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非暴力主義の誕生——武器を捨てた宗教改革
¥1,034
宗教改革の渦中に生まれ、迫害されながらも非暴力を貫くある少数派の信仰は私たちに何をもたらしたか。愛敵と赦しの五〇〇年史。 一五二五年、宗教改革の渦中、幼児洗礼を拒むキリスト教の一派が誕生した。異端として迫害されながらも聖書の教えを守り、非暴力を貫いた彼らの信仰は、戦争の止まない現代に生きる私たちに何を語りかけるのか。メノナイト、アーミッシュ、良心的兵役拒否、被爆者の日米交流まで、五〇〇年にわたる愛敵と赦しの軌跡を辿る。 [出版社より] 著 者|踊共二 出版社|岩波書店[岩波新書] 定 価|940円+税 判 型|新書判/並製 頁 数|238 ISBN|9784004320494 発 行|2025年01月 Contents はじめに――再洗礼派というマイノリティ 第1章 複数の宗教改革 1 中世までのキリスト教 2 ルターとドイツ宗教改革 3 ツヴィングリとスイス宗教改革 4 再洗礼派の誕生 第2章 迫害と離散――ヨーロッパの片隅で 1 二一世紀のウクライナ 2 迫害・殉教・ノンレジスタンス 3 ザトラーの殉教 4 愛敵と赦しの精神 5 兵士の改宗と亡命 第3章 追跡する国家 1 ベルンの再洗礼派狩り 2 アルザス移民とアーミッシュの誕生 3 クライヒガウの定住地 4 集団追放の試練 第4章 新天地アメリカ 1 ドイツ人のメイフラワー 2 アーミッシュの定住 3 ノースキルの悲劇 4 アメリカ独立戦争 第5章 近代国家と徴兵制 1 「先進国」フランス 2 軍国化するドイツ 3 スイスとオランダの変化 4 南北戦争によるアメリカの分断 第6章 両大戦の試練 1 ドイツ・メノナイトとナショナリズム 2 ロシア・メノナイトの苦難 3 アメリカの代替役務制度 第7章 核の時代の非暴力主義 1 ある被爆者の訪米とメノナイト宣教師の来日 2 国際化する人道支援事業 3 良心的兵役拒否の合法化 4 ノンレジスタンスの代償 5 ガザに平和を 終 章 ノンレジスタンスの限界と可能性 1 イエスは抵抗を教えたか 2 古今東西の平和思想・戦争論 3 ノンレジスタンスの限界と可能性 あとがき 図版出典 参考文献 Author 踊 共二 Tomoji Odori 1960年福岡県生まれ. 1983年早稲田大学第一文学部卒業,1991年同大学大学院文学研究科博士課程を満期退学,2002年同大学博士(文学)学位を取得.武蔵大学リベラルアーツ&サイエンス教育センター教授. 専攻─スイス史,中近世ヨーロッパ史. 著書─『改宗と亡命の社会史──近世スイスにおける国家・共同体・個人』(創文社,2003年,『図説 スイスの歴史』(河出書房新社,2011年). 共著─『忘れられたマイノリティ──迫害と共生のヨーロッパ史』(山川出版社,2016年). 編著─『記憶と忘却のドイツ宗教改革──語りなおす歴史 1517ー2017』(ミネルヴァ書房,2017年), 『アルプス文化史──越境・交流・生成』(昭和堂,2015年). 監修─『一冊でわかるスイス史』(河出書房新社,2024年).
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機械状エロス 日本へのまなざし
¥3,740
日本に深く魅了され、じつに8度来日したフェリックス・ガタリ。現代日本の芸術家たちとの出会いと対話は、その思想に何をもたらしたのか――。ガタリの日本をめぐるテクストを精選・読解。 日本に深く魅了された稀代の思想家による日本社会のスキゾ分析。誰も気づかなかった日本がここにある。 田中泯、田原桂一、今井俊満、高松伸、草間彌生……。日本の芸術家たちとの出会いと対話は、何をもたらしたのか? 田原桂一『顔貌』よりガタリの肖像写真を掲載。粉川哲夫の導入的インタビュー、欧米の代表的ガタリ研究者による秀逸な解説も。 [出版社より] 著 者|フェリックス・ガタリ 編 者|ギャリー・ジェノスコ、ジェイ・ヘトリック 訳 者|杉村昌昭、村澤真保呂 出版社|河出書房新社 定 価|3,400円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|242 ISBN|978-4-309-20912-8 発 行|2024年12月 Contents Ⅰ フェリックス・ガタリの日本論 誇らしげな東京 粉川哲夫によるインタビュー──〈トランスローカル〉をめぐって 舞踏 田中泯との対話──身体の動的編成をめぐって 田原桂一の顔貌機械 田原桂一の〈未視感〉 〈カオスモーズ〉の画家、今井俊満 草間彌生の〈豊かな情動〉 高松伸の〈建築機械〉 高松伸との対話──特異化とスタイル エコゾフィーの実践と主体的都市の復興 Ⅱ ガタリにとって日本とは何か 情動的転移と日本の現代アート(ギャリー・ジェノスコ) 批判的ノマディズム?──日本におけるフェリックス・ガタリ(ジェイ・ヘトリック) 訳者解説 ガタリの「日本論」について(杉村昌昭) 編者の二論文について(村澤真保呂) Author フェリックス・ガタリ Pierre-Félix Guattari 1930-1992年。哲学者・精神分析家。ドゥルーズとともに『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』『哲学とは何か』などの歴史的名著を遺す。単著も『分子革命』『三つのエコロジー』など多数。 Translator 杉村 昌昭 Masaaki Sugimura 1945年生まれ。龍谷大学名誉教授。フランス現代思想専攻。 村澤 真保呂 Mahoro Murasawa 1968年生まれ。龍谷大学社会学部教授。
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私が諸島である——カリブ海思想入門
¥2,530
この海の下で我々は手を取り合う——。 カリブ海思想について新たな見取り図をえがく初の本格的な入門書。 西洋列強による植民地支配の結果、カリブ海の島々は英語圏、フランス語圏、スペイン語圏、オランダ語圏と複数の言語圏に分かれてしまった。それらの国々をそれぞれ孤立したものとしてではなく、諸島として見るということ。カリブ海をひとつの世界として認識し、その独自の思想を体系化する画期的著作。これからのカリブ海思想研究のためのリーディングリストを付す。 「web侃づめ」の大好評連載が大幅増補され、ついに書籍化。カリブ海思想研究の俊英による待望のデビュー作。 [出版社より] 著 者|中村 達 出版社|書肆侃侃房 定 価|2,300円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|343 ISBN|9784863856011 発 行|2023年12月 Contents 序章 冒険の季節 第1章 ひとつの世界としてのカリブ海 第2章 1492を越えて、人間であること 解呪の詩学 第3章 カリブ海を定義する者へ 存在論的不純性 第4章 神話とカリブ海 悲しくも希望に満ちた叙事詩 第5章 出会いを押し進めるために 相互歓待 第6章 カリブ海の社会モデル論 プランテーション、多元、クレオール 第7章 環カリブ海的経験のクレオライゼーション この海の下で、我々は手を取り合う 第8章 カリブ海によるクレオール的時政学 海が歴史である 第9章 ミサイルとカプセル 円環性の実践としての弁潮法 第11章 カリブ海のポストモダンの地平 カリビアン・カオス(前編) 第12章 カリブ海のポストモダンの地平 カリビアン・カオス(後編) 第13章 押し付けられた言語は誰の存在の家か 私‐像を描く言語 第14章 クレオール礼賛の裏で カリビアン・フェミニズム 第15章 クレオールの精神 カリビアン・クィア・スタディーズ Author 中村 達 Toru Nakamura 1987年生まれ。