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アニメオタクとビデオの文化社会学
¥3,080
1980年代に拡大したビデオというメディアは、オタク文化の代表とも見なされるアニメの視聴経験をどのように変えていったのか。アニメオタクはビデオを利用することを通じて、どのような映像文化を形成し、そこにはいかなる社会的な意味があったのか。 1970年代後半から80年代のアニメブームと呼ばれる時期に焦点を当て、「ビデオジャーナル」「アニメージュ」「Animec」「アニメV」などの雑誌を読み込んで、アニメファンのビデオ利用によってアニメが個人の趣味として立ち現れるようになったプロセスを描き出す。 ビデオがアニメの保存や操作を可能にしたことでファンの交流を促して、「趣味としてのアニメ」の新たな流通経路を作り出し、それが個人の収集(コレクション)やレンタル市場の形成につながっていった。ファン・産業・技術が絡み合いながらアニメ独自の市場を形成した1980年代のうねりを照らし出し、ビデオが切り開いた映像経験の文化的なポテンシャルを明らかにする。 [出版社より] 著 者|永田大輔 出版社|青弓社 定 価|2,800円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|280 ISBN|978-4-7872-3545-9 発 行|2024年09月 Contents 序 章 映像を趣味にする経験とビデオ技術 1 オタクとビデオの結び付き 2 アニメというファン領域 3 本書の分析資料 4 本書の構成 第1部 アニメを趣味にする条件とビデオ技術 第1章 ビデオのファン利用とオタクという主体 1 本書の問いをめぐる議論の配置 2 オタクとビデオの関連性について 3 ビデオを取り扱うことの意義づけ 4 ビデオをめぐるメディア論的視点 5 アニメという対象 第2章 ビデオにおける「教育の場」と「家庭普及」――一九六〇年代後半―七〇年代の業界紙「ビデオジャーナル」にみる普及戦略 1 ビデオ受容をめぐる諸議論 2 資料の特性 3 教育の場とビデオ 4 「教育」と「家庭」の間 5 結論 第3章 「テレビを保存する」ことと読者共同体の形成――アニメ雑誌「アニメージュ」を事例として 1 「テレビを保存するという実践の成立」と「新たなアニメファン」 2 「テレビを保存する」ことの前提条件 3 「テレビを録る」ということを軸とした読者共同体の形成 第2部 アニメが「独自の趣味」になる過程とビデオ技術 第4章 アニメ雑誌における「第三のメディア」としてのOVA――一九八〇年代のアニメ産業の構造的条件に着目して 1 本章で取り扱う分析資料 2 OVAをめぐる構造的条件 3 「第一のメディア」と「第二のメディア」 4 「第三のメディア」としてのOVA 5 結論 第5章 コンテンツ消費における「オタク文化の独自性」の形成過程――一九八〇年代のビデオテープのコマ送り・編集をめぐる語りから 1 「オタク文化の独自性」をめぐる先行研究・分析視角・分析対象 2 ビデオデッキの普及環境に関して 3 コマ送りが可能とする視聴実践 4 形成される相互循環 5 結論 第6章 アニメの制度化のインフラとしてのアニメ制作者の形成――一九七〇―八〇年代の労働規範に着目して 1 アニメーターの職務概要 2 分析枠組みと資料の分析上の位置づけ 3 アニメブーム期の労働を読み解く視点 4 制作者の労働規範の変容 5 結論 第3部 ビデオを通じて再定式化される「オタク」経験とアニメ文化 第7章 ビデオをめぐるメディア経験の多層性――「コレクション」とオタクのカテゴリー運用をめぐって 1 「オタクの代表」の宮﨑勤 2 一九八九年時点のビデオの社会的配置と有徴性 3 「真のオタク」ではない宮﨑勤 4 変容するコレクションの意味論 5 結論――オタクが語られだす論理 第8章 ビデオ受容空間の経験史――「趣味の地理学」と一九八〇年代のアニメファンの経験の関係から 1 先行研究 2 コンテンツ受容空間と経験史 3 有徴な空間としてのビデオ店 4 レンタルビデオ店経験の両義性 5 ビデオ店利用の個別性 終 章 映像視聴の文化社会学に向けて 1 ビデオが開いた映像視聴経験とアニメファン 2 メディア文化にビデオ技術がもたらしたもの 3 コレクションのメディア論 4 子どもの民主主義とオタク文化――「共同視聴」の文化社会学に向けて 引用・参考文献 あとがき Author 永田 大輔 Daisuke Nagata 1985年、栃木県生まれ。明星大学など非常勤講師。専攻はメディア論、文化社会学、映像文化論、労働社会学。共編著に『アニメと場所の社会学――文化産業における共通文化の可能性』『アニメの社会学――アニメファンとアニメ制作者たちの文化産業論』『消費と労働の文化社会学――やりがい搾取以降の「批判」を考える』(いずれもナカニシヤ出版)、共著に『産業変動の労働社会学――アニメーターの経験史』(晃洋書房)、『ビデオのメディア論』(青弓社)、論文に「「二次創作」はいかなる意味で「消費」であるのか――大塚英志の消費論を中心に」(「日本研究」第65号)など。
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ユリイカ 2022年11月号 今井哲也
¥1,980
SOLD OUT
映画『ぼくらのよあけ』公開記念。 『ハックス!』『ぼくらのよあけ』『アリスと蔵六』といった代表作において今井哲也はごくさっそうとさりげなく世界を設計してみせる。今井哲也の表現と主題はどのように構成されるのか、アニメ映画『ぼくらのよあけ』の公開を10月に控え、その要諦に踏みこむ。 [編集部より] 出版社|青土社 定 価|1,800円+税 判 型|A5変型判/並製 頁 数|326 ISBN|978-4-7917-0423-1 初 版|2022年10月 Contents 特集*今井哲也――『ハックス!』『ぼくらのよあけ』『アリスと蔵六』…マンガを夢みる ❖ロングインタビュー 僕はマンガを描いていた――今井哲也と/のマンガの方法 / 今井哲也 聞き手=さやわか ❖今井哲也との遭遇 団員としても今井哲也さんとのこと / 佐藤 大 あのこが宇宙に行ったよ / 甘木 零 ❖今井哲也の読みかた 白いフレームのなかの、小さな瞳が映すもの――今井哲也「トラベラー」から、「ピロウトーク」まで / 泉 信行 みんなの楽しい部活動は続く――『ハックス!』