contents <資本主義が滅びた「もう一つの世界」では……> →銀行がなくなる 残るのは中央銀行1行だけ →株式市場がなくなる 社員は1人1株、議決権1票 →独占巨大資本がなくなる GAFA消滅 →格差がなくなる 中央銀行が国民全員に定額を給付 →上司がいなくなる 好きな相手とチームをつくり基本給は全員同額 分岐点は2008年/この世界と異なる選択をした「もう一つの世界」/パラレルワールド/S F/経済学/ギリシャ哲学/オルタナティブストーリー/デジタル化はプロレタリア化/資本主義の終焉?/新しい社会主義?/サッチャリズム/スターリン/ジェフ・ベゾス/リーマンブラザーズ/貨幣/土地/議決権/強欲資本家/1人1株1票/スター社員も新入社員も基本給は均等割/パーキャブ口座/ヒエラルキーの消滅/銀行の消滅/イデオロギー/コーポ・サンディカリズム/家父長制/恋愛至上主義/フェミニズム/アクティビスト/リベラリスト/ワルキューレの騎行/ヘパイストスの狂気 Author ヤニス・バルファキス Yanis Varoufakis 1961年アテネ生まれ。経済学部教授として長年にわたり、英国、オーストラリア、ギリシャ、米国で教鞭をとる。2015年、ギリシャ経済危機のさなかにチプラス政権の財務大臣に就任。緊縮財政策を迫るEUに対して大幅な債務減免を主張し、注目を集めた。2016年、DiEM25((Democracy in Europe Movement 2025:民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立。2018年、米国の上院議員バーニー・サンダース氏らとともにプログレッシブ・インターナショナル(Progressive International)を立ち上げる。世界中の人々に向けて、民主主義の再生を語り続けている。主な著書に、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社)『わたしたちを救う経済学――破綻したからこそ見える世界の真実』(Pヴァイン)『黒い匣――密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』(明石書店)『世界牛魔人――グローバル・ミノタウロス:米国、欧州、そして世界経済のゆくえ』(那須里山舎)などがある。 Translator 江口 泰子 Taiko Eguchi 法政大学法学部卒業。編集事務所、広告企画会社勤務を経て翻訳業に従事。訳書に、『結局、自分のことしか考えない人たち――自己愛人間への対応術』(草思社)、『ケネディ暗殺 50年目の真実』『21世紀の脳科学――人生を豊かにする3つの「脳力」』(以上、講談社)、『ブレグジット秘録――英国がEU離脱という「悪魔」を解き放つまで』『ザ・フォーミュラ――科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』(以上、光文社)、『140字の戦争――SNSが戦場を変えた』『2030――世界の大変化を「水平思考」で展望する』(以上、早川書房)ほか多数。
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世界の適切な保存
¥1,870
ロングセラー『水中の哲学者たち』で話題沸騰。対話する哲学者・永井玲衣、待望の最新刊。 見ることは、わたしを当事者にする。 共に生きるひとにする。 世界をもっと「よく」見ること。その中に入り込んで、てのひらいっぱいに受け取ること。 この世界と向き合うための哲学エッセイ。 ー わたしはどうやら、時間が流れていくにしたがって、何かが消えるとか、失われるとか、忘れられるということがおそろしいらしい。 ここに書かれたもの。その何倍もある、書かれなかったもの。 でも決してなくならないもの――。 生の断片、世界の欠片は、きかれることを待っている。じっとして、掘り出されることを待っている。 [出版社より] 著 者|永井玲衣 出版社|講談社 定 価|1,700円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|288 ISBN|978-4-06-536172-6 初 版|2024年07月 Contents よくわからない話 たまたま配られる 誰かの記憶 夏だから 届く 奥 「はずでした」 来て 間違える 枯れ葉 哲学モメント いい感じ かわいい 想像と違う かくれる 適切な保存 はらう 余計な心配 適切な説明 書けない〔ほか〕 Author 永井 玲衣 Rei Nagai 人びとと考えあう場である哲学対話を幅広く行っている。せんそうについて表現を通し対話する、写真家・八木咲との「せんそうってプロジェクト」、後藤正文らを中心とするムーブメント「D2021」などでも活動。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)。第17回「わたくし、つまりNobody賞」を受賞。詩と植物園と念入りな散歩が好き。