専門は英語圏を中心としたカリブ海文学・思想。西インド諸島大学モナキャンパス英文学科の博士課程に日本人として初めて在籍し、2020年PhD with High Commendation(Literatures in English)を取得。現在、千葉工業大学助教。主な論文に、“The Interplay of Political and Existential Freedom in Earl Lovelace's The Dragon Can't Dance”(Journal of West Indian Literature, 2015)、“Peasant Sensibility and the Structures of Feeling of "My People" in George Lamming's In the Castle of My Skin”(Small Axe, 2023)など。
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アフリカ哲学全史
¥1,430
人類の起源以来、最長の歴史をもつ大陸の哲学。 これまでの哲学を相対化する、未踏の思考の沃野へ。 サハラ以南のアフリカ、カリブ海諸国の哲学と欧米でのアフリカ人の哲学を解説する日本初の入門書。従来の哲学を相対化し、複数世界に共通する思考を解明する。 ー アフリカ哲学は、北アフリカのイスラム文化に基づく哲学、サハラ以南地域の哲学、アフリカ大陸の外で発展したアフリカーナ哲学に分けられ、アフリカーナ哲学はカリブ海の島々で発展した哲学も含む。本書は日本初のアフリカ哲学の入門書として、サハラ以南のアフリカ、カリブ海諸国で展開された哲学、アフリカ大陸での哲学に影響を及ぼしたアメリカやヨーロッパでのアフリカ人の哲学を解説。これまでの哲学を相対化し、複数の世界に共通する人間の思考のあり方を解明する試み。 [出版社より] 著 者|河野哲也 出版社|筑摩書房[ちくま新書] 定 価|1,300円+税 判 型|新書判 頁 数|480 ISBN|978-4-480-07636-6 発 行|2024年07月 Contents 序 章 アフリカ哲学への誘い I 歴史篇――アフリカ哲学全史 第1章 古代からキリスト教哲学へ 第2章 前植民地期から反植民地闘争へ 第3章 西洋の植民地主義と人種主義の哲学 第4章 反植民地主義闘争と汎アフリカ主義の哲学 第5章 汎アフリカ会議からハーレム・ルネサンスへ――哲学としての音楽 第6章 ネグリチュード運動 第7章 ファノンとカブラル II テーマ篇――現代哲学への視角 第8章 エスノフィロソフィーとその批判 第9章 アパルトヘイトの超克――ガンディーとファノンからビコとマンデラへ 第10章 赦しとウブントゥ 第11章 現代哲学における重要な哲学者 第12章 世界に問いかけるアフリカ哲学 おわりに 人名索引 Author 河野 哲也 Tetsuya Kono 1963年生まれ。立教大学文学部教育学科教授。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻修了。博士(哲学)。著書『問う方法・考える方法』(ちくまプリマー新書)、『道徳を問いなおす』(ちくま新書)、『世界哲学史8』(共著、ちくま新書)、『暴走する脳科学』(光文社新書)など。
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黒人理性批判
¥2,365
「黒人」の歴史は奴隷制や植民地の過去と切り離すことができない。1957年にカメルーンに生まれ、フランスやアメリカで学んだアシル・ムベンベ(Achille Mbembe)は、主著となる本書(2013年)を「世界が黒人になること」と題された「序」から始めた。それは、奴隷制や植民地が特定の人種に限られたものではないこと、そしてすでに過去のものとなった事態ではないことを冒頭で宣言することを意味している。新たな奴隷制や植民地、そして人種差別は形を変えて席捲しうるし、現にしている。それを可能にする構造が今の世界にはある、ということにほかならない。 だからこそ、不幸や苦痛、弾圧や収奪の歴史だった「黒人」の歴史を知り、共有しなければならない。そのとき「黒人」には新たな意味が与えられる。著者は言う。「途上にある者、旅に出ようとしている者、断絶と異質性を経験する者の形象として、「黒人」を新たに想像しなければならない。しかし、この行路と大移動の経験が意味をもつためには、アフリカに本質的な役割を与えなければならない。この経験は私たちをアフリカに回帰させ、または少なくともアフリカというこの世界の分身を通じて方向転換しなければならない」。 アフリカから到来する何か、「黒人」から到来する何かにこそ、悲惨にあふれ、いや増すことを予感するしかない現在の世界を普遍的に、そして原理的に転換する可能性はある。歴史的事実を踏まえつつその意味を明らかにした本書は、エドゥアール・グリッサンの言葉を借りるなら〈全-世界〉に向けられる希望の書である。 [出版社より] 著 者|アシル・ムベンベ 訳 者|宇野邦一 出版社|筑摩書房[講談社選書メチエ] 定 価|2,150円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|344 ISBN|978-4-06-537793-2 初 版|2024年11月 Contents 序 世界が黒人になること 眩暈するような組み立て/未来の人種 1 人種主体 仮構作用と精神の閉域/新たな等級化/「黒人」という実詞/外観、真実、幻影/囲い地の論理 2 幻想の井戸 猶予中の人類/所属決定、内面化、そして反転/白人の黒人と黒人の白人/名前のパラドックス/世界の巨像/世界の分割/国家‐植民地主義/軽薄さとエキゾティズム/みずから理性を失うこと/友愛の限界 3 差異と自己決定 自由主義と急進的悲観主義/誰もと同じ人間/普遍的なものと特殊なもの/伝統、記憶、そして創造/諸々の世界の交通 4 小さな秘密 支配層の諸々の歴史/謎の鏡/商品のエロティシズム/黒人の時間/身体、彫像、肖像 5 奴隷のためのレクイエム 多様性と超過/ぼろぼろの人間/奴隷と亡霊について/生と労働について 6 主体の臨床医学 主人とその黒人/人種の闘争と自己決定/人間への上昇/大いなる喧噪/被植民者の解放的暴力/栄光の影/民主主義と人種の詩学 エピローグ たった一つの世界しかない 訳者あとがき Author アシル・ムベンベ Achille Mbembe 1957年生まれ。カメルーンの哲学者・歴史学者・政治学者。パンテオン=ソルボンヌ大学で歴史学の博士号を取得し、パリ政治学院で政治学の専門研究課程を修了。コロンビア大学、ペンシルヴェニア大学、イェール大学などで教鞭を執ったのち、アフリカに戻る。現在、ウィットウォーターズランド社会経済研究所(ヨハネスブルグ)研究主任。