論 / 小松祐美 知性の彼方は欲求のない完全無欠なのか / 米澤朋子 セカイとうまくやっていくこと――『アリスと蔵六』 / 江永 泉 ❖オマージュイラストギャラリー 今井哲也先生から勝手に授かったもの… / 伊藤正臣 イマイ・バース / カヅホ IMAISAN IS SAIKO / コナリミサト アニメ化おめでとうイラスト / 大沖 今井哲也の目線になりたい / たいぼく すごい漫画家、今井哲也先生 / タダノなつ 『アリスと蔵六』のファンアート / つばな またみんなでUNOしましょうね / ヤマシタトモコ ぼくらのよあけぜよ / 山田しいた ❖再録 三丁目クオンタム団地/スペースおくのほそ道 / 今井哲也 ❖対談〈1〉 ぼくらのまんが道 / 今井哲也 あらゐけいいち 司会=ばるぼら ❖描きつづけるひと アムフォと今井先生について / 高い城のアムフォ 翻訳・マンガ=巡宙艦ボンタ コミティアとかの今井さん / さわだ アニ研時代の今井哲也氏 / 天龍寺燦斗 ❖アレンジメントされるもの 孤独と罪――二次創作「見滝原アンティークショップ」とオリジナル作品『アリスと蔵六』を貫くもの / 足立加勇 滂沱の涙 / ふぢのやまい 二一世紀のイソップ――『デルポイへの道』における寓意・模倣・宿命 / 陰山 涼 今井哲也作品と『メギド72』――その相通ずる美点について / 髙橋志行 世界はおもちゃ箱――今井哲也について / 米原将磨 ❖対談〈2〉 アリスと裏世界――夢みることの倫理をめぐって / 今井哲也 宮澤伊織 ❖オマージュ短篇 不屈の蛙は青い海をみるか / 松崎有理 ❖わたしたちの記憶 背景の魔術――『ハックス!』、『ぼくらのよあけ』における世界への眼差し / 岩倉文也 永遠ではない子供たち / 西田 藍 ❖きみたちの未来 ジュヴナイルの時空――夢と夢の終わりと函の外 / 佐藤俊樹 冒険・嘘・夢――『ぼくらのよあけ』『アリスと蔵六』にみる大人と子供 / 河野聡子 そして冒険は語られる――子どもの文化を物語ることについて / 團 康晃 自分の道を、自分で決める――今井哲也の描く女の子たち / 秦 美香子 ❖描くことの自由とともに 今井哲也主要作品解題 / 織戸久貴 ー ❖忘れられぬ人々*13 故旧哀傷・橋本攻 / 中村 稔 ❖物語を食べる*22 三匹の豚はいま、どこへ / 赤坂憲雄 ❖詩 ナスビの眼差し 他二篇 / 山崎佳代子 ❖今月の作品 奥山紗英・東堤翔大・たかすかまさゆき・五十嵐雨 / 選=大崎清夏 ❖われ発見せり クズ男の重力 / 小川佐和子 表紙・目次・扉……北岡誠吾 表紙イラスト……今井哲也
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2.5次元文化論——舞台・キャラクター・ファンダム
¥2,200
2.5次元文化は、アニメ・マンガ・ゲームの虚構世界を現実世界に再現して、虚構と現実のあいまいな境界を楽しむ文化実践である。コスプレ、アニメ聖地巡礼、声優/キャラコンサート、応援上映、2.5次元舞台・ミュージカル、Vチューバーなど、2.5次元文化は裾野を広げながら日々深化している。 本書ではまず、2.5次元の言葉の定義や歴史を押さえたうえで、舞台・ミュージカルに焦点を当てて、声優との関係、宝塚歌劇や特撮ものとの差異を考察する。さらに、前史として重要な舞台作品『聖闘士星矢』『HUNTER×HUNTER』『サクラ大戦』を解説し、転換点になったミュージカル『テニスの王子様』『美少女戦士セーラームーン』、人気の『刀剣乱舞』『ハイキュー!!』の詳細な読解を通じて2.5次元舞台の特徴や魅力を明らかにする。 劇場に足を運び、舞台関係者やファンへの取材や海外を含む多面的な調査を重ねてきた著者が、2.5次元の世界を熱量あふれる筆致で描く初の研究書。 [出版社より] 著 者|須川亜紀子 出版社|青弓社 定 価|2,000円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|280 ISBN|978-4-7872-3480-3 初 版|2021年01月 Contents はじめに 第1章 「二・五次元文化」の隆盛 1 「二・五次元」の意味の変容 二・五次元としての声優(または“中の人”) マンガ、アニメベースの舞台としての二・五次元 2 二・五次元文化隆盛の背景 キャラクターとその共有、消費、利用 リアリティ認識とコミュニケーション様態の変容 参加型文化――パフォーマンスとしての二・五次元文化実践 3 本書の構成 第2章 二・五次元舞台とは何か――虚構的身体性とファンの相互作用 1 「二・五次元舞台」の歴史と社会文化的背景 「二・五次元舞台」の歴史とマンガ、アニメ、ゲーム文化 声優、特撮ヒーローなどの若手イケメン俳優 2 キャラクター/キャストの「虚構的身体性(virtual corporality)」 英語圏のマンガ、アニメ原作ミュージカル 虚構的身体性(virtual corporality)とメディアとしての身体 3 相互参照的メディア横断ナラティブ(クロスレファレンシャル・トランスメディア・ナラティブ)と「虚構的身体性」 第3章 二・五次元舞台の成立と展開 1 アニメミュージカル――“二・五次元的(傍点)舞台”から二・五次元舞台へ ミュージカル『聖闘士星矢(ルビ:セイントセイヤ)』(一九九一年)と少女マンガ原作ミュージカル 『サクラ大戦』歌謡ショウシリーズ(一九九七―二〇〇六年) 『HUNTER×HUNTER』シリーズ(二〇〇〇―〇四年) 2 “二・五次元”舞台の誕生へ ミュージカル『テニスの王子様』シリーズ――二・五次元舞台ブームへ ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』――戦略的「チーム女子」 舞台/ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ――歴史ブームとゲーム原案コンテンツ ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』――言葉、映像、音楽、虚構的身体性 [インタビュー]海外での二・五次元舞台の広がり 第4章 二・五次元舞台ファンと「嗜好の共同体」としてのファンダム 1 「嗜好の共同体」としてのファンダムの可能性と課題 趣味、趣味縁、アニメ・マンガファンダム “ハッシュタグ・コネクション”と「弱いつながり」 2 量的調査 3 質的調査 フォーカスグループ討論――『テニミュ』の女性ファン 日本人ファンへの個別インタビュー 海外ファンへの個別インタビュー おわりに 引用文献一覧 二・五次元文化年表 あとがき Author 須川 亜紀子 Akiko Sugawa 横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院教授。専攻はポピュラー文化研究、オーディエンス/ファン研究。著書に『少女と魔法――ガールヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版)、共編著に『アニメーション文化 55のキーワード』(ミネルヴァ書房)、『アニメ研究入門[応用編]――アニメを究める11のコツ』(現代書館)、共著に『小説の生存戦略――ライトノベル・メディア・ジェンダー』(青弓社)など。
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東映動画史論 経営と創造の底流
¥3,520
SOLD OUT
