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インターセクショナリティ
¥4,180
交差性とは何か——? ジェンダー、人種、階級などいくつもの要因が絡み合う複雑な権力関係を捉える、現代社会の最重要概念、その初めての解説書。 「インターセクショナリティとは、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、ネイション、アビリティ/ディサビリティ、エスニシティ、年齢などさまざまな要素の交差する権力関係と社会的立場の複雑性を捉える概念である。またこの概念に内在する精神(エートス)とは、社会的不平等や交差する権力関係を社会的文脈にそって分析し、抑圧が絡み合う社会構造の複雑性を紐解き、社会正義へと向かう批判的実践と批判的探求の関係性における相乗効果によって引き出され培われてきた政治(ポリティクス)である。」(監訳者解説より) [出版社より] 著 者|パトリシア・ヒル・コリンズ、スルマ・ビルゲ 訳 者|小原理乃 監 訳|下地ローレンス吉孝 出版社|人文書院 定 価|3,800円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|382 ISBN|9784409241448 初 版|2021年11月 Contents はじめに 第1章 インターセクショナリティとは何か? インターセクショナリティを分析ツールとして使用する インターセクショナリティという枠組みの核となるアイディア 第2章 批判的な探求と実践としてのインターセクショナリティ 批判的探究としてのインターセクショナリティ 批判的実践としてのインターセクショナリティ 探求と実践の相乗効果 批判的であるとはどういうことか 第3章 インターセクショナリティの歴史を整理する? インターセクショナリティと社会運動アクティビズム インターセクショナリティの学術界への制度的統合 その名前が意味するものとは? 第4章 インターセクショナリティのグローバルな展開 インターセクショナリティと人権 さらに詳しく――交差的な枠組みと人権政策 インターセクショナリティとリプロダクティブ・ジャスティス デジタル・ディベート─ インターセクショナリティとデジタル・メディア 第5章 インターセクショナリティ、社会的抗議、そして新自由主義 インターセクショナリティとグローバルな社会的抗議 国民国家における弾圧的転回 安全保障化――誰もが直面する課題か? インターセクショナリティ、社会的抗議、そして極右ポピュリズム 第6章 インターセクショナリティとアイデンティティ 241 ヒップホップ、インターセクショナリティ、そしてアイデンティティ・ポリティクス 学術界におけるインターセクショナリティとアイデンティティの議論 では、インターセクショナリティのために、どういったアイデンティティを? 第7章 インターセクショナリティとクリティカル・エデュケーション クリティカルな重なり合い─ インターセクショナリティと教育 多文化教育、ダイバーシティ、そして都市部の公立学校 インターセクショナリティ、ダイバーシティ、そして高等教育 インターセクショナリティ、クリティカル・エデュケーション、そして社会正義 第8章 インターセクショナリティの再検討 社会的不平等 交差する権力関係 社会的文脈 関係性 複雑性 社会正義 締め括り 訳者解説 参考文献 索引 Author パトリシア・ヒル・コリンズ Patricia Hill Collins メリーランド大学カレッジパーク校名誉教授。専門は人種、階級、ジェンダー研究。主な著作にBlack Feminist Thought: Knowledge,Consciousness, and the Politics of Empowerment (Routledge, 1990),Intersectionality as Critical Social Theory(Duke University Press,2019)など。 スルマ・ビルゲ Sirma Bilge モントリオール大学教授。専門はジェンダー、セクシュアリティ、レイシズム、ナショナリズムとエスニック関係、ポストコロニアルと脱コロニアルアプローチ、そしてインターセクショナリティなど。主な論文に”Intersectionality Undone: Saving Intersectionality from Feminist Intersectionality Studies”, Du Bois Review (10:2, pp. 405-424), Dec 2013。 