主な著書として、本書(2013年)のほか、Les jeunes et l’ordre politique en Afrique noire (1985); De la postcolonie (2000); Sortir de la grande nuit (2010); Brutalisme (2020)などがある。 Translator 宇野 邦一 Kuniichi Uno 1948年生まれ。パリ第8大学哲学博士。立教大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想、映像身体論。主な著書として、『ドゥルーズ 流動の哲学』(講談社選書メチエ、のち講談社学術文庫(増補改訂))、『反歴史論』(せりか書房、のち講談社学術文庫)、『非有機的生』(講談社選書メチエ)ほか。主な訳書として、アントナン・アルトー『神の裁きと訣別するため』、『タラウマラ』(以上、河出文庫)、ジル・ドゥルーズ『フランシス・ベーコン』(河出書房新社)、『プルーストとシーニュ』(法政大学出版局)、ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス』(河出文庫)、『カフカ』(法政大学出版局)ほか。
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モヤモヤする正義――感情と理性の公共哲学
¥2,860
「表現の自由は大切だが、あまりに攻撃的な表現は許容すべきでない」 「少数派や女性に対してより配慮すべきだが、多数派や男性のことが無視されるのもおかしい」 意見が対立するさまざまな問題について、多くの人はどちらの「正義」にも同意や共感を示し揺れている。こうした正義にまつわるモヤモヤに対し、どの意見が正しいのか、社会の規範はどうあるべきなのか、その「答え」を提示する政治哲学的論考。 キャンセル・カルチャー、マイクロアグレッション、トーン・ポリシング、弱者男性論など重要な概念・議論を題材に、感情に流されない「公共的理性」による問題解決を試みる画期的なテキスト。「晶文社スクラップブック」の連載に大幅加筆・全面改稿した大ボリュームで。 [出版社より] 「理性を公共的に使用せよ──これは多数者と少数者双方への挑戦である」 ──森本あんり 「時代を覆う「正義」と「権利」のインフレ、その核心を突く本書に刮目すべし!」 ──マライ・メントライン 著 者|ベンジャミン・クリッツァー 出版社|晶文社[犀の教室] 定 価|2,600円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|560 ISBN|978-4-7949-7443-3 発 行|2024年09月 Contents ■第一部 社会的批判と自由の問題 第一章 キャンセル・カルチャーの問題はどこにある? 1 「キャンセル・カルチャー」が問題視されるようになった背景 2 デュー・プロセスの侵害 3 キャンセルをする人たちはどこが「おかしい」のか? 第二章 「思想と討論の自由」が守られなければならない理由 1 アカデミアでは「真実」よりも「社会正義」が重視されている? 2 「思想と討論の自由」を擁護するJ・S・ミルの議論 3 ロナルド・ドゥオーキンの「表現の自由」論 4 ネットやマスメディア、書籍の議論があてにならない理由 5 「言論の闘技場」としてのアカデミア ■第二部 マイノリティとレトリックの問題 第三章 特権理論と公共的理性 1 特権理論とはなんだろうか 2 レトリックとしての特権理論 3 「物象化」された特権理論 4 在日外国人の視点から「日本人特権」を考えてみる 5 アイデンティティ・ポリティクスが引き起こす問題 6 いまこそ「公共的理性」が必要だ 第四章 トーン・ポリシングと「からかいの政治」 1 「トーン・ポリシング」という概念とその問題 2 「怒り」に関する哲学者たちの議論 3 マジョリティは「理性的」であるか? 4 公共的理性を毀損する「からかいの政治」 5 「トーン・ポリシング」というレトリックがもたらす弊害 第五章 マイクロアグレッションと「被害者意識の文化」 1 「マイクロアグレッション」理論とはなにか 2 「名誉の文化」「尊厳の文化」から「被害者意識の文化」へ 3 「感情的推論」に対処するための認知行動療法とストア哲学 4 在日アメリカ人の目から見たマイクロアグレッション ■第三部 男性学と弱者男性の問題 第六章 男性にも「ことば」が必要だ 1 男性の不利益や被害は社会から無視されている? 2 ひとりの男性としての経験と感情 3 なぜ現在の「男性学」は頼りにならないか 4 「弱者男性論」の有害な影響 5 男性のための「ことば」をどう語ればいいか 第七章 弱者男性のための正義論 1 「理念」に基づいた弱者男性論が必要な理由 2 恋人がいないことや結婚できないことの不利益とはなにか? 3 リベラリズムと弱者男性 4 フェミニズムと「幸福度」と弱者男性 5 潜在能力アプローチと弱者男性 6 「あてがえ論」と「上昇婚」 7 弱者男性の問題に社会はどのように対応できるか 終章 これからの「公共性」のために 1 「壁と卵」の倫理とその欠点 2 インターネット/SNS時代の「公共性」という難問 3 「理性的」で「中立的」な政治はあり得るのか? 4 フランクフルト学派の批判理論 5 討議、承認、自尊 6 リベラリズムと理性の未来 Author ベンジャミン・クリッツァー Benjamin Kritzer 1989年京都府生まれ。哲学者、書評家。哲学を中心に、進化論・心理学・社会学などの知見を取り入れながら、社会や政治と人生の問題について考えて執筆。著書に『21世紀の道徳 学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える(犀の教室)』(晶文社、2021年)、論考に「感情と理性:けっきょくどちらが大切なのか?」(『群像』2022年7月号、講談社)など。
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14歳からの哲学
¥1,320
SOLD OUT
人は14歳以降、一度は考えておかなければならないことがある。 [出版社より] 著 者|池田晶子 出版社|トランスビュー 定 価|1,200円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|209 ISBN|9784901510141 発 行|2003年03月 Contents Ⅰ 14歳からの哲学[A] 1 考える[1] 2 考える[2] 3 考える[3] 4 言葉[1] 5 言葉[2] 6 自分とは誰か 7 死をどう考えるか 8 体の見方 9 心はどこにある 10 他人とは何か Ⅱ 14歳からの哲学[B] 11 家族 12 社会 13 規則 14 理想と現実 15 友情と愛情 16 恋愛と性 17 仕事と生活 18 品格と名誉 19 本物と偽物 20 メディアと書物 Ⅲ 17歳からの哲学 21 宇宙と科学 22 歴史と人類 23 善悪[1] 24 善悪[2] 25 自由 26 宗教 27 人生の意味[1] 28 人生の意味[2] 29 存在の謎[1] 30 存在の謎[2] Author 池田 晶子 Akiko Ikeda 1960年生まれ。慶応大学文学部哲学科卒業。専門用語による「哲学」についての論ではなく、哲学するとはどういうことかを日常の言葉を用いて示し、多くの読者を得る。2007年2月23日、没。