アニメーションの現場そこは―経営・労働・創造が拮抗する三角形。日本初のカラー長編アニメーションを生み、現在も躍進を続ける東映アニメーション。社内文書や裁判記録等の一次史料を駆使し、人が集い場が醸してきた「文化」に迫る。 [出版社より] 著 者|木村智哉 出版社|日本評論社 定 価|3,200円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|368 ISBN|978-4-535-55963-9 発 行|2020年09月 Contents 序章 問題設定 先行研究 方法論と史料 語句の用法 本書の構成 第一章 発足と模索 東映動画発足の背景 初期作品における模索 労働組合の成立 第二章 増産と蓄積 劇場用作品 テレビシリーズ制作とその影響 労使関係 第三章 開花と破綻 長編制作規模の縮小 テレビシリーズの拡大と制作体制の合理化 輸出と合作の実態 経営危機と人員削減 第四章 改革と復興 経営の再建 市場と経営規模の拡大 新人採用の再開へ 補章 東映アニメーションへ 九〇年代以降の作品群 雇用と教育 フィリピン発注の開始と定着 デジタル技術の開発と導入 株式上場 小括 終章 理論との架橋 普遍性と特殊性 今後の課題 Author 木村 智哉 Tomoya Kimura 1980年、千葉県に生まれる。2011年、千葉大学大学院社会文化科学研究科修了。博士(文学)。早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点研究助手、日本学術振興会特別研究員、東京国立近代美術館フィルムセンターBDCプロジェクト客員研究員を経て、現在は玉川大学芸術学部ほかで非常勤講師を勤める。専門はアニメーション史、映像産業史。『東映動画史論―経営と創造の底流』が初の単著となる。
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日本のアニメーションはいかにして成立したのか
¥3,740
SOLD OUT
いまや日本の輸出産業となった「アニメーション」という概念は、どのようにして受容され、また変遷していったのか。 時代ごとの呼称や表現形式の分析を軸に、アマチュア作家や実験映画との関係、リミテッドアニメーションなど、これまで周縁的・境界的とされてきた創造活動に着目し、明治期から現代にいたるアニメーションの系譜をたどる。 《日本アニメーション学会賞2019》受賞。 [出版社より] 著 者|西村智弘 出版社|森話社 定 価|3,400円+税 判 型|A5判/上製 頁 数|340 ISBN|978-4-86405-134-7 発 行|2018年11月 Contents はじめに──アニメーションをめぐる名称 1 アニメーションという言葉 2 戦前・戦中のアニメーションをめぐる名称 3 戦後・現代のアニメーションをめぐる名称 [Ⅰ BEFORE THE WAR] 第一章 戦前の日本にアニメーションの概念はなかった──アニメーションをめぐる名称についての考察 1 アニメーションの概念について 2 アニメーションという「共通の場所」 3 今日におけるアニメーションの概念 4 日本で公開された初期アニメーション 5 トリック映画とコマ撮り 6 影絵映画 7 人形映画 8 絶対映画 9 漫画映画 10 受容者の視点と制作者の視点 第二章 映画統制下のアニメーション──「線画」「描画」「動画」に関する研究 1 映画教育と映画検閲 2 線画と映画教育 3 描画と映画検閲 4 描画と分類学の思想 5 政岡憲三と動画 6 アニメーターとアニメーティング 7 アニメーション 第三章 戦前の自主制作アニメーション──アマチュア映画作家の「特殊映画」について 1 アマチュア作家のアニメーション 2 影絵映画の芸術性 3 前衛映画とアニメーション 4 大藤信郎とアマチュア映画 5 特殊映画とアニメーション 6 小型映画コンテストのアニメーション 7 田中喜次の影絵映画 8 岡野卯馬吉、荻野茂二、坂本為之、今枝柳蛙、森紅 9 荒井和五郎と竹村猛児 10 浅田勇の漫画映画 11 森紅と荻野茂二の抽象アニメーション 12 その後の特殊映画 [Ⅱ AFTER THE WAR] 第四章 アニメーションの概念はいかにして確立されたのか──ノーマン・マクラレンの受容を中心に 1 戦後日本のアニメーション 2 ノーマン・マクラレンの作品 3 教育映画とアニメーション 4 グラフィック集団の『キネ・カリグラフ』 5 前衛映画としての『線と色の即興詩』 6 『線と色の即興詩』に対する反応 7 一九五〇年代のアニメーション 8 ジョン・ハラスとアニメーションの新しい運動 9 アニメーションとしての『線と色の即興詩』 10 漫画映画からアニメーションへ 11 アニメーション(動画)と漫画映画のずれ 第五章 アニメーションの概念はどのように変容したのか──リミテッドアニメーションから考える 1 一九六〇年代初頭のアニメーション 2 リミテッドアニメーション 3 アニメーション三人の会 4 テレビコマーシャルとリミテッドアニメーション 5 アニメーション三人の会とテレビコマーシャル 6 アニメーション三人の会と実験映画 7 グラフィック・アニメーション 8 手塚治虫と虫プロダクション 9 『鉄腕アトム』のリミテッドアニメーション 10 漫画映画、アニメーション、テレビ漫画 11 アニメーションとアニメ 12 今日におけるアニメーションの多様化 第六章 アートアニメーションとはなんであったのか──アニメーションの多様性をめぐる考察 1 アートアニメーションについて 2 アニメーション三人の会 3 一九七〇年代の自主制作アニメーション 4 一九八〇年代の自主制作アニメーション 5 手塚治虫とアートアニメーション 6 国際アニメーションフェスティバル広島大会 7 一九九〇年代の自主制作アニメーション 8 チェコの人形アニメーションの流行 9 アートアニメーションの広がり 10 山村浩二とアートアニメーション 11 自主制作アニメーションとアニメブーム 12 日本のアニメーションと海外のアニメーション アニメーション関連年譜 あとがき 主要作品名索引 主要人名・団体名・機関名索引 Author 西村 智弘 Tomohiro Nishimura 映像評論家、美術評論家。東京造形大学、東京工芸大学、阿佐ヶ谷美術専門学校非常勤講師。 専門は映像史、現代美術。日本映像学会、美術評論家連盟会員。1993年、美術出版社主催〈第11回芸術評論募集〉で「ウォーホル/映画のミニマリズム」が入選。 著書に『日本芸術写真史──浮世絵からデジカメまで』(美学出版社、2008)、共編著に『スーパー・アヴァンギャルド映像術』(フィルムアート社、2002)、『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』(森話社、2016)、共著に京都造形大学編『映像表現の創造特性と可能性』(角川書店、2000)、西嶋憲生編『映像表現のオルタナティヴ──一九六〇年代の逸脱と創造』(森話社、2005)、村山匡一郎編『映画は世界を記録する──ドキュメンタリー再考』(森話社、2006)、主な論文に「日本実験映像史」(『あいだ』2003年3月号-2006年3月号)など。