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休むヒント。
¥1,430
休みなよ、って言われても。 ・休日、何もしてないのに気づいたら夕方になっている。 ・お休みなのに、つい仕事のメールをチェックしてしまう。 ・折角の休みだからと、逆に予定を詰め込み過ぎてしまう。 ・全然休めた気がしないまま、月曜の朝を迎えてしまう。 ・「休みの日って何してるの?」と聞かれるのが怖い。 ——ひとつでも当てはまってしまったあなた、必読です!! 働き方改革時代、ワークライフ「アン」バランスなあなたに贈る、休み方の処方箋(エッセイ・アンソロジー)! 覗いてみません? あの人たちの、休み方。 [出版社より] 編 者|群像編集部 出版社|講談社 定 価|1,300円+税 判 型|B6変型判/並製 頁 数|208 ISBN|978-4-06-535068-3 初 版|2024年04月 [ 執筆者一覧・50音順 ] 麻布競馬場、伊沢拓司、石井ゆかり、石田夏穂、岡本 仁、角田光代、角幡唯介、くどうれいん、古賀及子、小西康陽、斉藤壮馬、酒井順子、酒寄希望、向坂くじら、佐藤良成、杉本裕孝、高橋久美子、滝口悠生、武田砂鉄、竹田ダニエル、つづ井、年森 瑛、永井玲衣、蓮實重彦、平松洋子、藤代 泉、古川日出男、星野博美、堀江 栞、益田ミリ、宮内悠介、宮田愛萌、吉田篤弘
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ル・コルビュジエ
¥1,012
20世紀を代表する、最も有名な前衛建築家、ル・コルビュジエ(1887-1965)。「全ての建築家にとっての強迫観念(オブセッション)」「近代建築の言語そのもの」……。 スイスの若き時計工芸家は、なぜこれほどまでの世界的名声を勝ち得たのか。師との出会いと決別、数多のコンペティション落選や学界との論争、生涯転身し続けた作風の背景――。建築界の巨匠を“人文主義者”という視点で捉え直し、豊富な図版と共に、その全体像をクリアに描き出す。 [出版社より] 「あなたが何か新しいことを考えたと思っても、コルブ(=ル・コルビュジエ)はそれをもうやってしまっている」 ——イギリスの建築家アリソン・スミッソン(「序章」より) 著 者|八束はじめ 出版社|講談社[講談社学術文庫] 定 価|920円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|224 ISBN|978-4-06-529332-4 発 行|2022年09月 Contents 序 章 ル・コルビュジエとは誰か? 第一章 見出されたもの 第二章 「開かれた目」と「ものを見ない目」 第三章 「建築を擁護する 第四章 「彎曲の法則」 第五章 「直角の詩」 第六章 「開かれた手」 年譜 あとがき 学術文庫版あとがき *本書の原本は、1983年9月、岩波書店より20世紀思想家文庫として刊行されました。 Author 八束 はじめ Hajime Yatsuka 1948年、山形県生まれ。建築家、建築評論家、芝浦工業大学名誉教授。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院博士課程中退。磯崎新アトリエ勤務後、独立。著書に、『逃走するバベル 建築・革命・消費』『批評としての建築 現代建築の読みかた』『空間思考』『思想としての日本近代建築』『ロシア・アヴァンギャルド建築』『ル・コルビュジエ 生政治としてのユルバニスム』、共著に『未完の帝国 ナチス・ドイツの建築と都市』など多数。
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バリ山行
¥1,760
SOLD OUT