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リマーク 1997-2007
¥1,980
SOLD OUT
思索とは謎を呼吸することだ。読むとは絶句の息遣いに耳を澄ますことである。 存在そのものに迫る、謎の思索日記。亡くなる前1カ月分の新稿を付した、終わりと見えるところから始まる思索の原型の言葉。 [出版社より] 著 者|池田晶子 出版社|トランスビュー 定 価|1,800円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|229 ISBN|9784901510530 発 行|2007年0月 Author 池田 晶子 Akiko Ikeda 1960年生まれ。慶応大学文学部哲学科卒業。専門用語による「哲学」についての論ではなく、哲学するとはどういうことかを日常の言葉を用いて示し、多くの読者を得る。著作は数多く、中でも『14歳からの哲学』は反響を呼ぶ。2007年2月23日、没。
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[増補]バフチン——カーニヴァル・対話・笑い
¥1,760
じつは哲学、言語学、記号論等々をまたぐ領域横断的な知のあり方が本領のバフチン。全体像をあますところなく描く最良の入門書。 文学論で著名なバフチンだが、じつは哲学、言語学、記号論等々をまたぐ領域横断的な知のあり方が本領。その巨大な知の全体像をあますところなく描く最良の入門書。 平凡社新書『バフチン――カーニヴァル・対話・笑い』(2011年刊)の増補版。 [出版社より] 著 者|桑野隆 出版社|平凡社[平凡社ライブラリー] 定 価|1,600円+税 判 型|B6変型判/並製 頁 数|340 ISBN|9784582768961 発 行|2020年03月 Contents 第1章 不可欠な他者 第2章 交通のなかの記号 第3章 ポリフォニーと対話原理 第4章 脱中心化 第5章 民衆の笑い 第6章 カーニヴァル化とグロテスク・リアリズム Author 桑野 隆 Takashi Kuwano 1947年、徳島県生まれ。元早稲田大学教授、専攻はロシア文化・思想。
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宇宙開発の思想史——ロシア宇宙主義からイーロン・マスクまで
¥2,970
「外の世界」という夢の歴史。われわれは、なぜ〈宇宙〉を目指してきたのか? 宇宙科学と空想科学を縦横に行き来し、「宇宙進出=新たな世界の創造」をめぐる歴史上の7つのパラダイムを検証する。 《本書に登場する主な人名/組織》 フョードロフ/ ツィオルコフスキーらロシア宇宙主義者、エドワード・エヴァレット・ヘイル、J・D・バナール、アレクサンドル・ボグダーノフ、ヴェルナー・フォン・ブラウン、アーサー・C・クラーク、ストルガツキー兄弟、ジェラード・オニール、アーシュラ・K・ル= グウィン、NASA 、そしてジェフ・ベゾス、イーロン・マスク 宇宙。古来、人間は頭上に広がるこの茫漠たる世界に惹きつけられ、天体の運行を観測して、そこに法則性や意味を見出そうとしてきた。やがてはただ観測するだけでは飽き足らず、人間も宇宙に出られるのではないか、出たらどうなるのかと夢想し、その具体的な方策や、宇宙に進出すべき理由を考えはじめる。本書は、そんな人間の一五〇年に及ぶ宇宙開発の思想史を、七つの切り口からたどった本である。(本書「訳者あとがき」より) [出版社より] 著 者|フレッド・シャーメン 訳 者|ないとうふみこ 出版社|作品社 定 価|2,700円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|288 ISBN|978-4-86793-036-6 発 行|2024年06月 Contents はじめに――宇宙で生きる能力 1 コンスタンティン・ツィオルコフスキーとレンガの月 粒子と惑星/ガラスの月とレンガの月/テクトニクス/すべてのものは感覚をもつ 2 J・D・バナール、赤い星、そして〈異能集団〉 多層構造の球体/海岸の支配者(オーバーロード)/タコの目/宇宙の浜辺で 3 ヴェルナー・フォン・ブラウンの宇宙征服 宇宙の征服/領空飛行とオーバービュー効果/惑星ドーラ/ロケットの軌道 4 アーサー・C・クラークのミステリー・ワールド 時間と空間のオデッセイ/唐突な事象/ヴニェであること/宇宙とその他の海 5 ジェラード・オニールのさがすテクノロジーの強み 2300年未来への旅、サイレント・ランニング、ソイレント・グリーン/人間よりもさらに非人間的に/ル=グウィンの苦言 6 アメリカ航空宇宙局 目に見えるイメージ/「完成予想図」というシグナル/打ち上げはテレビで中継される/FはフェイクのF 7 オールドスペースとニュースペース スペースXとブルーオリジン/フルスタックとガジェット/宇宙を掘りかえす おわりに――別の物語を見つけること ボタンを押す/スペース・イズ・ノー・プレイス/宇宙軍/乱雑ななかで生きる/今、手にしているもの 謝辞/注/訳者あとがき Author フレッド・シャーメン Fred Scharmen モーガン州立大学(米メリーランド州)建築・計画学部准教授。専門は建築と都市デザイン。メリーランド州ボルティモアが拠点のアート・デザインのコンサルタント会社「ザ・ワーキング・グループ・オン・アダプティブ・システムズ」の共同設立者。『the Journal of Architectural Education』、『Atlantic CityLab』、『Slate』などに寄稿するほか、建築批評を『the Architect's Newspaper』や地元のオルタナティブ週刊紙『Baltimore City Paper』に発表している。未邦訳の著書に『Space Settlements』(2019)がある。 Translator ないとう ふみこ Fumiko Naito 上智大学英語学科卒業。翻訳家。訳書に、ジャスパー・フォード『最後の竜殺し』、『クォークビーストの歌』(以上、竹書房文庫)、アラン・グラッツ『貸出禁止の本をすくえ!』(ほるぷ出版)、アンドルー・ラング『夢と幽霊の書』、マティアス・ボーストレム『〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ―― 偶像を作り出した人々の物語』(共訳、以上、作品社)などがある。子どものころからの野球ファンでもあり、フィル・ペペ『コア・フォー――ニューヨーク・ヤンキース黄金時代、伝説の四人』(作品社)の訳書もある。
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世界の適切な保存
¥1,870