Translator 小原 理乃 Ayano Obara 1997年生まれ。成城大学文芸学部卒業。翻訳者。TED×Tokyoや国際会議で通訳・翻訳業務にあたりながら、写真展「となりの宋さん」などの企画運営に携わる。ルーヴェン大学へ留学時、メディア・スタディーズや、国際法、社会学について学びながら、ブリュッセルを拠点に難民や生活困窮者の支援ボランティア活動に携わった。 下地 ローレンス 吉孝[監訳] 1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。港区立男女平等参画センター職員を経て、現在、立命館大学衣笠総合研究機構研究員、ハワイ大学マノア校客員研究員。著書『「混血」と「日本人」――ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』(青土社、2018年)、『「ハーフ」ってなんだろう?――あなたと考えたいイメージと現実』(平凡社、2021年)。「ハーフ」や海外ルーツの人々の情報共有サイト「HAFU TALK」を共同運営。he/they。
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格差の自動化
¥3,080
AIは本当に平等なのだろうか? ——デジタル化・自動化行政の前に議論しておきたいこと。 貧者は不平等を拡大させる新しいテクノロジーの実験の場である。社会福祉サービスがデジタル化されたときどんな悲劇が起こるのか? 貧困層の個人情報はどのように扱われてしまうのか? アメリカの実例から「デジタル救貧院」の衝撃を伝える。 デジタル化・自動化行政への流れは今後益々加速する。しかし、私たちは、誰がどんな意図をもって政策をたて運用していくのかを注視しなければならない。法執行機関から医療機関、社会サービスに至るまで、サービスの縮小だけでなくアメリカの機関は貧しい人への罰則を強化し、人種問題も浮上してきている。不平等格差を強力に自動化することでハイテクな監視システムがいかに不正を助長していくのか。 本書は、小さな政府が効率化のためにハイテクツールを使ってどのように貧しい人々を益々困難な状況に追いやっているかを明らかにし、効果的な反撃、解決の糸口をさぐる。自動化技術が市民社会にあたえるリスクを明らかにした話題の書。解説=堤未果。 [出版社より] 著 者|ヴァージニア・ユーバンクス 訳 者|ウォルシュあゆみ 出版社|人文書院 定 価|2,800円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|326 ISBN|9784409241387 初 版|2021年09月 Contents 序 章---危険信号 第1章 救貧院からデータベースへ 第2章 アメリカの「心の故郷」で行われた福祉給付審査の自動化 第3章 天使の街のハイテクホームレス事情 第4章 アレゲニー郡のアルゴリズム 第5章 デジタル上の救貧院 終 章---デジタル上の救貧院を打ち壊すには 注 文献 解説 堤未果 訳者あとがき Author ヴァージニア・ユーバンクス Virginia Eubanks ニューヨーク州立大学オールバニー校政治学科准教授。主な著作に本書ほか、「Digital Dead End: Fighting for Social Justice in the Information Age」、その他アレシア・ジョーンズとの共同編集で「Ain′t Gonna Let Nobody Turn Me Around: Forty Years of Movement Building with Barbara Smith」などがある。彼女のテクノロジーと社会正義に関する記事は「サイエンティフィック・アメリカン」、「ネイション」、「ハーパーズ」、「ワイアード」などにも掲載されている。過去二〇年間、ユーバンクスはコミュニティー・テクノロジーと経済的正義に関連する運動に従事してきた。アワ・データ・ボティーズ・プロジェクトの創設者の一人であり、二〇一六年から二〇一七年度の新米国研究機構の特別研究員。ニューヨーク州トロイ在住。 Translator ウォルシュ あゆみ 神戸女学院大学文学部英文学科卒 2002年〜2005年、2008年〜2017年アメリカ在住 産業・映像・出版翻訳業。
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流れの中で インターネット時代のアート
¥2,860