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アニメーションの女王たち——ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語
¥2,860
『白雪姫』から『アナと雪の女王』まで、ディズニーの夢のような世界の裏側で忘れ去られた女性たち。彼女たちの創造の軌跡がいま明かされる。 ノンフィクションである本書では、ウォルト・ディズニー・スタジオに所属していた5人の女性アーティストを中心に、女性やアジア系などマイノリティのアーティストが果たしてきた創造的な役割と、歴史から忘れ去られた彼女たちの多大なる貢献の真実を明らかにします。彼女たちの創造性によってディズニー・アニメーションが夢の世界へと変わっていくさまが描かれるだけでなく、才能豊かな女性アーティストたちを妬む男性スタッフからの嫌がらせや功績の横取りなど耳を疑うような創造の裏側が当時を知る人々のインタビュー、文献、ドローイング(アートワーク)などから暴かれていきます。 女性というだけで入れる部署が限定され、同じ仕事をしながらも男性と女性では給与が全然違うという不公平。大きな貢献をしているにもかかわらずクレジットには名前が載らないという不条理。ねぎらいの言葉もなく会社を追い出されるという理不尽。そんなスタジオの中でも女性アーティストたちは友情を育み、優れた作品やアートワークを生み出していきます。そして次の世代が、彼女たちが遺した作品やアートワークを継承し、「ディズニー・プリンセス」を、そしてスタジオ自体を生まれ変わらせていく様子が綴られます。 初の長編カラーアニメーション映画である『白雪姫』から新しいディズニー・プリンセス像をつくった『アナと雪の女王』まで、それぞれの制作秘話や女性アーティストの活躍が語られていくだけでなく、コピー機やコンピュータの技術革新が作品に与えた影響なども知ることができます。アニメーションと技術との関係を浮き彫りにするパートは、サイエンスライターでもある著者ナサリア・ホルトの知識と経験が活きています。また公民権運動や黒人差別など社会の問題と、アニメーション作品との関係についても語られていきます。 大人から子供まで世代を超えて親しまれる作品を送り出し、数多くの成功を収めてきたウォルト・ディズニー・スタジオ。多くの本や映画が、ウォルト・ディズニーとそのスタジオの歴史と功績を褒め称えています。しかし、そこで描かれるスタジオの軌跡は男性、特に白人の男性の名前にかたちづくられているものがほとんどです。その歴史の裏側がいま、明らかになります。 [出版社より] 著 者|ナサリア・ホルト 訳 者|石原薫 出版社|フィルムアート社 定 価|2,600円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|456 ISBN|978-4-8459-2002-0 初 版|2021年02月 Contents 序文 年表 1 若かりし日 2 口笛吹いて働こう 3 星に願いを 4 花のワルツ 5 リトル・エイプリル・シャワー 6 私の赤ちゃん 7 ブラジルの水彩画 8 ユア・イン・ジ・アーミー・ナウ 9 ジッパ・ディー・ドゥー・ダー 10 これが恋かしら 11 私だけの世界 12 きみもとべるよ! 13 いつか夢で 14 ダルメシアン・プランテーション 15 小さな世界 16 おいっちに、おいっちに 17 パート・オブ・ユア・ワールド 18 闘志を燃やせ! 19 生まれてはじめて エピローグ ハピリー・エバー・アフター 謝辞 Author ナサリア・ホルト Nathalia Holt 1980年生まれ。ノンフィクション作家。南カリフォルニア大学、テュレーン大学、ハーバード大学で学び、マサチューセッツ総合病院ラゴン研究所、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学などで研究職に就く。サイエンスライターとして『ニューヨーク・タイムズ』、『ロサンゼルス・タイムズ』、『タイム』等に寄稿。また、カリフォルニア工科大学図書館、ハーバード大学のシュレシンガー図書館などでも執筆活動を行っている。邦訳された著書に『完治』(岩波書店)や『ロケットガールの誕生』(地人書館)がある。 Translator 石原 薫 Kaoru Ishihara 翻訳家。国内メーカー、米系デザイン会社勤務を経て、書籍の翻訳や企業向けの翻訳に携わる。訳書に『ピクサー流 創造するちから』、『よい製品とは何か』(以上ダイヤモンド社)、『姿勢としてのデザイン』、『HELLO WORLD』、『NYの「食べる」を支える人々』、『シビックエコノミー』(以上フィルムアート社)、『未来をつくる資本主義』(英治出版)、『Sustainable Design』(ビー・エヌ・エヌ)などがある。
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シネアスト宮崎駿 奇異なもののポエジー
¥3,960
「このジャンルのファンは彼のヴィジュアルな豊かさを讃え、評論家は彼のテーマの密度を誉めるが、彼が同時に、たぶん何にもまして真の映画演出家であるということを強調することがあまりにしばしば忘れられているのだ。 (…)登場人物たちが字義的意味でリアルではないとしても、彼らはやはりシーンの空間──デッサンによって創造されたものであろうと──のなかに住んでいるのであり、映画表現に特有の手段はやはり監督にとって原材料なのである。 本書においてアニメがフレーミングの階梯の変化、カメラの移動、画面の奥行きの作用、モンタージュや音声の作業などを伴った〈ほんとうの映画〉のように扱われていると知っても驚かないでいただきたい。それはずっと前から当然のことなのだ。彼の数多くの才能のなかでも間違いなくもっとも配慮されてこなかったシネアスト宮崎という側面を理解するため、こうした演出がどのように内密に物語の組織化に関与し、かくして作品を観る際の喜びに関与しているのかが分析されることになろう」 スタッフとして参加した『太陽の王子 ホルスの大冒険』『長靴をはいた猫』『どうぶつ宝島』から監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』まで。世界の映画史、アニメーション史をふまえつつ精緻な作品分析を積み重ねたモノグラフィ。 [出版社より] 原 書|HAYAO MIYAZAKI, CINÉASTE EN ANIMATION: Poésie de l’insolite 著 者|ステファヌ・ルルー 訳 者|岡村民夫 出版社|みすず書房 定 価|3,600円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|280 ISBN|978-4-622-08894-3 初 版|2020年10月 Contents 読者への覚え書き 謝辞 序 第1章 宮崎、喜劇の設計者 1 東映動画の『ホルス』後 2 場面設計者・宮崎 3 映画的なものと遊戯的なもの 4 場面に関するものとメカニカルなもの 5 宮崎、「肉体派の軽業師」 第2章 日常における冒険 1 想像的なものにおける具体的なもの a 簡素なイントロダクション/ b 天空の音と大地の……/ c 帆にはらまれる風/ d 大地にふれる足 2 自然的時間性 a 道具と人間/ b 動物と無名な人/ c 散歩の時間/ d うがたれたクライマックス 第3章 驚異における自然的なもの 1 観照的なものから奇異なものへ a 遺跡と人々/ b 自分の生を生きるクリーチャー 2 となりの奇異なもの a トトロの下描き/ b メイと(は)白兎/ c サツキ、アンチ・アリス 3 キキ、ポルコ、千尋…… a 都市のなかの豚/ b 旅の終わりに、想像的なもの 結論 付録 会見とディスカッション 「日本のヌーヴェル・イマージュ」フェスティバル 注 文献 西洋における(日本の)アニメーションとその他の著作、インターネットサイト 訳者あとがき Author ステファヌ・ルルー Stéphane Le Roux フランス・レンヌ市のリセ・ブレキニー「映画オーディオヴィジュアル」クラス教授。レンヌ第2大学講師。アニメーション映画研究者。2007年、レンヌ第2大学に提出した論文‟Scénographie et cinématographie du dessin animé: de Toei à Ghibli (1968-1988), le parti du réalisme de Isao Takahata et Hayao Miyazaki”により博士号取得。著書Isao Takahata, cinéaste en animation : modernité du dessin animé, 2010, Hayao Miyazaki, cinéaste en animation: poésie de l’insolite, 2011(本書)。 Translator 岡村 民夫 Tamio Okamura 1961年、横浜に生まれる。立教大学大学院文学研究科単位取得満期退学(フランス文学専攻)。法政大学国際文化学部教授。表象文化論。著書『旅するニーチェ リゾートの哲学』(白水社 2004)『イーハトーブ温泉学』(みすず書房 2008)『柳田国男のスイス――渡欧体験と一国民俗学』(森話社 2013)『立原道造――故郷を建てる詩人』(水声社 2018)、共著『映画史を学ぶクリティカル・ワーズ』(フィルムアート社 2003/ 増補版2013)『宮沢賢治 驚異の想像力』(朝文社 2008)『温泉の原風景』(岩田書院 2013)『燦然たるオブジェたち――小津安二郎のミクロコスモス』(花書院 2014)『国際都市ジュネーヴの歴史――宗教・思想・政治・経済』(昭和堂 2018)、訳書『デュラス、映画を語る』(みすず書房 2003)、共訳ドゥルーズ『シネマ2*時間イメージ』(法政大学出版局 2006)ほか。
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セーラームーン世代の社会論
¥1,540
SOLD OUT
『こち亀』は現代の「浮世絵」だ! 本書は、「セーラームーン世代」を分析する本です。『セーラームーン』に登場した敵の主張には、セーラームーンたちの「正義」が隠れており、さらにセーラーチームの日常は、現在のアラサー女子の仕事観や、女性観などに多大な影響を及ぼしています。また、月野うさぎを分析すれば、セーラームーン世代の恋愛観までもが浮き彫りに……。 「『セーラームーン』ってこんなに深かったの!?」と思わずにはいられない読み応えたっぷりの1冊! [出版社より] 著 者|稲田豊史 出版社|すばる舎 定 価|1,400円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|224 ISBN|9784799104385 初 版|2015年05月 Contents 第1章 「セーラームーン世代」とは何か 第2章 セーラームーン世代は何と戦っているのか 〈インターバル〉 セーラームーン世代のアンセムとしてのエンディング曲 第3章 セーラーチームの女性観とチーム力 第4章 〈月野うさぎ〉という1990年代女児のロールモデル 第5章 『セーラームーン』の時代 第6章 セーラームーン世代の恋とセックスとジェンダー Author 稲田豊史 Toyoshi Inada 1974年、愛知県生まれ。編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て、2013年よりフリーに。
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ユリイカ 2020年8月号 今敏の世界
¥1,870
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〈今 敏〉とはなんだったのか——。 今 敏が不在となった2010年代はしかし、映画においてこそアニメーションの時代と言っても過言ではない。そうした時代に、映像の論理をむき出しにした今 敏のアニメーションはどのように見られるのか、あるいは今 敏というイマージュはどのように語られてきたのか、マンガ家としてのキャリアをはじめアニメーション作品の代表作に至るまで、没後10年のいま問いなおす。 [編集部より] 出版社|青土社 定 価|1,700円+税 判 型|A5変型判/並製 頁 数|294 ISBN|978-4-7917-0388-3 初 版|2020年07月 Contents 特集*今 敏の世界――『PERFECT BLUE』『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』…その先の10年 ❖対談〈1〉 アニメートする今 敏 / 井上俊之 小西賢一 司会・構成=高瀬康司 ❖インタビュー 継承と手習い――工房主としての今 敏 / 板津匡覧 聞き手=高瀬康司 ❖彼の想いで 『千年女優』の思い出 / 滝沢聖峰 絵の秘密 / 沖浦啓之 今 敏さん / 松尾 衡 今さん、本当にずるいよ / 三間雅文 ❖アニメーションの息づく画 虚構とまじりあう現実 / 中田健太郎 今 敏の妄想機械――個人に作用する集団の夢 / 石岡良治 明晰な自意識――今 敏のアニメーション制作術 / 藤津亮太 マンガ家・今 敏 / 鈴木淳也 ❖メールインタビュー〈2〉 ガムランの古武術 / 平沢 進 聞き手=編集部 ❖今 敏と書く/描く 〈夢・現実・記憶〉を追って / 柴田勝家 「アイドル未麻」と「キャラクター」――それをみるわたしたち / 藍嘉比沙耶 ❖今 敏というファンタズム 境界性のミーム、あるいは輪郭と旋律はいかに抵抗したか / 斎藤 環 カンティレヴァーされたスローモーション――今 敏の技法 / 荒川 徹 夢見る生命にむけて――今 敏のアニメーションの原理について / 上尾真道 夢を取り戻すことを夢見て――今 敏の分身(ダブル) / 木澤佐登志 腐(くさ)すヒロインたち――《パプリカ》の分身、《パーフェクトブルー》の転身、《千年女優》の純真 / 春木晶子 ❖対談〈2〉 今 敏の本棚 / 丸山正雄 今 京子 ❖夢の代理人 今 敏を追いかけている。 / 末満健一 『東京ゴッドファーザーズ』2021舞台化、演出に向けて / 藤田俊太郎 ❖KON'S CHRONICLE 人体を模型(モデル)化するアニメ――『パーフェクトブルー』の箱庭空間と九〇年代以降のキャラ表現 / 松下哲也 倒錯の愛のロンド――今 敏『千年女優』試論 / 北村匡平 アニメーションはもう少しでしゃべり出す――『東京ゴッドファーザーズ』に表れる声と身体の逸脱 / 細馬宏通 虚実混交をアニメ的に描くこと――『妄想代理人』における物語的な虚実とアニメ存在論的な虚実 / 小松祐美 オヤスミ / 黒嵜 想 ❖メールインタビュー〈2〉 幸福路の今 敏 / 宋欣穎 聞き手=編集部 ❖語彙としての今 敏 今 敏における間メディア的な執着 / トーマス・ラマール 訳=田村正資 パーフェクト・フレーム / イリヤ・クブシノブ ❖アニメーションの彼方 断絶と連続、今 敏の時代と深夜アニメの二〇一〇年代――二一世紀アニメ史の解釈学に向けて / 川口茂雄 かつて世界が私たちに応えてくれたときのこと / 土居伸彰 今 敏研究の現在とこれから / 宮本裕子 海外のアニメ研究と日本 / クッキ・チュー ❖千年の今 敏 今 敏主要映像作品解題 / 宮本裕子 ー ❖連載 私の平成史 7 / 中村 稔 ❖詩 浸みゆく光、藍色に染まる鳥の夢 / 奥間埜乃 ❖今月の作品 菊谷浩至・夜野なみだ・行待文哉・川﨑ありさ・長谷川 航・千種創一 / 選=和合亮一 ❖われ発見せり 「哲学」という迂回路 / 山野弘樹 表紙イラストレーション cover iIlustration = 今 敏©KON'STONE
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21世紀のアニメーションがわかる本
¥1,980
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日本を見れば、世界がわかる。 『君の名は。』『この世界の片隅に』『聲の形』、そして『夜明け告げるルーのうた』……。 2016年から2017年の日本の長編アニメを、世界のアニメーションの文脈から読み解くと、アニメーションの(そして私たちの人間の)分岐点が見えてくる。いま、アニメーションの何が私たちの心を掻き立てるのだろうか? 世界のアニメーションを知り尽くした気鋭の論客・土居伸彰が放つ、現代アニメーションの見方をアップデートする、まったく新しいアニメーション入門! 空洞化したアニメーションは、埋められるためのなにかを待っている。 まだ見ぬ未知の、名前も知らないなにかを。 [出版社より] 著 者|土居伸彰 出版社|フィルムアート社 定 価|1,800円+税 判 型|四六判 頁 数|232 ISBN|978-4-8459-1644-3 初版|2017年9月 Contents はじめに 2016年、日本。 ・2016年年、日本。その分岐点 ・筆者の立場 ・日本と海外のシンクロ ・「個人的な」作品の拡張と変容 ・『君の名は。』と『この世界の片隅に』―― 世界や事実は果たして唯一なのか? ・1980年代と2000年代、自主制作の二つの世代 ・『聲の形』――「私」が「私たち」となった時代に ・デジタル化以後の表現を探る 第1部 「伝統」vs「部外者」――環境の変化 1 長編アニメーションの場合 ・21世紀、長編アニメーションの時代 ・大規模作品―― CGアニメーションが全世界に広がる ・小規模作品――個人制作長編の流れ ・中規模作品(1) 巨匠たちの新たなステージ ・中規模作品(2) グラフィック・ノベルとアニメーション・ドキュメンタリー ・中規模作品(3) アメリカン・インディーズ ・「部外者」による小規模作品 2 短編アニメーションの場合 ・短編アニメーションのドラスティックな変化 ・2000年代の「伝統」(1) 「自主制作」と「アニメーション作家」 ・2000年代の「伝統」(2) DVD、ミニシアター、そして「アート・アニメーション」 ・2000年代の「伝統」(3) 映画祭文化が支える「アニメーション作家」の世界 ・「部外者」の歴史(1) ドン・ハーツフェルトとインターネット ・「部外者」の歴史(2) 動画サイトとSNSが作る「第三」の歴史 ・動画サイト以後の新しい歴史観 インターミッション 21世紀のモード――「私」から「私たち」へ ・「大人」向けアニメーションが描く「私」の世界 ・「私」vs「世界」の図式と、その終焉 ・アニメーションの「ゾンビ化」 ・2010年代の小・中規模作品(1)―― 深みのある「私」から、空洞の「私たち」へ ・2010年代の小・中規模作品(2)―― 棒線画としての人間 ・2010年代の小・中規模作品(3)――「私」でも「普遍」でもない「中間」の存在 ・2010年代のディズニー・ルネサンス―― 無数の「私たち」を呑み込む方法論 ・新海誠はいかなる意味で「ポスト・ジブリ」なのか ・21世紀のモード――『コングレス未来学会議』 第2部 空洞と空白のイメージ――表現の変化 1 デジタル時代の孤独な「私たち」 ・匿名の運動が辿り着くところ ・異質な何かがうごめく ・「外部」が消えていく ・自分自身の檻から抜け出すことができない ・生命が邪魔になるとき 2 空洞化するイメージとファジーな「私(たち)」 ・象徴としてのアニメーションはその背後に意志を隠している ・空洞化する「私たち」にはあらゆるものが流れ込む ・ファジーな現実、ファジーなアニメーション ・デイヴィッド・オライリーの「野生」のアニメーション ・「私たち」は自分自身の夢を見る 3 YOU ARE EVERYTHING ・空洞は万物を呼び込む ・空洞を埋めつくす無数の吸着点 ・フリーズと再起動によって浮かび上がってくるもの ・他人の痛みを宿らせる ・無に浮かぶ抽象的な「あなた」が「私」を「私たち」にしてくれる おわりに 再び2016年、日本。そして2017年。 ・アニメーションの変化とは「私たち」の変化である ・『君の名は。』――「私たち」を効率的に救う ・『この世界の片隅に』――「私」の時代の瀬戸際 ・『聲の形』――さわがしい「私たち」へ ・2017年の新たな一歩―― 湯浅政明 ・空白にざわめきを見出す あとがき Author 土居伸彰 Nobuaki Doi 1981年東京生まれ。株式会社ニューディアー代表、新千歳空港国際アニメーション映画祭フェスティバル・ディレクター。ロシアの作家ユーリー・ノルシュテインを中心とした非商業・インディペンデント作家の研究を行うかたわら、AnimationsやCALFなど作家との共同での活動や、「GEORAMA」をはじめとする各種上映イベントの企画、『WIRED』での連載等の執筆などを通じて、世界のアニメーション作品を広く紹介する活動にも精力的に関わる。2015年にニューディアーを立ち上げ、『父を探して』など海外作品の配給を本格的にスタート。国際アニメーション映画祭での日本アニメーション特集キュレーターや審査員としての経験も多い。2016年12月に初の単著となる『個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメーション論』(フィルムアート社)を上梓。同書で日本アニメーション学会賞2017を受賞。