ロングセラー『水中の哲学者たち』で話題沸騰。対話する哲学者・永井玲衣、待望の最新刊。 見ることは、わたしを当事者にする。 共に生きるひとにする。 世界をもっと「よく」見ること。その中に入り込んで、てのひらいっぱいに受け取ること。 この世界と向き合うための哲学エッセイ。 ー わたしはどうやら、時間が流れていくにしたがって、何かが消えるとか、失われるとか、忘れられるということがおそろしいらしい。 ここに書かれたもの。その何倍もある、書かれなかったもの。 でも決してなくならないもの――。 生の断片、世界の欠片は、きかれることを待っている。じっとして、掘り出されることを待っている。 [出版社より] 著 者|永井玲衣 出版社|講談社 定 価|1,700円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|288 ISBN|978-4-06-536172-6 初 版|2024年07月 Contents よくわからない話 たまたま配られる 誰かの記憶 夏だから 届く 奥 「はずでした」 来て 間違える 枯れ葉 哲学モメント いい感じ かわいい 想像と違う かくれる 適切な保存 はらう 余計な心配 適切な説明 書けない〔ほか〕 Author 永井 玲衣 Rei Nagai 人びとと考えあう場である哲学対話を幅広く行っている。せんそうについて表現を通し対話する、写真家・八木咲との「せんそうってプロジェクト」、後藤正文らを中心とするムーブメント「D2021」などでも活動。著書に『水中の哲学者たち』(晶文社)。第17回「わたくし、つまりNobody賞」を受賞。詩と植物園と念入りな散歩が好き。
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精神と自然
¥1,243
私たちこの世の生き物すべてを、片やアメーバへ、片や統合失調症患者へ結びつけるパターンとは? 日常の思考の前提を問い直し、二重記述、論理階型、散乱選択といった道具立てによって、発生も進化も学習も病理も包み込むマインドの科学を探究したベイトソン(1904-80)。そのエコロジカルな認識論の到達点を自ら語った入門書。 [出版社より] 著 者|グレゴリー・ベイトソン 訳 者|佐藤良明 出版社|岩波書店[岩波文庫] 定 価|1,130円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|446 ISBN|9784003860182 発 行|2022年01月 Contents Ⅰ ――イントロダクション Ⅱ ――誰もが学校で習うこと Ⅲ ――重なりとしての世界 Ⅳ ――精神過程を見分ける基準 Ⅴ ――重なりとしての関係性 Ⅵ ――大いなるストカスティック・プロセス Ⅶ ――類別からプロセスへ Ⅷ ――それで? 付記――時の関節が外れている 用語解説 訳者あとがき 索引
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利他・ケア・傷の倫理学
¥1,980
利他とは何か、ケアの本質とは何かについての哲学論考。人と出会い直し、つながりを結び直すために「大切にしているもの」をめぐる哲学的考察。 僕たちは、ケア抜きには生きていけなくなった種である——。 多様性の時代となり、大切にしているものが一人ひとりズレる社会で、善意を空転させることもなく、人を傷つけることもなく、生きていくにはどうしたらよいのか? 人と出会い直し、歩み直し、つながりを結び直すための、利他とは何か、ケアの本質とは何かについての哲学的考察。 進化生物学、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」、スラヴォイ・ジジェクの哲学、宇沢弘文の社会的費用論、さらには遠藤周作、深沢七郎、サン=テグジュペリ、村上春樹などの文学作品をもとに考察する、書きおろしケア論。『楢山節考』はセルフケアの物語だった! [出版社より] 「訂正可能性の哲学」がケアの哲学だったことを、本書を読んで知った。ケアとは、あらゆる関係のたえざる訂正のことなのだ」 ──東浩紀 著 者|近内悠太 出版社|晶文社[犀の教室] 定 価|1,800円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|304 ISBN|978-4-7949-7414-3 発 行|2024年03月 Contents まえがき──独りよがりな善意の空回りという問題 第1章 多様性の時代におけるケアの必然性 第2章 利他とケア 第3章 不合理であるからこそ信じる 第4章 心は隠されている? 第5章 大切なものは「箱の中」には入っていない 第6章 言語ゲームと「だったことになる」という形式 第7章 利他とは、相手を変えようとするのではなく、自分が変わること 第8章 有機体と、傷という運命 終章 新しい劇の始まりを待つ、祈る Author 近内 悠太 Yuta Chikauchi 教育者、哲学研究者。統合型学習塾「知窓学舎」講師。著書『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)で第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。 近内悠太WEBサイト https://www.chikauchi.jp
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動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある
¥1,760
動物における諸問題を扱った伝説的な講演を編集したデリダ晩年の到達点。聖書や西洋哲学の動物観を考察、脱構築する。 一糸まとわぬ自分の姿を猫に見つめられた哲学者は、正当化不可能な、そして告白不可能な恥に襲われる――何が恥ずかしいのか、誰の前で裸なのか、と。 本書は、動物についての諸問題を扱った伝説的なコロックにおける講演と、補論として即興で語られたハイデッガー論を収録。自らの体験を「自伝」的語りとして差し出し、聖書や神話を分析しつつ〈動物〉をめぐるこまやかな考察を展開する。デカルト、カント、レヴィナス、ラカン、ハイデッガーの動物観を検証し、動物をロゴスが欠落した存在とみなして排除してきた哲学伝統の脱構築に向かう思考の挑戦。 エッセイ=福山知佐子。 [出版社より] 著 者|ジャック・デリダ 編 者|マリ=ルイーズ・マレ 訳 者|鵜飼哲 出版社|筑摩書房[ちくま学芸文庫] 定 価|1,600円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|448 ISBN|978-4-480-51087-7 初 版|2023年11月 Contents 1 動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある(続く) 2 3 ではもし動物が応答したら? 4 Author ジャック・デリダ Jacques Derrda 1930-2004年。仏領アルジェリア生まれ。エコール・ノルマル・シュペリウール卒業。西洋形而上学のロゴス中心主義に対する脱構築を唱え、文学、芸術、言語学、政治哲学、歴史学など多くの分野に多大な影響を与えた。著書に『声と現象』『グラマトロジーについて』『エクリチュールと差異』『ヴェール』(シクスーとの共著)『獣と主権者Ⅰ・Ⅱ』ほか多数。 Translator 鵜飼 哲 Satoshi Ukai 1955年、東京都生まれ。京都大学大学院文学研究科修了後、パリ第8大学に留学し社会科学高等研究院のジャック・デリダのセミネールに通う。一橋大学名誉教授。著書に『いくつもの砂漠、いくつもの夜』ほか。デリダ、ジュネなどの翻訳も多く手掛ける。
