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コロナ禍が日本社会に与えた影響は計り知れない。特に経済では消費税増税と重なり大不況となっている。日本の支配エリートはコロナでもたない企業は潰れて良いと思っている現実。「高プロ」も愛国教育も、支配エリートの新「帝国主義」への布石だと喝破する松尾匡氏は日本のマルクス経済学者の白眉である。
松尾氏はこの悲惨な現実を読み解くにはマルクスの「疎外論」が重要だと説く。本書では「生きているだけで価値がある」生身の具体的人間を主人公にして、制度や決まり事などの社会的なことが、その主人公からコントロールできなくなって一人歩きする事態を批判する。
ツールであったはずの制度や決まり事などの社会的なことが自己目的化し、生身の個人を手段化して踏みにじる、こうした事態を「疎外」と呼んで批判したのがマルクスの「疎外論」というわけです。
「支配階級」や「搾取」も「疎外論」から読み直すことを従来提唱してきた松尾氏は、生身の個々人のもとに経済のコントロールを取り戻すことが大切であり、社会全体で生身の個々人みんなの事情にマッチするように、社会全体の設備投資もコントロールする必要があると述べる。
まさにブレグジットの「コントロールを取り戻せ」です。
本書は、この考えのもと、レフト1・0、レフト2・0の思想を乗り越えレフト3・0の経済学の真髄を示す全く新しい社会変革の書である。
[出版社より]
著 者|松尾匡
出版社|講談社[講談社現代新書]
定 価|1,000円+税
判 型|新書判
頁 数|288
ISBN|978-4-06-514239-4
発 行|2020年11月
Contents
第1章 「人は生きているだけで価値がある」のポピュリズムを!
第2章 日本支配層の将来ビジョン―コロナショックドクトリンが示す円高帝国への道
第3章 レフト3・0の到達点と課題―欧米での失速の教訓
第4章 体制変革としての反緊縮
第5章 庶民がコントロールを取り戻すために
Author
松尾 匡 Tadasu Matsuo
一九六四年石川県に生まれる。一九八七年金沢大学経済学部卒業。一九九二年、神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了。経済学博士。
久留米大学経済学部教授を経て、二〇〇八年立命館大学経済学部教授。
現代社会が抱える現実的な問題に強くコミットしつつ、高度な理論性を備えた実力は学界のみならず、近年メディアでも注目されている。
著書に『近代の復権』(晃洋書房)、『「はだかの王様」の経済学』(東洋経済新報社)、『不況は人災です! みんなで元気になる経済学・入門』(筑摩書房)、『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』(PHP新書)、『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)、『「反緊縮!」宣言』(共著・編、亜紀書房)、『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(共著、亜紀書房)、『新しい左翼入門』(講談社現代新書)等がある。
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