かつて芸術と美術館は作品を永遠化することを志向した。しかし現代では、デジタル化とインターネットにより、作品の制作、流通、鑑賞にいたるまで、すべての形態は流動化し、絶え間ない流れ(フロー)に晒されている。この状況において、アートはいかなる姿に変貌を遂げたのか。世界で最も注目を集める美術批評家グロイスによる、待望の現代アート論。 「本書では、インターネットの興隆と現代美術作品の変化の相互関係と、デジタル化がわれわれの鑑賞態度に与えた影響に焦点が当てられている。グロイスは「流れ」――本書ではこの言葉は抽象的・比喩的に用いられているが、具体的には時間および時代の経過、情報の循環、市場における経済のフロー等を指している――の全貌を把握することは不可能だが、「流れ」にわれわれがアクセスする過程を記述することは可能であると主張する。グロイスの論考は、ポスト冷戦期から情報技術の興隆という時代の流れにわれわれが必然的に巻き込まれてゆくさまを、芸術を通して見定めているように思われる」(訳者解題より) [出版社より] 著 者|ボリス・グロイス 訳 者|河村彩 出版社|人文書院 定 価|2,600円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|242 ISBN|9784409100455 初 版|2021年10月 Contents イントロダクション――芸術の流体力学 第1章 流れ(フロー)に入る 第2章 理論の眼差しのもとで 第3章 アート・アクティヴィズムについて 第4章 革命的になること――カジミール・マレーヴィチについて 第5章 共産主義を設置(インストール)する 第6章 クレメント・グリーンバーグ――芸術のエンジニア 第7章 リアリズムについて 第8章 グローバル・コンセプチュアリズム再訪 第9章 近代(モダニテイ)と同時代性――機械複製とデジタル複製 第10章 グーグル――文法を超えた単語 第11章 ウィキリークス─ 知識人の抵抗、もしくは陰謀としての普遍性 第12章 インターネット上のアート 訳者解題 人名索引 Author ボリス・グロイス Boris Groys 1947年、東ドイツ生まれ。美術批評家。現在、ニューヨーク大学特別教授。レニングラード大学に学んだ後、批評活動を開始。1981年に西ドイツへ亡命。ロシア、ヨーロッパ、米国をまたぐ旺盛な活動で知られる。著書に、『全体芸術様式スターリン』(亀山郁夫、古賀義顕訳、現代思潮新社、2000年)、『アート・パワー』(石田圭子ほか訳、現代企画室、2017年)など。 Translator 河村 彩 Aya Kawamura 1979年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(博士)。現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院助教。専攻は、ロシア・ソヴィエト文化、近現代美術、表象文化論。著書に、『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』(水声社、2014年)、『ロシア構成主義 生活と造形の組織学』(共和国、2019年)、『革命の印刷術 ロシア構成主義、生産主義のグラフィック論』(編訳、水声社、2021年)など。
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親密なよそ者 スチュアート・ホール回想録
¥5,280
わたしは自分が最後の植民地育ちなのではないかと感じることがある——。 カルチュラル・スタディーズの立役者、初の回想録。 文化を権力との闘争の現場として研究するカルチュラル・スタディーズの土台をつくりあげた思想家、スチュアート・ホール。1930年代ジャマイカの中産階級の家庭で生まれたのち、宗主国イギリスへ。植民地・人種・階級をめぐって揺れる帝国主義末期のイギリスを分析しながら、脳裏には常にジャマイカの記憶があった。人種的、文化的、そして政治的自由を思索したホールの青年期がはじめて明かされる半生記。 [出版社より] 著 者|スチュアート・ホール、ビル・シュワルツ 訳 者|吉田裕 出版社|人文書院 定 価|4,800円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|484 ISBN|9784409041178 初 版|2021年10月 Contents 日本語版序文 ビル・シュワルツ はじめに ビル・シュワルツ 第Ⅰ部 ジャマイカ 第1章 植民地の情景、植民地の臣民 第2章 ふたつのジャマイカ 第3章 カリブ海地域の思想――クレオール化する思考/思考をクレオール化する 第4章 人種とその否認について 第Ⅱ部 ジャマイカを離れて 第5章 近代に徴用されて 第Ⅲ部 幻想への旅 第6章 オクスフォードとの出会い――ディアスポラ的自我の形成 第7章 カリブ海地域からの移民――ウィンドラッシュ世代 第Ⅳ部 移行地帯 第8章 故郷としてのイングランド 第9章 政治 訳注 解説 訳者あとがき 人名索引 Author スチュアート・ホール Stuart Hall 1932年、ジャマイカ生まれ。2014年没。イギリスの文化理論家。バーミンガム大学の現代文化研究センターを率い、カルチュラル・スタディーズを確立した。著書に、Policing the Crsisis' Mugging, the State and Law & Order(Chas Critcherらとの共著、Palgrave, 1978)、The Hard Road to Renewal: Thatcherism and the Crisis of the Left(Verso, 1988)、Essential Essays, Vol. 1 & Vol. 2(Duke University Press, 2019)など。 ビル・シュワルツ Bill Schwarz 1951年、イギリス生まれ。ロンドン大学クイーンメアリー校教授。専門は歴史学、ポストコロニアル・セオリー、カルチュラル・スタディーズ。著書に、Memories of Empire: The White Man's World(Oxford University Press, 2013)など。 Translator 吉田 裕 Yutaka Yoshida 1980年、岐阜県生まれ。東京理科大学准教授。専門はカリブ文学及び思想、文化研究。著書に『持たざる者たちの文学史 帝国と群衆の近代』(月曜社)。訳書にノーム・チョムスキー『複雑化する世界、単純化する欲望 核戦争と破滅に向かう環境世界』(花伝社)、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社)、ポール・ビュール『革命の芸術家 C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房)、ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』(月曜社)など。
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力なき者たちの力
¥2,200
SOLD OUT
無力な私たちは権力に対してどう声をあげるべきか? チェコの劇作家、大統領ヴァーツラフ・ハヴェルによる全体主義をするどく突いた不朽の名著。真実の生をいきるために私たちがなすべきことは何か。 ー すべてはロックミュージシャンの逮捕から始まった――。かれらの問題は自分たちの問題だと共鳴した劇作家は、全体主義の権力のあり様を分析し、「真実の生」、「もう一つの文化」の意義を説く。このエッセイは、冷戦体制下の東欧で地下出版の形で広く読まれただけでなく、今なおその影響力はとどまることを知らない。形骸化した官僚制度、技術文明の危機を訴える本書は、私たち一人ひとりに「今、ここ」で何をすべきか、と問いかける。無関心に消費社会を生きる現代の私たちにも警鐘をならす一冊。解説、資料「憲章77」を付す。本邦初訳。 [出版社より] 著 者|ヴァーツラフ・ハヴェル 訳 者|阿部賢一 出版社|人文書院 定 価|2,000円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|154 ISBN|9784409031049 初 版|2019年08月 Contents 力なき者たちの力(一~二二) 資料 憲章77 訳注 解説 訳者あとがき Author ヴァーツラフ・ハヴェル Václav Havel チェコの劇作家、大統領。1936年10月5日、プラハ生まれ。プラハの欄干劇場の裏方として働いたのち、戯曲『ガーデン・パーティ』(1963)で劇作家としてデビュー。不条理演劇の旗手として注目されるも、1970年代以降、公的な活動が制限される。1977年、スポークスマンの一人として「憲章七七」に参加。翌78年、「力なき者たちの力」執筆。ビロード革命を経て、1989年12月、チェコスロヴァキア大統領に就任。その後、チェコ共和国大統領を二期務め、2011年12月18日没。 Translator 阿部 賢一 Kenichi Abe 1972年、東京生まれ。 