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他者の単一言語使用
¥1,001
SOLD OUT
ヨーロッパ近代の原理たる植民地主義。その暴力の核心にある言語の政治、母語の幻想と自己同一性の神話を瓦解させる脱構築の力。 「私は一つしか言語をもっていない、ところがそれは私のものではない」――植民地支配下のアルジェリアに生を受けた〈フランス-マグレブ-ユダヤ人〉の特異な自伝的回想が告げる言語的追放、本来性なき離散する〈私〉の経験。ヨーロッパ近代原理を脱構築するデリダ、その不可能なアイデンティティ・ポリティックス。 [出版社より] 著 者|ジャック・デリダ 訳 者|守中高明 出版社|岩波書店[岩波文庫] 定 価|910円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|216 ISBN|9784003860229 初 版|2024年08月 Contents Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ エピローグ 註 訳者解説 Author ジャック・デリダ Jacques Derrda 1930-2004 アルジェリア生まれ。フランスの哲学者、思想家。パリ高等師範学校教授を経て、1984年、社会科学高等研究院(フランス、パリ)教授に就任。主な著書に『グラマトロジーについて』『エクリチュールと差異』『弔鐘』などがある。 Translator 守中 高明 Takaaki Morinaka 1960年東京生まれ。早稲田大学法学学術院教授。詩人。著書に『浄土の哲学』『他力の哲学』『ジャック・デリダと精神分析』『脱構築』などが、翻訳にデリダ『コーラ』、ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』(共訳)などがある。
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恋愛の哲学
¥1,760
SOLD OUT
狂うのが、愛。 憎むのが、恋。 哲学は「恋愛」を語ることから始まった。クズへの愛はなぜ成立するのか? なぜ私は愛されたいのか? 永遠の愛はどこまで続くのか? ――すべて哲学が答えます。 現代に流れる「ロマンティック・ラブ」の幻想を解体する驚愕の哲学入門!!! 紹介するのは、プラトン、デカルト、ヘーゲル、キルケゴール、サルトル、ボーヴォワール、レヴィナスの七人。彼らはそれぞれが違った仕方で人間と世界の関係を捉え、その人間観の中で恋愛(哲学)を論じている。恋愛とは何かを考えることは、そもそも人間とは何かを問い直すことを要求する。本書ではそれらを全体として再構成することで<恋愛>を広い視野の元で捉え直していく。 [出版社より] 著 者|戸谷洋志 出版社|晶文社 定 価|1,600円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|236 ISBN|978-4-7949-7411-2 初 版|2024年02月 Contents はじめに 第1章 なぜ誰かを愛するのか?――プラトン 第2章 なぜ恋愛に執着するのか?――デカルト 第3章 なぜ恋人に愛されたいのか?――ヘーゲル 第4章 永遠の愛とは何か?――キルケゴール 第5章 なぜ恋愛は挫折するのか?――サルトル 第6章 女性にとって恋愛とは何か?――ボーヴォワール 第7章 なぜ恋人と分かり合えないのか?――レヴィナス おわりに Author 戸谷 洋志 Hiroshi Toya 1988 年東京都生まれ。関西外国語大学英語国際学部准教授。法政大学文学部哲学科卒業後、大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。ドイツ現代思想研究に起点を置いて、社会におけるテクノロジーをめぐる倫理のあり方を探求する傍ら、「哲学カフェ」の実践などを通じて、社会に開かれた対話の場を提案している。著書に『ハンス・ヨナスの哲学』(角川ソフィア文庫)、『ハンス・ヨナス 未来への責任』(慶應義塾大学出版会)、『原子力の哲学』『未来倫理』(集英社新書)、『スマートな悪 技術と暴力について』(講談社)、『友情を哲学する 七人の哲学者たちの友情観』(光文社新書)、『SNSの哲学リアルとオンラインのあいだ』(創元社)、『親ガチャの哲学』(新潮新書)など。2015年「原子力をめぐる哲学――ドイツ現代思想を中心に」で第31回暁烏敏賞受賞。
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贈与の系譜学
¥1,815
何かを贈ること、プレゼントすることは、日常誰もが行っている。本書は、この「贈与」という行為に注目し、それがどこから生まれ、どのような機能をもってきたのかを探り、いかに人間の本質と結びついているのかを明らかにする。 ……太古の昔から現代に至るまで、人間は贈与という行為に価値を見出してきた。では、なぜ贈与には価値があるのかといえば、自分にとって大事なものを手放して与える行為だからである。ところが、誰にとっても最も大事なものとは何かといえば、自分に固有のもの、自分の唯一のものだが、それは手放してしまえば自分が自分でなくなるものであり、つまりは原理的に贈与できないものだと言わざるをえない。これを逆から見れば、贈与できるものとは「交換可能なもの」であることになる。それゆえ、いかなる贈与も時間が経つうちに「見返り」を暗に要請するものとなり、「交換」になってしまう。 だとすれば、純粋な贈与とは不可能なのか。不可能だとすれば、そもそも贈与という行為の価値そのものが揺らいでしまうのではないか――。 本書は、数々の定評ある著作をものしてきた著者が長年にわたって取り組んできたテーマを正面から取り上げた、「集大成」と呼ぶべき渾身の論考である。今失われつつある「思考すること」の真の姿が、ここにある。 [出版社より] 著 者|湯浅博雄 出版社|講談社[講談社選書メチエ] 定 価|1,650円+税 判 型|四六版/並製 頁 数|240 ISBN|978-4-06-519439-3 刊 行|2020年06月 Contents はしがき プロローグ 第I章 古代思想における〈正しさ〉 第II章 初期キリスト教における〈正しさ〉 1 神との内的関係を重く見ること 2 カントの実践哲学 3 キリスト教に対するニーチェの評価と批判 第III章 原初の社会における贈与的ふるまい 1 〈贈与というかたちを取る〉物の交流・交易 2 贈与的なふるまいの両義性 3 贈与的次元を含む運動、それを打ち消す動き(再-自己所有) 第IV章 贈与をめぐる思索 1 贈与的ふるまい 2 贈与、サクリファイスと模擬性=反復性 3 苦難の時そのものが新たに、未知なるものとして生き変わること 4 不可能なものという試練 エピローグ 註 文献一覧 あとがき Author 湯浅 博雄 Hiroo Yuasa 1947年、香川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。パリ第三大学大学院に留学。東京大学教養学部教授、獨協大学特任教授を経て、現在は東京大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想。 主な著書に、『反復論序説』(未來社)、『バタイユ 消尽』(講談社学術文庫)、『ランボー論』(思潮社)、『聖なるものと〈永遠回帰〉』(ちくま学芸文庫)、『応答する呼びかけ』、『翻訳のポイエーシス』(以上、未來社)ほか。主な訳書に、ジル・ドゥルーズ『ニーチェ』、ジョルジュ・バタイユ『宗教の理論』、『エロティシズムの歴史』(共訳)(以上、ちくま学芸文庫)、ジャック・デリダ『パッション』、『エコノミメーシス』(共訳)(以上、未來社)、『ランボー全集』(共訳)(青土社)ほか。
