新しい目で世界を見るため、内的な旅へ。
新世代の小説や映画を続々発表、タイ・ポストモダンのカリスマとなったプラープダー・ユン。そんな流行作家も30代半ばを迎え、精神的危機に直面する。バンコクの喧騒を離れ自然と触れる旅に出た作家だが、新しい経験と出会うことができず、旅の失敗を危惧する。
そんな折、フィリピンの作家たちとの交歓で話題に上った「黒魔術の島・シキホール島」。興味をもった彼は即座に渡航を決意する。魔女や祈祷師との対面、そして島で暮らす人々との交流のなかで再発見したのは、かつて親しんでいたスピノザやソローの哲学だった。「新しい目」で世界と出会う、小説でも哲学でもある思考の旅の軌跡。
[出版社より]
「プラープダーは創造する思想家だ。人間・自然・哲学。フィリピンの美しい謎の小島で到達したビジョン。また一緒に作品をつくりたい、と強く思った」
——名和晃平[美術家]
著 者|プラープダー・ユン
訳 者|福冨渉
出版社|ゲンロン
定 価|2,200円+税
判 型|四六変型判
頁 数|256
ISBN|978 4 907188 34 4
初 版|2020年02月
Author
プラープダー・ユン ปราบดา หยุ่น
1973年、バンコクに生まれる。14歳までタイ国内で育ち、教育を受けたあと、アメリカに渡航し、現地で学ぶ。ニューヨーク、クーパー・ユニオンの美術学科で学士号を取得して、短期間だけグラフィック・デザイナーとして働く。26歳のとき、タイの法律にのっとり、帰国して兵役に服する。6ヶ月の軍事教練を終了して、本格的に執筆活動をはじめる。2002年に、短編集『可能性』が東南アジア文学賞の短編部門を受賞する。この受賞によって同作品集はベストセラーとなり、作品がタイ社会で広く読まれ、批評されるようになる。
現在まで短編、長編、エッセイ、論考の執筆を続けており、Studio VoiceやEsquireといった日本の雑誌に寄稿したこともある。また、日本では短編集『鏡の中を数える』(宇戸清治訳、タイフーン・ブックス・ジャパン、2007年)や長編小説『パンダ』(宇戸清治訳、東京外国語大学出版会、2011年)などが出版されている。2016年には、短編集がはじめて英訳され、英国で出版された。さらに、作品が中国語やイタリア語でも翻訳出版されている。
執筆活動に加えて、バンコクで小規模な独立系出版社Typhoon Booksを経営している。デザイナーとしても活動するかたわら、さまざまなアート作品や映画作品も発表している。2017年には、社会的に認知され、優れた中堅のクリエイターにタイ文化省が与えるシンラパートーン賞の文学部門を受賞した。
Translator
福冨渉 Sho Fukutomi
1986年東京生まれ。タイ文学研究者、タイ語翻訳・通訳者。鹿児島大学グローバルセンター特任講師。著書に『タイ現代文学覚書』(風響社、2017年)、訳書にウティット・ヘーマムーン『プラータナー:憑依のポートレート』(河出書房新社、2019年)。その他コラム等多数。
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