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『こち亀』は現代の「浮世絵」だ!
庶民の金回り、地価変動と田舎ディス、テクノロジー信奉とガジェットの変遷、サブカルチャーの地位と文化系ヒエラルキー、ビジネス・アイデアとハック思考、漫画的表現とポリティカル・コレクトネス…大衆社会を定点観測し続けた連載40年の偉業から昭和~平成日本の歩みを追う。
[ 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』とは? ]
・秋本治による国民的漫画
・「週刊少年ジャンプ」1976年42号から2016年42号まで連載
・コミックス全200巻はギネス世界記録
[出版社より]
著 者|稲田豊史
出版社|イースト・プレス
定 価|1,700円+税
判 型|四六判/並製
頁 数|360
ISBN|9784781619187
初 版|2020年09月
Contents
第0章 「浮世絵」としての『こち亀』
大衆文化の定点観測
ノスタルジーではなく、「今」を描いている
大衆の無意識な残酷さを代弁する
触媒としての『こち亀』
タモリと共通する「無反省」と「無節操」の美学
『こち亀』の真の主役は両津ではない
小中学生向けの「社会の仕組み」の教科書
“受動的に”配達される新聞として
『こち亀』を鑑賞する第四の視座
第1章 庶民目線の生活と経済
バブルの口火/地価狂乱で9億円をせしめる両津
「よそ者が東京を荒らす」ことに怒る両津
「スーパーMMC」の運用を解説する大原部長
「利殖はセコい、投資は危険」の日本人気質
39億円のマンションはなぜ売れるのか
「弾けたバブル茶化しモード」全開
「失われた20年」に寄り添う『こち亀』
ヒルズ族とセレブいじり
リーマン・ショックとアベノミクス
コラム① 両津の給料
第2章 住宅と都市論からみる東京の昭和・平成史
恒常的に高い、東京の土地
「都内でマイホーム」は無理ゲー
マイホーム主義者をコケにする両津
千葉の五香、ローン8万8000円
田舎者をバカにする江戸っ子
架空の地名で東京以外の関東をコケにする
23区同士の序列
東京の再開発にリアルタイムで立ち会う
「地価」の高さを「地下」で解消する
コラム② ブームに踊らされる大衆
第3章 『こち亀』が添い寝した技術立国ニッポン
技術解説書としての『こち亀』
携帯電話の普及を『こち亀』とともに追いかける
技術斜陽のニッポンで自国賛美を叫ぶ両津
「Windows 95」のパソコンブームにかぶりついた『こち亀』
エロサイトで戯れる『こち亀』
両津のデジタル・デバイド宣言と情弱いじめ
「技術を使いこなせる者はかっこよく、使いこなせない者はかっこ悪い」
2007年の特異点とテクノロジー・マッチョ教の崩壊
規格合戦というダイナミズムの消失
Wikipediaと『こち亀』不要論
社会問題のソリューションを提示する
ある一人の技術者の生涯
コラム③ テレビ、コンビニ、外国人――時代と世相の記録
第4章 逸脱者を嗤え
社会問題としての暴走族と不良
“人権”が与えられない暴走族
キャラ化、ファンタジー化、そして無関心へ
軟弱で金持ちの若者
「ホットドッグ・プレス」的な軽薄さを憎む
『なんとなく、クリスタル』な若者たち
若者批評を放棄した『こち亀』
「2:6:2」の逸脱者
コラム④ 『こち亀』が描かなかったもの
第5章 文化教養リテラシー植え付け装置
マニアックであることはかっこいい
「文化資本」としての『こち亀』
「30すぎた男がオモチャに夢中になっている姿」はみっともない
権威付けされた『攻殻機動隊』と『エヴァ』
大学教授・絵崎コロ助が付与した「権威」
『タモリ倶楽部』的な情報漫画
マニア、サブカル、ポップカルチャー、そしてオタク
オタクに対する態度変化① 嫌悪フェイズ
オタクに対する態度変化② バディ化するオタク
オタクに対する態度変化③ モブキャラの「オタク絵」化
オタクに対する態度変化④ 業界の「おもしろさ」を描く
オタクに対する態度変化⑤ アカデミズムへのにじり寄り
オタクに対する態度変化⑥ オタク女子の同志扱い
心根は異端にあらず
コラム⑤ 「社会の仕組み」の教科書
第6章 ビジネスの教科書
家内制手工業と「アイデア一発」系ビジネス
使い捨て時代、モーレツ社員、家庭崩壊問題を反映
国鉄民営化を背景にしたアイデア列車
ブルーオーシャンを積極的に狙う
テクノロジードリブンで商機を見出す
「ビジネスモデル」の発見
「ソリューション」という概念
良質なマーケティング実例集
ネーミングの妙と「物は言いよう」
「せんべいを若者に売る」リブランディング
女性に車を売る方法
シルバー層の積極的取り込み
「熟年層に売れる車」のリアリティ
“自己実現”よりも“人助け”のコンサルティング
「衰退の五段階」を綺麗になぞる両津
子供たちにビジネスリテラシーを植え付けた『こち亀』
コラム⑥ エコとビジネス
第7章 ポリティカル・コレクトネス考
志村けんと『こち亀』
ポリコレ登場による「教科書の墨塗り」
犯罪レベルの悪ふざけと、モノ扱いされる女性
オヤジエロスと“男の子の夢”
きわめて幼稚な恋愛観
ジェンダーの押し付けと旧時代的女性観
「女ってのは……」の能力差別と根深いミソジニー
マンスプレイニング的な態度
情け容赦ないルッキズム
非ブスにしかブスと言わなくなる両津
女子にすり寄った(?)『こち亀』
最後まで「女子」を描けなかった『こち亀』
『こち亀』の男性同性愛者嫌悪と保毛尾田保毛男問題
侮蔑語としての”オカマ“と”ニューハーフ“の麻里愛
ガチムチマッチョの“ホモ”を嗤う
最後まで変化しなかった無自覚の偏見
コラム⑦ タブーと社会的差別
第8章 『こち亀』とはなんだったのか
「下町文化の啓蒙書」というパブリック・イメージ
江戸・下町文化の権威化
ノスタルジーに閉じない自画自賛
「時代が求めるロールモデル」の変遷
時代に不満があるなら自分が変わる、自分が変える
現在を圧倒的に肯定する
あとがき
Author
稲田豊史 Toyoshi Inada
1974年、愛知県生まれ。編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て、2013年よりフリーに。
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