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所有論
¥3,300
主体と存在、そして所有。著者の重ねる省察は、われわれを西欧近代的思惟が形成してきた「鉄のトライアングル」の拘束から解き放つ。 「ほかならぬこのわたし」がその身体を労して獲得したものなのだから「これはわたしのものだ」。まことにもっともな話に思われる。しかし、そこには眼には見えない飛躍があるのではないか……? ロックほか西欧近代の哲学者らによる《所有》の基礎づけの試みから始め、譲渡の可能性が譲渡不可能なものを生みだすというヘーゲルのアクロバティックな議論までを著者は綿密に検討する。そこで少なくともあきらかにできたのは、「所有権(プロパティ)」が市民一人ひとりの自由を擁護し、防禦する最終的な概念として機能しつつも、しかしその概念を過剰適用すれば逆にそうした個人の自由を損ない、破壊しもするということ。そのかぎりで「所有権」はわたしたちにとって「危うい防具」だという根源的な事実である。 主体と存在、そして所有。著者の重ねる省察は、われわれを西欧近代的思惟が形成してきた「鉄のトライアングル」の拘束から解き放ち、未来における「手放す自由、分ける責任」を展望する。 [出版社より] 著 者|鷲田清一 出版社|講談社 定 価|3,000円+税 判 型|四六版/上製 頁 数|576 ISBN|978-4-06-534272-5 刊 行|2024年02月 Contents だれのもの? 所有と固有 ロックの問題提示 所有と労働 糧と労働 身体という生地 法と慣行 関係の力学 所有権とそのあらかじめの剥奪 所有と譲渡可能性 人格と身体の連帯性の破棄 演戯と所有 所有をめぐる患い 解離 清潔という名の強迫 “棄却”から“本来性”へ 直接性をめぐって 空白のトポス? 形式的なものと自己関係性 制度から相互行為へ “受託という考え方” “共”の縮滅 共にあることと特異であること “場所”と“死”と 所有と固有、ふたたび 危うい防具 Author 鷲田 清一 Kiyokazu Washida 1949年京都生まれ、哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。大阪大学文学部教授などを経て、大阪大学総長(2007~2011年)。2015~2019年、京都市立芸術大学理事長・学長。現在はせんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。医療や介護、教育の現場などに哲学の思考をつなぐ臨床哲学を提唱・探求する。朝日新聞一面に「折々のことば」を連載。『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』(ちくま学芸文庫、桑原武夫学芸賞)、『「ぐずぐず」の理由』(角川選書、読売文学賞)など著書多数。
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フーコー・ドゥルーズ・デリダ
¥1,980
『言葉と物』、『差異と反復』、『グラマトロジーについて』。いまや古典となったフランス現代思想の名著をめぐって展開するこの「三つの物語」は、日本でニュー・アカデミズムが台頭する直前、1978年に衝撃とともに刊行された。フーコー、ドゥルーズ、デリダという哲学者が登場するものの、本書は哲学の概説書でも研究書でもない。それは思考の物語であり、「批評の実践」であり、「作品」を読むことの物語である。瑞々しく、極限までそぎ落とされた文体で、いまだ「読むことのレッスン」を体現し続ける批評家の、比類なき名著。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社[講談社文芸文庫] 定 価|1,800円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|272 ISBN|978-4-06-529925-8 刊 行|2022年11月 Contents 1 肖像画家の黒い欲望―ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む 2 「怪物」の主題による変奏―ジル・ドゥルーズ『差異と反復』を読む 3 叙事詩の夢と欲望―ジャック・デリダ『グラマトロジーについて』を読む Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『物語批判序説』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』他多数がある。
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哲学の起源
¥1,342
デモクラシーの理想とされるアテネの直接民主制は、実は自由ゆえに平等であった古代イオニアのイソノミア(無支配)再建の企てであった。イオニアの自然哲学をイソノミアの記憶を保持するものとして読み解き、アテネ中心のデモクラシー神話を解体する。『世界史の構造』を経て、社会構成体の歴史の起源を刷新する野心的試み。 [出版社より] 著 者|柄谷行人 出版社|岩波書店[岩波現代文庫] 定 価|1,220円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|272 ISBN|9784006004132 初 版|2020年01月 Contents はじめに 序 論 1 普遍宗教 2 倫理的預言者 3 模範的預言者 第一章 イオニアの社会と思想 1 アテネとイオニア 2 イソノミアとデモクラシー 3 アテネのデモクラシー 4 国家と民主主義 5 植民とイソノミア 6 アイスランドと北アメリカ 7 イソノミアと評議会 第二章 イオニア自然哲学の背景 1 自然哲学と倫理 2 ヒポクラテス 3 ヘロドトス 4 ホメロス 5 ヘシオドス 第三章 イオニア自然哲学の特質 1 宗教批判 2 運動する物質 3 制作と生成 第四章 イオニア没落後の思想 1 ピタゴラス a 輪廻の観念 b 二重世界 c 数学と音楽 2 ヘラクレイトス a 反民衆的 b 反ピタゴラス 3 パルメニデス a ヘラクレイトスとパルメニデス b ピタゴラス批判 c 間接証明 4 エレア派以後 a エンペドクレス b 原子論 c ポリスからコスモポリスへ 第五章 アテネ帝国とソクラテス 1 アテネ帝国と民主政 2 ソフィストと弁論の支配 3 ソクラテスの裁判 4 ソクラテスの謎 5 ダイモン 6 ソクラテスの問答法 7 プラトンとピタゴラス 8 哲人王 9 イソノミアと哲人王 注 附録 『世界史の構造』から『哲学の起源』へ 岩波現代文庫版あとがき 古代ギリシア関連地図/古代ギリシア史年表/思想家年表 Author 柄谷行人 Kojin Karatani 1941年兵庫県尼崎市生まれ。評論家。東京大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。著書に『定本日本近代文学の起源』『トランスクリティーク―カントとマルクス』『世界史の構造』(以上、岩波現代文庫)ほか多数。