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ぼくらがアニメを見る理由 2010年代アニメ時評
¥2,640
ぼくらはどうしてアニメを見つづけるのか? 2010年代のアニメはなぜ/何が面白いのか? 国内外、あらゆるジャンルのアニメを縦横無尽に見つめる著者による、 2010年代アニメをいま改めて「言葉でつかまえる」ための、壮大なスケッチがここに。 ー 『君の名は。』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』『この世界の片隅に』『海獣の子供』などの劇場作品から、 『魔法少女まどか☆マギカ』『おそ松さん』『けものフレンズ』『宇宙よりも遠い場所』などTV放映作品、 『父を探して』『LEGO® ムービー』『スパイダーマン:スパイダーバース』などの海外作品まで、 2010年代アニメの何が人を惹き付けてきたのか。 本書はアニメ評論家として活動する筆者が、2010年代アニメ作品を多様な視点で読み解く一冊です。 人気連載「アニメの門」で展開された時評、そして各種雑誌等に掲載された論考を中心に加筆・修正を行い、 2010年代が終わりを迎えようとしている今、この10年間のアニメを改めてみつめなおし、 その広大な流れを掴むために絶好の一冊となっています。 [出版社より] 「藤津さんならではの明晰でフラットな視点が、『知ってるつもり』だった作品たちの輪郭を、改めてくっきりと浮かび上がらせてゆく! ——この風通しの良さこそ、いま必要とされる『批評』の仕事だと思う」 ——宇多丸[ラッパー/「アフター6ジャンクション」パーソナリティー] 著 者|藤津亮太 出版社|フィルムアート社 定 価|2,400円+税 判 型|四六判 頁 数|404 ISBN|978-4-8459-1836-2 初版|2019年8月 Contents はじめに 第一部 2010年代のアニメ作家たち ■『天気の子』『君の名は。』―新海誠の周辺 モノローグのなくなった世界で―『星を追う子ども』/”新海誠らしさ”とは何か/新海誠作品に見る”実体のない喪失感”と”世界の広がり”―『君の名は。』/非対称な「入れ替わり」と「当事者性」―『君の名は。』/「あえて間違うこと」で守られる聖域―『天気の子』 ■『かぐや姫の物語』『風立ちぬ』―2010年代のスタジオジブリ 宮崎駿のSHOWTHEFLAG―『ハウルの動く城』/幻視の中で手を伸ばして―『風立ちぬ』/たけのこの「ふるさと」―『かぐや姫の物語』/高畑勲の描いた「普通」と「理想」/不思議な宙づり感覚のわけ―『思い出のマーニー』 ■『この世界の片隅に』―片渕須直のいるところ アニメ史の中の『この世界の片隅に』/すずの右手と世界の繋がり―『この世界の片隅に』 ■『リズと青い鳥』―山田尚子の歩み 柔らかに描き出される時間と人々―『たまこまーけっと』/「変わること」を受け入れること―『たまこラブストーリー』/みぞれと希美の距離感を巧みに描く、映像言語の饒舌さ―『リズと青い鳥』 ■『未来のミライ』―細田守の道 「おおかみこども」と「母」と「花」―『おおかみこどもの雨と雪』/「神の手」は大衆を救う―『バケモノの子』/これは”家族”の物語ではない―『未来のミライ』 第二部 作品は語る ■アニメの描くもの 眼を閉じることと開くこと―『鉄コン筋クリート』/その語り口を目だけでなく、音でも聞き分けるために―『truetears』/魔法少女たちに永遠の花束を―『魔法少女まどか☆マギカ』/リンゴ、毛糸、花びら、炎―『輪るピングドラム』/アニメーションの輝きが照らす問題―『虹色ほたる~永遠の夏休み~』/アオが見つけた青い鳥―『エウレカセブンAO』/言葉と「間」―『HUNTER×HUNTER』/三つのレイヤーで描かれるひとつの普遍的な物語―『SHIROBAKO』/μ’s色に上書きされる世界―『ラブライブ!TheSchoolIdolMovie』/言葉と心の”不調和”をめぐる物語―『心が叫びたがってるんだ。』/”強者”と”弱者”の物語―『甲鉄城のカバネリ『』コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』/「人間ごっこ」が「人間らしさ」へ移り変わる瞬間―『けものフレンズ』/”自由をめぐる物語”の再構築―『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』/”母”ではなく、”娘”の物語として―『さよならの朝に約束の花をかざろう』/眼の前にいない友達について考えること―『宇宙よりも遠い場所』/波打ち際から覗き込まれる”祭り”―『海獣の子供』 ■キャラクターの風景 記号と肉体の産物としての「キャラクター」―『男子高校生の日常』/ヒーローへの感染―『ガッチャマンクラウズ『』サムライフラメンコ』/「アイドル」の〈あり方〉―『アイカツ!』『THEIDOLM@STER』『WakeUp,Girls!『』ラブライブ!』/ロボットバトルにおける説得力―『アルドノア・ゼロ』『ガールズ&パンツァーこれが本当のアンツィオ戦です!』/内面のない厄介な男―『ルパン三世PARTIV』/アニメで演じられるコント―『おそ松さん』/未熟なアッコを主人公たらしめたもの―『リトルウィッチアカデミア』/ルパン・イズ・フォーエヴァー―『ルパン三世PART5』 ■アニメの表現と周辺 アニメにとってのハルヒ、ハルヒにとってのアニメ―『涼宮ハルヒの憂鬱』/帰ってきた「日常」―『日常‐nichijou‐』/「呪い」を解いた新たなテーマ―『宇宙戦艦ヤマト2199』/アニメーションの事件―『花とアリス殺人事件』/画面に「うつるもの」と「出せないもの」の境界―『監獄学園』『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』/キャラクターの情報量をいかに制御するのか―『甲鉄城のカバネリ』『ゴッドイーター』/”ベストテン”とはどうあるべきか?―「映画芸術」アニメ除外問題が浮き彫りにしたもの/これはアニメなのか―『バーチャルさんはみている』/圧倒的熱量を支える”ルックの説得力”―『プロメア』 ■2010年代海外アニメーション マクダルの冷や汗―『マクダルパイナップルパン王子』/対照的なエンターテインメント―『シュガー・ラッシュ』『パラノーマンブライス・ホローの謎』/「大人の趣味」と「子供の遊び」の葛藤―『LEGO®ムービー』/せめぎ合いこそが人生―『父を探して』/トーキング・アニマルの仕掛け―『ズートピア』/貴種流離譚としての物語構造―『KUBO/クボ二本の弦の秘密』/「すべての映画がアニメになった」後に―『スパイダーマン:スパイダーバース』 あとがき Author 藤津亮太 Ryota Fujitsu 1968年生まれ。アニメ評論家。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優言』(一迅社)、『わたしの声優道』(河出書房新社)がある。各種カルチャーセンターでアニメの講座を担当するほか、毎月第一金曜日に『アニメの門チャンネル』で生配信を行っている。
