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国民社会主義(ナチス)による支配体制下で、人間と食をめぐる関係には何が生じたのか? この強烈なモティーフのもと、竃(かまど)からシステムキッチンへ、近代化の過程で変容する、家事労働、レシピ、エネルギーなどから、「台所」という空間のファシズムをつぶさに検証し、従来のナチス研究に新たな一歩を刻んだ画期的な成果。第1回(2013年度)河合隼雄学芸賞を受賞した、著者の代表作。
[出版社より]
著 者|藤原辰史
出版社|共和国
定 価|2,700円+税
判 型|菊変型判
頁 数|480
ISBN|978-4-907986-32-2
初 版|2016年7月
Contents
序章 台所の環境思想史
1、歴史の基層としての台所
2、テイラー・システムとナチズム
3、台所の変革者たち
4、 台所をどうとらえるか──定義とアングル
第1章 台所空間の「工場」化──建築課題としての台所
1、ドイツ台所小史──「煙と煤」から「ガスと電気」へ
2、ドイツ台所外史──「キッチンの集団化」という傍流
3、第一次世界大戦の衝撃──集団給食の登場
4、フランクフルト・キッチン──「赤いウィーン」から来た女性建築家
5、考えるキッチン──エルナ・マイヤーの挑戦
6、ナチス・キッチン?
7、労働者、約一名の「工場」
第2章 調理道具のテクノロジー化──市場としての台所
1、電化される家族愛──快適、清潔、衛生的
2、台所道具の進歩の背景
3、ニュアル化する台所仕事──人間から道具へ
4、市場化する家事──消費者センター「ハイバウディ」の歴史
5、報酬なきテイラー主義の果てに
第3章 家政学の挑戦
1、家政学とは何か
2、家政学の根本問題──『家政年報』創刊号
3、家政学の可能性と限界──『家政年報』1928―1932
4、家政学のナチ化──『家政年報』1933―1935
5、家政学の戦時体制化──『家政年報』1939―1944
6、家政学が台所に与えた影響
第4章 レシピの思想史
1、ドイツ・レシピ小史
2、読み継がれる料理本──食の嗜好の変化のなかで
3、企業のレシピ──ナチズムへの道
4、栄養素に還元される料理
第5章 台所のナチ化──テイラー主義の果てに
1、台所からみたナチズム
2、「第二の性」の戦場
3、「主婦のヒエラルキー」の形成──母親学校、更生施設、そして占領地へ
4、無駄なくせ闘争
5、残飯で豚を育てる──食糧生産援助事業
6、食の公共化の帰結
終章 来たるべき台所のために
1、労働空間、生態空間、信仰の場
2、台所の改革者たちとナチズム
3、ナチスのキッチンを超えて
註
参考文献
「食べること」の救出に向けて──あとがきにかえて
針のむしろの記──新版のあとがきにかえて
付録1 ベストセラーの料理本
付録2 ダヴィディス著『日常的かつ洗練された料理のための実用的料理本』の版別レシピ構成
付録3 ハーン著『市民の台所のための実用的料理本』の版別レシピ構成
人名索引 477
Author
藤原 辰史 Tatsushi Fujihara
1976年、北海道に生まれ、島根県で育つ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程中途退学。博士(人間・環境学)。京都大学人文科学研究所准教授。専攻は、食の思想史、農業史。
著書に、『食べること考えること』(共和国、2014)、『稲の大東亜共栄圏』(吉川弘文館、2012)、『カブラの冬』(人文書院、2011)、『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房、2005。新装版、2012。第一回日本ドイツ学会奨励賞)、『第一次世界大戦を考える』(編著、共和国、2016)、『第一次世界大戦』(全四巻、共編著、岩波書店、2014)、『大東亜共栄圏の文化建設』(共著、人文書院、2007)、『食の共同体』(共著、ナカニシヤ出版、2008)など、共訳書に、フランク・ユーケッター『ドイツ環境史』(昭和堂、2014)、エルンスト・ブロッホ『ナチズム』(水声社、2008)がある。
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