第171回芥川賞受賞作。古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で職場で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。 「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」(本文より抜粋) 会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。 [出版社より] 著 者|松永K三蔵 出版社|講談社 定 価|1,600円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|168 ISBN|978-4-06-536960-9 初 版|2024年07月 Author 松永K三蔵 Sanzo K Matsunaga 1980年茨城県生まれ。兵庫県西宮市在住。関西学院大学文学部卒。2021年「カメオ」が群像新人文学賞優秀作となる。
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ショットとは何か 歴史編
¥2,750
映画の未来は、革命の未来がそうであるように、きわめて不明確である。 批評史上の必読論文に最新時評、海外誌へ寄稿した“年間ベスト10(2001‐2023年他)を収録した超豪華版!書き下ろしラオール・ウォルシュ論、伝説のロマンチック・コメディー論「スクリューボールまたは禁止と奨励」、異色のレンフィルム=ソ連映画史「署名の変貌」、ロッセリーニのイタリア映画史からルノワール、ゴダール、オリヴェイラをめぐり、ライカート、黒沢清、濱口竜介の新作へ——。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社 定 価|2,500円+税 判 型|四六変型版/並製 頁 数|340 ISBN|978-4-06-534269-5 刊 行|2024年08月 Contents 映画の「未来」に向けて スクリューボールまたは禁止と奨励 ハリウッド30年代のロマンチック・コメディー オーソン・ウェルズはたえずフィルモグラフィーを凌駕しつづける 「黒さ」の誘惑 リタ・ヘイワースの曖昧さはいかにして「フィルム・ノワール」を擁護したか これは、「黄昏の西部劇」である以前に、映画の王道に位置づけらるべき作品である サム・ペキンパー監督『昼下りの決斗』 ロッセリーニによるイタリア映画史 ロベルト・ロッセリーニを擁護する 娘のイザベラを使って、ロッセリーニに『イタリア旅行』のリメイクを撮らせたくてならなかった ジャン・ルノワール論のために レマン湖の畔にて ゴダールにとっての―あるいは、ストローブにとっての―スイスについて 署名の変貌――ソ連映画史再読のための一つの視角 寡黙なるものの雄弁 ホー・シャオシェンの『戀戀風塵』 吹きぬける風のかなたに「黒衣の刺客」 タイプライターとプロジェクターに護られて ここでは、魂と肉体とが、奇蹟のように融合しあっている「アンジェリカの微笑み」 歳をとらずに老いるということの苛酷さについて ペドロ・コスタ『ホース・マネー』 このホークス的なコメディは、文字通りの傑作である ウェス・アンダーソン監督『犬ヶ島』 十字架 シャワー 濡れた瓦…… 『ヴィタリナ』をめぐってペドロ・コスタに訊いてみたい三つのことがら 抒情を排したこの寡黙な呟きに、ひたすら耳を傾けようではないか ―ケリー・ライカート小論― 黒沢清『スパイの妻』『蛇の道』 濱口竜介『悪は存在しない』 映画の「現在」に向けて ゴダールの『奇妙な戦争』に触れて思うこと 年間ベスト10 Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』『ショットとは何か』『ジョン・フォード論』他多数がある。
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ショットとは何か 実践編
¥2,750
「この書物には、その著者による『これこそ映画だ』という呟きがみちている」(あとがきより) 映画批評の最高峰と称されるグリフィス論、ヒッチコックのショット分析からゴダール、イーストウッド、侯孝賢、ヴェンダース論に書き下ろし「殺し屋ネルソン」論まで。単行本未収録作17本を収めた、蓮實映画批評ベスト・オブ・ベスト。