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3000ページの達成を250ページに凝縮。公正な未来のために、経済学からの小さな贈り物。
「〈あなたの著書はとても興味深いです。でも、その研究について友人や家族と共有できるように、もう少し短くまとめて書いてもらえるとありがたいですが、どうでしょう?〉
このささやかな本はある意味、読者の皆さんにお会いするたびに決まって言われたそんな要望に応えたものだ。私はこの20年間に不平等の歴史について3冊の著作を世に出したが、いずれもおよそ1000ページにも及ぶものになった。『格差と再分配』『21世紀の資本』『資本とイデオロギー』の3冊だ。…こうして積み重ねられた膨大な量の考証を前にすれば、どんなに好奇心旺盛な人でも意気消沈してしまうことだろう。そこで私はこれまでの研究を要約することにした。本書はその成果である。
しかし本書は、こうした研究から得られる主な教訓を総論的に紹介しているだけではない。…自分の数々の研究を通して深めた確信に基づいて平等の歴史についての新たな展望を示している」
——謝辞より
[出版社より]
「格差に対処する野心的な計画を提示している。…政治の未来についての議論の出発点だ」
——マイケル・J・サンデル(ハーバード大学教授|『実力も運のうち』)
「ピケティにとって、歴史の弧は長く、しかも平等に向かっている。…平等を成し遂げるには、つねに無数の制度を[再]創造しなくてはならない。本書はそれを助けるためにやってきた」
——エステル・デュフロ(2019年ノーベル経済学賞受賞者)
「不平等から平等へと焦点を移したピケティが示唆しているのは、必要なのは鋭い批判だけではなく、回復のための治療法だということだ」
——ジェニファー・サライ(『ニューヨーク・タイムズ』)
原 書|UNE BRÈVE HISTOIRE DE L'ÉGALITÉ
著 者|トマ・ピケティ
訳 者|広野和美
出版社|みすず書房
定 価|2,500円+税
判 型|四六判/上製
頁 数|264
ISBN|978-4-622-09732-7
初 版|2024年09月
Contents
はじめに
新しい経済史、社会史
不公平に対する反乱、公正な制度を学ぶ
パワーバランスとその限界
1 平等への歩み――最初の手がかり
人類の進歩――すべての人のための教育と保健医療
世界人口と平均所得――成長の限界
社会・経済指標の選択――政治的な問題
さまざまな社会・環境指標を選択する
不平等対策なくして持続可能な発展はない
2 遅々として進まない権力と資産の分散
18世紀以降の資産集中の推移
資産と権力――権利の束
生産手段、住居、国債、海外資産を所有することの意味
ようやく台頭しはじめた中産階級
所得のさらなる平等への長い歩み
3 奴隷制と植民地主義の遺産
産業革命、植民地主義、環境
大分岐の起源――ヨーロッパの軍事的支配
綿の帝国――世界の繊維産業を支配
保護主義、中心と周辺の関係、世界システム論
ヨーロッパを地方化する、西ヨーロッパの特殊性を再考する
経済史、社会史、国家建設の歴史
4 賠償問題
奴隷制の廃止――奴隷所有者への金銭的賠償
フランス政府は、ハイチが支払った債務を返還すべきか?
イギリスとフランスにおける奴隷制廃止と損失補償、1833年と1848年
アメリカ、長く続いた奴隷制共和国
奴隷解放後の植民地主義と強制労働の問題
フランス、自覚のない植民地主義共和国
賠償問題――超国家レベルで公正について再考する
5 革命、身分、階級
特権と身分による差別の終焉?
強制労働および半強制労働からの脱却への長い道のり
1900年代のスウェーデン――一人百票の投票権
特権の変容――お金で動く民主主義
いつまでも続く納税額に基づく制限選挙――経済界の金権主義
参加型社会主義と権限共有
6 「大再分配」、1914-1980年
社会国家の創出――教育、保健医療、社会保障
租税国家の第二の大きな前進――人類学的改革
所得および相続財産に対する累進税の創設
真の累進性と社会契約――納税に対する同意の問題
累進税――課税前の格差も縮小させるためのツール
植民地資産と公的債務の清算
公的債務の帳消しのおかげで復興したヨーロッパ
7 平等の限界――資産の極端な集中
社会国家と累進税――資本主義の徹底的な変革
所有権と社会主義――分権化の問題
分権化した自主管理による民主社会主義を目指して
資本の自由な移動――新しい財産主義権力
8 差別と闘う真の平等
教育の機会均等――声高に叫ばれているものの、いまだに実現していない
社会的基準に基づくアファーマティブ・アクションのために
居座り続ける家父長制と生産性第一主義
アイデンティティを硬直化させることなく、差別と闘う
社会的パリテと富の再分配を両立させる
どれほどの人種差別があるか見極める――民族・人種カテゴリーの問題
宗教的中立とフランス流政教分離の偽善
9 新植民地主義からの脱却
栄光の30年と南側世界――社会‐国民国家の限界
新植民地主義、貿易の自由化、タックスヘイブン
見せかけの国際援助と気候変動政策
貧困国の権利――世界の中心と周辺という考え方からの脱却
社会‐国民国家から社会‐連邦国家へ
民主的な社会連邦主義を目指して
10 環境に配慮した多民族共生の民主社会主義へ
変わる力――気候温暖化とイデオロギー闘争
中国社会主義、完全なデジタル専制体制の脆さ
資本主義間の戦争から社会主義間の闘いへ
通貨は私たちを救ってくれるだろうか?
普遍的主権主義を目指して
索引
原注
図表一覧
Author
トマ・ピケティ Thomas Piketty
パリ経済学校経済学教授。社会科学高等研究院(EHESS)経済学教授。EHESSおよびロンドン経済学校(LSE)で博士号を取得後、マサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭を執る。2000年からEHESS教授、2007年からパリ経済学校教授。多数の論文を the Quarterly Journal of Economics, the Journal of Political Economy, the American Economic Review, the Review of Economic Studies で発表。著書も多数。経済発展と所得分配の相互作用について、主要な歴史的、理論的研究を成し遂げた。特に、国民所得に占めるトップ層のシェアの長期的動向についての近年の研究を先導している。世界不平等研究所、世界不平等データベースの共同所長、また欧州の民主化に向けたマニフェストの主唱者でもある。邦訳書『21世紀の資本』(みすず書房、2014)『格差と再分配』(早川書房、2016)『トマ・ピケティの新・資本論』(日経BP、2015)『不平等と再分配の経済学』(明石書店、2020)『資本とイデオロギー』(みすず書房、2023)。
Translator
広野 和美 Kazumi Hirono
翻訳家。訳書 アレ & アダム『マンガで読む 資本とイデオロギー』ピケティ原作(みすず書房、2024)ル・ブルトン『歩き旅の愉しみ』(草思社、2022)ペリノ『0番目の患者』(共訳、柏書房、2020)ル・ケンヌ『フランス式 おいしい調理科学の雑学』(パイインターナショナル、2020)ほか。
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