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呪われた部分——全般経済学試論/蕩尽
¥1,430
「“全般経済学”とは、生産よりも富の“消費”(つまり“蕩尽”)のほうを、重要な対象とする経済学のことである。」経済合理性の範疇に収まらない蕩尽・祝祭・宗教・エロス・芸術は、人間の喜びの本質が有用性の原理に拠って立つ生産・蓄積過程にあるのではなく、消費・蕩尽にあることを示す。 本書は人間が不可避的に内包せざるを得なかった「過剰」を考察の対象にして人間存在の根源に迫り、生を真に充実させるために、蕩尽・神聖・恍惚に代表されるこの「呪われた部分」の再考を鋭く強く促す。意識の「コペルニクス的転回」に賭けたバタイユ作品の新訳。巻末に先駆的重要論文「消費の概念」を収録。 [出版社より] 著 者|ジョルジュ・バタイユ 訳 者|酒井健 出版社|筑摩書房[ちくま学芸文庫] 定 価|1,300円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|384 ISBN|9784480098405 初 版|2018年01月 contents 第1部 理論の導入 第2部 歴史のデータ1 蕩尽の社会 第3部 歴史のデータ2 軍事企画社会と宗教企画社会 第4部 歴史のデータ3 産業社会 第5部 現代のデータ 補遺 消費の概念 Author ジョルジュ・バタイユ Georges Albert Maurice Victor Bataille 1897−1962年。フランスの思想家。大戦前から戦後にかけて、文学・思想・芸術・宗教学・政治等広範な領域で批評活動を行い、現代に至るまで大きな影響を与えつづけている。思想書:『エロティシズム』『無神学大全』『至高性』他。小説:『青空』『眼球譚』『マダム・エドワルダ』他。 Translator 酒井 健 Takeshi Sakai 1954年東京生れ。東京大学文学部仏文科卒業、同大学大学院に進学。パリ大学でバタイユ論により博士号取得。法政大学文学部教授。
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内的体験
¥1,650
恐るべき思想家バタイユが全ての思想を転覆させて思考の極限に挑んだ20世紀最大の問題作を50年ぶりに新訳。第一人者による鋭利な訳文と150頁の注によって絶後の名著が暗黒の21世紀に降臨する。 [出版社より] 著 者|ジョルジュ・バタイユ 訳 者|江澤健一郎 出版社|河出書房新社[河出文庫] 定 価|1,500円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|600 ISBN|978-4-309-46762-7 初 版|2022年09月 contents 1 内的体験 内的体験へ導く序論の粗描 刑苦 刑苦の前歴(あるいは喜劇) 刑苦への追伸(あるいは新たなる神秘神学) 両手一杯の百合を与えたまえ 2 瞑想の方法 異議提起 決定的態勢 裸性 3 追伸 一九五三年 Author ジョルジュ・バタイユ Georges Albert Maurice Victor Bataille 1987-1962。フランスの思想家、作家。世紀を超えて今も各分野に影響を与え続けている。『エロティシズム』『眼球譚』など著作多数。 Translator 江澤 健一郎 Kenichiro Ezawa フランス文学専攻。著書『バタイユ 呪われた思想家』『ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学』、訳書にバタイユ『有罪者』『ドキュマン』、ディディ=ユベルマン『イメージの前で』他。
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有罪者
¥1,540
「夜の思想家」バタイユの代表作である破格の書物が五十年目に新訳で復活。鋭利な文体と最新研究をふまえた膨大な訳注でよみがえるおそるべき断章群が「神なき神秘」を到来させる。 [出版社より] 著 者|ジョルジュ・バタイユ 訳 者|江澤健一郎 出版社|河出書房新社[河出文庫] 定 価|1,400円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|512 ISBN|978-4-309-46457-2 初 版|2017年12月 contents 友愛 現在の不幸 好運 笑いの神性 補遺 ハレルヤ―ディアヌスの教理問答 Author ジョルジュ・バタイユ Georges Albert Maurice Victor Bataille 1987-1962。フランスの思想家、作家。世紀を超えて今も各分野に影響を与え続けている。『エロティシズム』『眼球譚』など著作多数。 Translator 江澤 健一郎 Kenichiro Ezawa フランス文学専攻。著書『バタイユ 呪われた思想家』『ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学』、訳書にバタイユ『有罪者』『ドキュマン』、ディディ=ユベルマン『イメージの前で』他。
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ドキュマン
¥1,320
新しいバタイユが渦巻き炸裂する——。 初期バタイユが主宰した雑誌『ドキュマン』収録の文章を集成、40年ぶりの新訳。 ー バタイユが主宰した異様な雑誌「ドキュマン」掲載のテクストを集成、バタイユの可能性を凝縮した書『ドキュマン』を気鋭が四十年ぶりに新訳。差異と分裂、不定形の思想家としての新たなバタイユが蘇る。 [出版社より] 著 者|ジョルジュ・バタイユ 訳 者|江澤健一郎 出版社|河出書房新社[河出文庫] 定 価|1,200円+税 判 型|文庫判・並製 頁 数|336 ISBN|978-4-309-46403-9 初 版|2014年11月 Contents 『ドキュマン』第一年度(一九二九年度) アカデミックな馬 サン=スヴェールの黙示録 建築 ほか 『ドキュマン』第二年度(一九三〇年度) 低次唯物論とグノーシス 空間 自然の逸脱 ほか 補遺『ドキュマン』未掲載原稿 サドとともに吠えるダリ サル・プレイエルにおけるフロベニウス展覧会 インドのギリシア風芸術作品 ほか Author ジョルジュ・バタイユ Georges Albert Maurice Victor Bataille 1987-1962。フランスの思想家、作家。世紀を超えて今も各分野に影響を与え続けている。『エロティシズム』『眼球譚』など著作多数。 Translator 江澤 健一郎 Kenichiro Ezawa フランス文学専攻。著書『バタイユ 呪われた思想家』『ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学』、訳書にバタイユ『有罪者』『ドキュマン』、ディディ=ユベルマン『イメージの前で』他。