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アニメ制作者たちの方法 21世紀のアニメ表現論入門
¥1,980
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いま、アニメーション制作者たちは自らの「表現」に何を求めているのか。デジタル技術の広がりや、新世代の台頭を受け、アニメーションの制作現場では何が変化し、どんなことが可能になったのか。幅広い世代の作り手たちによる今日のクリエイションをめぐる証言とともに、世界のアニメーションにおける潮流との関係や、放映/配信といったメディア環境そのものの変容、アニメと他ジャンルとの越境・混交をめぐる分析的視点をもって、今日のアニメーションを読み解く。 いまアニメを作るためのクリエイティビティはどこに眠っているのか。いまアニメを見ることの可能性はどこに繋がっているのか。アニメを「作る」ことと「見る」こと、その二つの重なり合う日本アニメの最前線に立つための必読書! [出版社より] 編著者|高瀬康司 出版社|フィルムアート社 定 価|1,800円+税 判 型|四六判 頁 数|296 ISBN|978-4-8459-1808-9 初版|2019年2月 Contents Introduction 新しい方法 高瀬康司 Interview 1 自然主義的なアニメーションとそれを語るための言葉たち 片渕須直 Column1 アニメーションの絵はなぜ動いて見えるのか――心理学から考える 吉村浩一 Discussion 1 作画におけるリアリティとは何か――平成三〇年間の作画表現史を考える 井上俊之+押山清高 Discussion 2 デジタル時代の作画表現を求めて――タイムライン、ムービー、コンポジット 山下清悟×土上いつき Expanded Work アニメーション制作の方法――『古の女神と宝石の射手』アニメーションPVを例に Colummn 2 Flashから見るデジタル作画の別の可能性――Web系アニメーターの思想と新しい作画 福本達也 Discussion 3 コンポジットの快楽をめぐって――アニメーション撮影の歴史と表現 泉津井陽一×山田豊徳 Interview 2 アニメ表現のダイバーシティへ向けて――MV、3DCG、VR 京極尚彦 Situation/History 日本アニメーションの現在地 対談 ムーブメントとメタモルフォーゼ――宇宙、日本、豊島 久野遥子×土居伸彰 コラム 宮崎駿に見る「東洋のディズニー」の非「ディズニー」性 原口正宏 論考 アニメとメディアとビジネス 藤津亮太 Critic 横断するアニメーション 対談 不純なアニメのために――「横断するアニメーション」のためのイントロダクション 石岡良治×高瀬康司 論考 アニメ化する映画/映画化するアニメの現在 渡邉大輔 論考 漫画と共に歩んだアニメの表現――運動、カメラアングル、描き文字、集中線 泉信行 論考 時間のなかで時間を失う/アートとアニメの「経験の仕方」の形式 古谷利裕 コラム 吹奏楽の物語――アニメにおける音楽的演出について 吉田隆一 コラム アニメと特撮の最接近が意味するもの 氷川竜介 Study 1 アニメ制作者たちによる必見作品ガイド 『じゃりン子チエ 劇場版』/『どうぶつ宝島』/『ユンカース・カム・ヒア』パイロットフィルム/『かぐや姫の物語』/『ニムの秘密』/『老婦人とハト』 井上俊之 『ベルヴィル・ランデブー』/『ピノキオ』/『AKIRA』/『東京ゴッドファーザーズ』/『ルパン三世 カリオストロの城』/『ホーホケキョ となりの山田くん』 押山清高 『NARUTO-ナルト-』第30話「蘇れ写輪眼!必殺・火遁龍火の術!」/『ラーゼフォン』第15話「子供たちの夜」/CM「マックスバリュ九州」/『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』第3話「鉄骨のひと」 山下清悟 『鉄腕バーディー DECODE:02』第12話「Before Long」/『逮捕しちゃうぞ』第39話「嗚呼!青春のビーチバレー男」/『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』/『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』第13話「衝撃! キャプテンは父さん!?」/『ハヤテのごとく!』第39話「よいこの友達 借金執事万才!」/『どうぶつ宝島』 土上いつき 『リズと青い鳥』/『聲の形』/『Free!-Dive to the Future-』/『放浪息子』/『Fate/Zero』 泉津井陽一 『詩季織々』/『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』/『メガロボクス』/『耳をすませば』 山田豊徳 『捨て猫トラちゃん』/『バンビ』/『黄金の森の美女』/『映画 クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』 久野遥子 『話の話』/『マインド・ゲーム』/『君の名は。』/『ウェイキング・ライフ』/『戦場でワルツを』 土居伸彰 Study 2 メディア横断的にアニメを見るための作品ガイド 『若おかみは小学生!』 福本達也 『花とアリス殺人事件』 土居伸彰 『機動戦士ガンダム』 藤津亮太 『INGRESS THE ANIMATION』 藤津亮太 『スカイ・クロラ』 渡邉大輔 『夜明け告げるルーのうた』 渡邉大輔 『進撃の巨人』 泉信行 『やがて君になる』 泉信行 『響け!ユーフォニアム』 古谷利裕 『少女終末旅行』 古谷利裕 Study 3 アニメーションをめぐるブックガイド Editor & Author 高瀬康司 Koji Takase サブカルチャー批評、アニメ研究、編集、ライター。『ユリイカ』(青土社)などでの批評、各種アニメ・マンガ・デザイン誌やWeb媒体、Blu-ray&DVDブックレットへの寄稿多数。カルチャー批評ZINE『Merca』編集長。