東京外国語大学大学院博士後期課程修了、博士(文学)。パリ第Ⅳ大学(DEA取得)、カレル大学で学ぶ。 現在、東京大学人文社会系研究科准教授。専門は、中東欧文化論、比較文学。 著書に『イジー・コラーシュの詩学』(成文社、2006)、『複数形のプラハ』(人文書院、2012)、『カレル・タイゲ ポエジーの探究者』(水声社、2017)、など。訳書に、フラバル『わたしは英国王に給仕した』(河出書房新社、2010/2019)、オウジェドニーク『エウロペアナ』(共訳、白水社、2014、第一回日本翻訳大賞)、フラバル『剃髪式』(松藾社、2014)、セイヤー『プラハ、20世紀の首都』(共訳、白水社、2018)、ベロヴァー『湖』(河出書房新社、2019)など。
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リベラル国家と宗教 世俗主義と翻訳について
¥3,520
宗教と世俗を問い直す、碩学の到達点。 近代リベラル国家の原理とされる宗教と政治の分離。しかし、それは本当に可能なのか。著者は、宗教と世俗の根源的で複雑な絡み合いに目を凝らし、「翻訳」概念を導きの糸としてその関係を解きほぐしていく。平等概念の再考、宗教的言説の翻訳可能性と不可能性の意味、国民国家の問い直しなどをめぐって、宗教学のみならず政治学、哲学、人類学など多様な知を横断し、深き射程が示される、碩学の到達点。 [出版社より] 「本書で私が考えてきたのは、主に「世俗性」と「宗教」という言葉の硬直的な用法を問題にすることである。もちろんそれは、そうした言説が規律する生活を非難したり(あるいは擁護したり)、どちらかに招き入れようとしているわけではない。「近代」に賛成すべきか反対すべきかという問題に関して現在行われている議論は、あまり実りのないもののように私には思える。本書の指摘に一般化できる点があるとすれば、それは「近代」、「宗教」、「政治」、「世俗主義」といった言葉や、それらを組み合わせた語彙の変動は、生活様式に密接に関連しているということである」 ——本書より 著 者|タラル・アサド 訳 者|茢田真司 出版社|人文書院 定 価|3,200円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|270 ISBN|9784409420249 初 版|2021年04月 Contents 序論 第一章 世俗的平等と宗教的言語 第二章 翻訳と感覚ある身体 第三章 仮面・安全・数の言語 エピローグ 訳者あとがき 人名索引 Author タラル・アサド Talal Asad 1933年サウジアラビア・メディナ生まれ。ニューヨーク市立大学教授(人類学)。オックスフォード大学でPh.D.取得(人類学)。訳書に、『宗教の系譜 キリスト教とイスラムにおける権力の根拠と訓練』(中村圭志訳、岩波書店、1993年)、『世俗の形成 キリスト教、イスラム、近代』(中村圭志訳、みすず書房、2006年)、『宗教を語りなおす 近代的カテゴリーの再考』(磯前順一との共編、みすず書房、2006年)、『自爆テロ』(茢田真司訳、青土社、2008年)がある。 Translator 茢田 真司 Shinji Karita 1966年島根県生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中退。東京大学社会科学研究所助手などを経て、現在。國學院大学法学部教授。主な論文に、「「宗教」・「世俗」・「多元主義」 タラル・アサドと政治理論」(『國學院法学』第55巻第4号、2018年)、「多文化主義・社会関係資本・コスモポリタニズム 新しい「共存」イメージを求めて」(『共存学4 多文化世界の可能性』弘文堂、2017年)など。訳書に、アサド『自爆テロ』(青土社、2008年)、アイリス・マリオン・ヤング『正義と差異の政治』(共訳、法政大学出版局、2020年)など。
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情念の経済学 タルド経済心理学入門
¥2,640
SOLD OUT
