写真はおそろしい。私の狙いや意図など全く無視し、ある現実をまざまざと記録してしまう。
2019年の1年間、私は再開発真っ只中の東京駅周辺で、変容する街の姿を記録に残すために撮影をしていた。しかし2020年がやって来て、その目論見は全くの的外れだったことに気づく。記録に残されていたのは失われた街の姿などではなく、直後にやって来た「新しい日常」という言葉により切断され、古い日常へと追いやられた在りし日の私たちの姿だった。私は痛感した。自分が撮った写真に写っているものが、何ひとつとして見えていなかったことを。そして何を撮影するのかなど、自分では何ひとつとして決められないことを。
本当に写真はおそろしい。写真になった人々は時が経てば経つほど遠ざかり、以前の人々へと変容していく。目前にいる人々を撮ったつもりでいても、そんなものは写っていないのだ。ここに記録され辛うじて焼き付けることができたのは、その不在の徴だけだった。
[著者より]
著 者|波田野州平
定 価|3,000円+税
判 型|257 x 182 mm コデックス装
頁 数|112
初 版|2020年12月
Author
波田野 州平 Shuhei Hatano
映画作家。1980年鳥取生まれ、東京在住。多摩美術大学映像演劇学科卒。主な作品に『TRAIL 』(2012・ユーロスペース)、『影の由来』(2017・東京ドキュメンタリー映画祭2018 短編部門グランプリ、ジョグジャカルタ国際ドキュメンタリー映画祭2019 招待作品)、『私はおぼえている』(2021・山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 招待作品)がある。
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