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社 定 価|2,500円+税 判 型|四六変型版/並製 頁 数|384 ISBN|978-4-06-534269-5 刊 行|2024年03月 Contents 『殺し屋ネルソン』――あるいはこの上なく不自然な自然さについて 単純であることの穏やかな魅力 D・W・グリフィス論 防禦と無防備のエロス――「断崖」の分析/周到さからもれてくるもの ヒッチコックの『めまい』の一シーン分析 囁きと銃声 ルキノ・ヴィスコンティの『イノセント』 緋色の襞に導かれて ロベール・ブレッソンの『ラルジャン』 揺らぎに導かれて――グル・ダット讃―― エリック・ロメール または偶然であることの必然 透明な痛みのために 『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』 孤独と音響的宇宙 クリント・イーストウッドの西部劇 彷徨える断片の確かな痕跡について ジャン=リュック・ゴダール監督『イメージの本』 寡黙なイマージュの雄弁さについて――侯孝賢試論―― 静穏な透明さを超えて――エドワード・ヤン監督『クーリンチェ少年殺人事件』 ガラスの陶酔――ヴィム・ヴェンダース論 「撮る」ことの成熟、あるいはその理不尽な禁止について――『アネット』をめぐって 「冒険」について――ペドロ・コスタ試論―― 『燃える平原児』 見るものから言葉という言葉を奪う この知られざる傑作について あとがき Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』『ショットとは何か』『ジョン・フォード論』他多数がある。
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神々の闘争 折口信夫論
¥2,530
2002年群像新人文学賞評論部門優秀作となった「神々の闘争――折口信夫論」を軸に、書き継ぎ推敲を重ねた論考が2004年にまとめられ、文芸評論家・安藤礼二の最初の単行本『神々の闘争 折口信夫論』となった。 その後の2008年に雑誌掲載された「『死者の書』という場(トポス)」という短い評論に作家・大江健三郎が目を留め、高く評価する。その出会いが2009年安藤礼二の『光の曼陀羅 日本文学論』(2016年に文芸文庫版を刊行)による大江健三郎賞の受賞につながっていく――。 折口信夫の文学と思想の源泉を探る問いかけは、やがて折口の生きた時代を共有した井筒俊彦、大川周明、北一輝、石原莞爾、西田幾多郎といった思想家たちの言葉を参照することにつながっていく。それは世界におけるアジア、アジアにおける日本を考えることにつながる。 第二次世界大戦以前の君主制日本、それは「天皇」の存在を抜きにして何かを考えることは不可能な時空間だが、そのような状況下での権力のあり様の本質を、昭和天皇の即位を契機に定義したのが折口信夫だった。 著者は論を進めるうち、やがて折口信夫の背後にある平田篤胤の神学の存在に至る。 折口信夫という孤高の文学者・思想家をその特殊性で理解するのではなく、つねに普遍性を備え同時代に生きて闘う存在ととらえる本書は単行本の刊行から20年を経て、新たに戦争状態が世界を覆っているかのように見える現在こそ読まれるべきなのかもしれない。 知られざる折口信夫の姿――衝撃のデビュー作。 [出版社より] 「本書は、あたかも「本格探偵小説」を読むような、スリリングな読書時間を味わわせてくれる。 あちこちにちりばめられた、細かな謎の集積とその解明。もちろん真犯人は最初からわかって いるはずなのだが、本書を読み終えたとき、その「真犯人」の姿は、まったく違って見えてくる」 ――斎藤英喜「解説」より 著 者|安藤礼二 出版社|講談社[講談社文芸文庫] 定 価|2,300円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|304 ISBN|978-4-06-536305-8 刊 行|2024年08月 Contents 第一章 神々の闘争――ホカヒビト論 第二章 未来に開かれた言葉 第三章 大東亜共栄圏におけるイスラーム型天皇制 第四章 戴冠する預言者――ミコトモチ論 第五章 内在と超越の一神教 あとがき 初出一覧 補論 『死者の書』という場(トポス) 著者から読者へ 解説 斎藤英喜 年譜 著者自筆 Author 安藤 礼二 Reiji Ando 文芸評論家。東京生まれ。早稲田大学第一文学部(考古学専修)を卒業後、出版社に勤務。2002年「神々の闘争――折口信夫論」が群像新人文学賞評論部門優秀作となる。同作を基にした著書『神々の闘争 折口信夫論』で2006年芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2009年『光の曼陀羅 日本文学論』で大江健三郎賞と伊藤整文学賞を受賞。2015年『折口信夫』でサントリー学芸賞と角川財団学芸賞を受賞。多摩美術大学美術学部教授。
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贈与の系譜学
¥1,815
何かを贈ること、プレゼントすることは、日常誰もが行っている。本書は、この「贈与」という行為に注目し、それがどこから生まれ、どのような機能をもってきたのかを探り、いかに人間の本質と結びついているのかを明らかにする。 ……太古の昔から現代に至るまで、人間は贈与という行為に価値を見出してきた。では、なぜ贈与には価値があるのかといえば、自分にとって大事なものを手放して与える行為だからである。ところが、誰にとっても最も大事なものとは何かといえば、自分に固有のもの、自分の唯一のものだが、それは手放してしまえば自分が自分でなくなるものであり、つまりは原理的に贈与できないものだと言わざるをえない。これを逆から見れば、贈与できるものとは「交換可能なもの」であることになる。それゆえ、いかなる贈与も時間が経つうちに「見返り」を暗に要請するものとなり、「交換」になってしまう。 だとすれば、純粋な贈与とは不可能なのか。不可能だとすれば、そもそも贈与という行為の価値そのものが揺らいでしまうのではないか――。 本書は、数々の定評ある著作をものしてきた著者が長年にわたって取り組んできたテーマを正面から取り上げた、「集大成」と呼ぶべき渾身の論考である。今失われつつある「思考すること」の真の姿が、ここにある。 [出版社より] 著 者|湯浅博雄 出版社|講談社[講談社選書メチエ] 定 価|1,650円+税 判 型|四六版/並製 頁 数|240 ISBN|978-4-06-519439-3 刊 行|2020年06月 Contents はしがき プロローグ 第I章 古代思想における〈正しさ〉 第II章 初期キリスト教における〈正しさ〉 1 神との内的関係を重く見ること 2 カントの実践哲学 3 キリスト教に対するニーチェの評価と批判 第III章 原初の社会における贈与的ふるまい 1 〈贈与というかたちを取る〉物の交流・交易 2 贈与的なふるまいの両義性 3 贈与的次元を含む運動、それを打ち消す動き(再-自己所有) 第IV章 贈与をめぐる思索 1 贈与的ふるまい 2 贈与、サクリファイスと模擬性=反復性 3 苦難の時そのものが新たに、未知なるものとして生き変わること 4 不可能なものという試練 エピローグ 註 文献一覧 あとがき Author 湯浅 博雄 Hiroo Yuasa 1947年、香川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。パリ第三大学大学院に留学。東京大学教養学部教授、獨協大学特任教授を経て、現在は東京大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想。 主な著書に、『反復論序説』(未來社)、『バタイユ 消尽』(講談社学術文庫)、『ランボー論』(思潮社)、『聖なるものと〈永遠回帰〉』(ちくま学芸文庫)、『応答する呼びかけ』、『翻訳のポイエーシス』(以上、未來社)ほか。主な訳書に、ジル・ドゥルーズ『ニーチェ』、ジョルジュ・バタイユ『宗教の理論』、『エロティシズムの歴史』(共訳)(以上、ちくま学芸文庫)、ジャック・デリダ『パッション』、『エコノミメーシス』(共訳)(以上、未來社)、『ランボー全集』(共訳)(青土社)ほか。
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所有論
¥3,300
主体と存在、そして所有。著者の重ねる省察は、われわれを西欧近代的思惟が形成してきた「鉄のトライアングル」の拘束から解き放つ。 「ほかならぬこのわたし」がその身体を労して獲得したものなのだから「これはわたしのものだ」。まことにもっともな話に思われる。しかし、そこには眼には見えない飛躍があるのではないか……? ロックほか西欧近代の哲学者らによる《所有》の基礎づけの試みから始め、譲渡の可能性が譲渡不可能なものを生みだすというヘーゲルのアクロバティックな議論までを著者は綿密に検討する。そこで少なくともあきらかにできたのは、「所有権(プロパティ)」が市民一人ひとりの自由を擁護し、防禦する最終的な概念として機能しつつも、しかしその概念を過剰適用すれば逆にそうした個人の自由を損ない、破壊しもするということ。そのかぎりで「所有権」はわたしたちにとって「危うい防具」だという根源的な事実である。 主体と存在、そして所有。著者の重ねる省察は、われわれを西欧近代的思惟が形成してきた「鉄のトライアングル」の拘束から解き放ち、未来における「手放す自由、分ける責任」を展望する。 [出版社より] 著 者|鷲田清一 出版社|講談社 定 価|3,000円+税 判 型|四六版/上製 頁 数|576 ISBN|978-4-06-534272-5 刊 行|2024年02月 Contents だれのもの? 所有と固有 ロックの問題提示 所有と労働 糧と労働 身体という生地 法と慣行 関係の力学 所有権とそのあらかじめの剥奪 所有と譲渡可能性 人格と身体の連帯性の破棄 演戯と所有 所有をめぐる患い 解離 清潔という名の強迫 “棄却”から“本来性”へ 直接性をめぐって 空白のトポス? 形式的なものと自己関係性 制度から相互行為へ “受託という考え方” “共”の縮滅 共にあることと特異であること “場所”と“死”と 所有と固有、ふたたび 危うい防具 Author 鷲田 清一 Kiyokazu Washida 1949年京都生まれ、哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。大阪大学文学部教授などを経て、大阪大学総長(2007~2011年)。2015~2019年、京都市立芸術大学理事長・学長。現在はせんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。医療や介護、教育の現場などに哲学の思考をつなぐ臨床哲学を提唱・探求する。朝日新聞一面に「折々のことば」を連載。『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』(ちくま学芸文庫、桑原武夫学芸賞)、『「ぐずぐず」の理由』(角川選書、読売文学賞)など著書多数。
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フーコー・ドゥルーズ・デリダ
¥1,980
『言葉と物』、『差異と反復』、『グラマトロジーについて』。いまや古典となったフランス現代思想の名著をめぐって展開するこの「三つの物語」は、日本でニュー・アカデミズムが台頭する直前、1978年に衝撃とともに刊行された。フーコー、ドゥルーズ、デリダという哲学者が登場するものの、本書は哲学の概説書でも研究書でもない。それは思考の物語であり、「批評の実践」であり、「作品」を読むことの物語である。瑞々しく、極限までそぎ落とされた文体で、いまだ「読むことのレッスン」を体現し続ける批評家の、比類なき名著。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社[講談社文芸文庫] 定 価|1,800円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|272 ISBN|978-4-06-529925-8 刊 行|2022年11月 Contents 1 肖像画家の黒い欲望―ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む 2 「怪物」の主題による変奏―ジル・ドゥルーズ『差異と反復』を読む 3 叙事詩の夢と欲望―ジャック・デリダ『グラマトロジーについて』を読む Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『物語批判序説』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』他多数がある。
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暴力論
¥2,750
いじめ、ハラスメント、性暴力、ヘイトクライム、テロ、戦争、原爆、ジェノサイド……。私たちの日常は、常に大小の「暴力」に曝されている。いったい何が暴力を起動させるのか――。 大江健三郎「政治少年死す」、大岡昇平「俘虜記」、柄谷行人「日本近代文学の起源」、武田泰淳「第一のボタン」、井伏鱒二「黒い雨」、奥泉光「石の来歴」、原民喜「夏の花」、ジョージ・オーウェル「1984年」、ジョナサン・リテル「慈しみの女神たち」など、内外の優れた文学に現れた「暴力」を緻密に追究することによって、闇に包まれたその根源へと迫っていく。群像新人賞評論部門優秀作を受賞しデビューした気鋭が真正面から挑む、力作評論。 [出版社より] 著 者|高原到 出版社|講談社 定 価|2,500円+税 判 型|四六変型判・上製 頁 数|338 ISBN|978-4-06-524450-0 発 行|2021年09月 Contents 第1部 暴力の発生 テロリストが、生まれる——「セヴンティーン」「政治少年死す」試論 暴力の二つのボタン——ジョージ・オーウェルと武田泰淳 第2部 暴力の爪痕 日本近代文学の敗戦——「夏の花」と『黒い雨』 歪められた顔、奪われた言葉——「原爆乙女」をめぐって 第3部 暴力の語り 二つのフィリピン戦——大岡昇平と奥泉光における死者の顔 虐殺の言語学『慈しみの女神たち』のナラティヴ Author 高原 到 Itaru Takahara 1968年千葉県生まれ。京都大学文学部社会学科卒業。現在、予備校講師を務めながら、文芸誌を中心に旺盛な批評活動を続ける。
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密やかな結晶 新装版
¥902
SOLD OUT
2019年度「全米図書賞」翻訳部門、2020年度「英国ブッカー国際賞」最終候補作。『博士の愛した数式』など数々の話題作で知られる著者が描く、澄明に描く人間の哀しみ。 記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。 [出版社より] 著 者|小川洋子 出版社|講談社[講談社文庫] 定 価|820円+税 判 型|文庫判 頁 数|448 ISBN|978-4-06-521464-0 初 版|2020年12月 Author 小川 洋子 Yoko Ogawa 岡山市生まれ。早稲田大学文学部卒。1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、同年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花賞、06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、13年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『猫を抱いて象と泳ぐ』『原稿零枚日記』『人質の朗読会』『最果てアーケード』『いつも彼らはどこかに』『琥珀のまたたき』などがある。海外での評価も高い。
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高架線
¥715
新刊『長い一日』が各紙誌で大評判。若手随一の小説の名手、芥川賞作家の滝口悠生、初の長編小説。 思い出すことで、見出され、つながっていくもの。注目の芥川賞作家、初めての長篇小説。 風呂トイレつき、駅から徒歩5分で家賃3万円。古アパート「かたばみ荘」では、出るときに次の入居者を自分で探してくることになっていた。部屋を引き継いだ住人がある日失踪して……。 人々の記憶と語りで綴られていく16年間の物語。 [出版社より] 著 者|滝口悠生 出版社|講談社[講談社文庫] 定 価|650円+税 判 型|文庫判 頁 数|272 ISBN|978-4-06-528006-5 初 版|2022年05月 Author 滝口 悠生 Yusho Takiguchi 1982年東京都生まれ。2011年、「楽器」で新潮新人賞を受賞しデビュー。2015年、『愛と人生』で野間文芸新人賞受賞。2016年、「死んでいない者」で芥川龍之介賞受賞。他の著書に『寝相』『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』『茄子の輝き』『長い一日』がある。
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新しい声を聞くぼくたち
¥1,980
SOLD OUT
変わっていく世界と、ぼくたちのいらだち。与えられた剣と鎧はどうやって手放したらいい? 映画や漫画など様々なコンテンツから、近年のフェミニズムの興隆の中で男性はどう生きるべきかを読み解く、画期的な文芸批評。 [出版社より] 著 者|河野真太郎 出版社|講談社 定 価|1,800円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|344 ISBN|978-4-06-527742-3 発 行|2022年05月 Contents はじめに 第一部 ぼくらは何を憎んでいるのか 第一章 能力と傷──ポストフェミニズム時代の男性性 第二章 やつらと俺たち──階級と男性性 第三章 助力者と多文化主義ーー男性性のいくつかの生き残り戦略 第二部 男性性、コミュ力、障害、そしてクリップ 第四章 「のけものたち」の時代 第五章 コミュ力時代の男たち 第六章 「個性としての障害」と治癒なき主体のユートピア 第三部 ライフコースのクィア化、ケアする男性 第七章 母の息子のミソジニー、母の息子のフェミニズム 第八章 ぼくら、イクメン 第九章 老害と依存とケア、そしてクィアな老後の奪還 おわりに──ケアする社会と共通文化としての「新たな男性性」 Author 河野 真太郎 Shintaro Kono 専修大学国際コミュニケーション学部教授。専門はイギリス文学・文化ならびに新自由主義の文化と社会。著書に『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、2017年)、共編著に『終わらないフェミニズム――「働く」女たちの言葉と欲望』(研究社、2016年)、翻訳にトニー・ジャット/ティモシー・スナイダー『20世紀を考える』(みすず書房、2015年)など。
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戦う姫、働く少女
¥1,980
SOLD OUT
ジブリの少女やディズニープリンセスは何と戦い、どう働いたのか。それは現代女性の働きかたを反映していた―。『逃げ恥』から『ナウシカ』まで。現代のポップカルチャーと現代社会を縦横無尽、クリアに論じる新しい文芸批評が誕生! [出版社より] 著 者|河野真太郎 出版社|堀之内出版 定 価|1,800円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|240 ISBN|978-4-906708-98-7 発 行|2017年07月 Contents はじめに 第一章 『アナと雪の女王』におけるポストフェミニズムと労働 革命的フェミニスト・テクストとしての『アナと雪の女王』 二人のポストフェミニストの肖像 トップ・ガールズとブリジットたちの和解? シェリル・サンドバーグは存在しない――グローバル資本主義とその本源的蓄積 労働なき世界と「愛」の共同体 第二章 無縁な者たちの共同体――『おおかみこどもの雨と雪』と貧困の隠蔽 承認と再分配のジレンマ 『おおかみこどもの雨と雪』と貧困の再生産 ポスト・ビルドゥングスロマンと成長物語の変遷 『ハリー・ポッター』、『わたしを離さないで』と多文化主義 無縁な者たちの共同体 コーダ 現代版『ライ麦畑でつかまえて』としての『僕だけがいない街』 第三章 『千と千尋の神隠し』は第三波フェミニズムの夢を見たか?——アイデンティティの労働からケア労働へ フェイスブックという労働 『魔女の宅急便』のポストフェミニズム 『千と千尋の神隠し』は第三波フェミニスト・テクストか? 『逃げるは恥だが役に立つ』?─―依存労働の有償化、特区、家事の外注化 第四章 母のいないシャカイのユートピア──『新世紀エヴァンゲリオン』から『インターステラー』へ スーパー家政婦、あらわる 『インターステラー』の母はなぜすでに死んでいるのか? 『インターステラー』の元ネタは『コンタクト』なのか? 『コンタクト』と新自由主義のシャカイ セカイ系としての『インターステラー』 『エヴァ』とナウシカのポストフェミニズム コーダ1 AIの文学史の可能性──『ひるね姫』と『エクス・マキナ』 コーダ2 矛盾の回帰?─―『ゴーン・ガール』と『WOMBS』 第五章 『かぐや姫の物語』、第二の自然、「生きねば」の新自由主義 「生きろ/生きねば」の新自由主義 『風の谷のナウシカ』における自然と技術の脱構築 技術と自然の脱構築と労働の隠蔽 『風の谷のナウシカ』、『寄港地のない船』、(ポスト)冷戦の物語 罪なき罰と箱庭 終章 ポスト新自由主義へ 没落系ポストフェミニストたち 主婦が勝ち組?─―ハウスワイフ2・0から『逃げ恥』へ セレブ主婦の蜃気楼 貧困女子の奮起 エイミーたちの願いとジンジャーたちの連帯 Author 河野 真太郎 Shintaro Kono 専修大学教授。1974年山口県生まれ、一橋大学大学院商学研究科准教授を経て2019年4月より現職。関心領域はイギリスの文化と社会。著書に『〈田舎と都会〉の系譜学』(ミネルヴァ書房、2013年)、共著に『文化と社会を読む 批評キーワード辞典』、(研究社、2013年)訳書にピーター・バーク『文化のハイブリディティ』(法政大学出版局、2012年)、共訳書にレイモンド・ウィリアムズ『共通文化に向けて―文化研究1』(みすず書房、2013年)など。