全く新しい経済学の思想。 アクターネットワークセオリーの原点 。 19世紀フランスの社会学者ガブリエル・タルドが記した大著『経済心理学』(1902年)は、近代経済学の可能性を徹底的に押し広げようとし、ついには全く異なる独自の体系を持つ経済学の発明に至った傑出した著作である。 ラトゥールによれば、その重要性はマルクスに匹敵し、部分的な思想はケインズやシュンペーターの先駆けでもある。さらに、近年の金融社会論や市場の人類学において語られるように、金融においてこそ、数値化と心理学化が結びついていることを主張する、まさに現代に読まれるべき書物でもある。いまだ知られざるその革新的な思想の魅力を、「タルドの弟子」を自称するラトゥールが伝える一冊。 [出版社より] 「われわれは、こんな古い反動家に興味を向けようというのか? こんな経済学の考古学的断片に、もう一度光を当てようというのか? まさしくそのつもりである。…タルドの経済学においてはすべてが奇妙にみえるだろうが、それはすべてが新しいからかもしれないのだ」 ——本書より 著 者|ブリュノ・ラトゥール、ヴァンサン・アントナン・レピネ 訳 者|中倉智徳 出版社|人文書院 定 価|2,400円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|166 ISBN|9784409241363 初 版|2021年01月 Contents はじめに 第一章 経済は主観的であるからこそ数量化できる 価値へと戻る 避けるべき二つの誤り 表と裏を混同することをやめる どのようにして量を明確にするのか 数量化する――そう、だがしっかり考えたうえで 温度についての誤り 遠ざかる代わりに近づこう 第二章 経済学の本質 蓄積の前に発明がある 社会ダーウィニズム、しかし反転させて 生産要素を再分配する 資本の諸傾向 共可能性の経済 「資本主義体制」は一度も存在しなかった 第三章 摂理なき経済 政治経済学における政治の回帰 「アダム・スミス問題」と神の問題 来るべき社会主義のありがちな過ち 結論 大きな獣を追い払っても、そいつは駆け足で戻ってくる 訳者解説 人名索引 Author ブリュノ・ラトゥール Bruno Latour 1947年、フランス・ボーヌ生まれ。現在はパリ政治学院名誉教授、ドイツ・カールスルーエ造形大学教授。哲学、人類学、社会学。主な日本語訳に、『科学が作られているとき』(川崎勝・高田紀代志訳、産業図書、1999年)、『科学論の実在』(川崎勝・平川秀幸訳、産業図書、2007年)、『虚構の「近代」』(川村久美子訳、新評論、2008年)、『法が作られているとき』(堀口真司訳、水声社、2017年)、『近代の〈物神事実〉崇拝について』(荒金直人訳、以文社、2017年)、『社会的なものを組み直す』(伊藤嘉高訳、法政大学出版局、2019年)、『地球に降り立つ』(川村久美子訳、新評論、2019年)など。 ヴァンサン・アントナン・レピネ Vincent Antonin Lépinay パリ国立高等工業学校で人類学博士、コロンビア大学で社会学博士を取得。マサチューセッツ工科大学准教授、サンクトペテルブルクの欧州大学教授を経て、現在はパリ政治学院准教授。人類学、社会学。経済・金融・銀行・法システムに関する歴史および社会学に関心をもっている。近年では、ロシアと専門性のポストソヴィエト的な形態についても研究を行なっている。主な著書に、Code of Finance (Prinston Universituy Press, 2011)、Art of Memories (Columbia University Press, 2019)、 From Russia with Code (Mario Biagioliと共著、Duke University Press, 2019) など。 Translator 中倉 智徳 Tomonori Nakakura 1980年、広島県生。立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了(博士・学術)。現在、千葉商科大学人間社会学部専任講師。専門は社会学、社会思想史。著書に、『ガブリエル・タルド 贈与とアソシアシオンの体制へ』(洛北出版、2011年)。翻訳に、マウリツィオ・ラッツァラート『出来事のポリティクス』(共訳、洛北出版、2008年)など。
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明日の前に 後成説と合理性
¥4,180
超越論的なものは、新たな生を開始する——。 カント以降の哲学を相関主義として剔抉し、哲学の〈明日〉へ向かったメイヤスーに対し、現代生物学の知見を参照しつつカント哲学の読み直しを試みた注目作。理性のあらゆる経験に先立つとされるアプリオリなものは、もはや役立たずの概念なのか。遺伝子と環境のかかわりを探求するエピジェネティクスを手掛かりに、カントに、そして哲学そのものに新たな力を賦活する。 [出版社より] 「形而上学の脱構築よりも、そして認知論よりも根源的であろうとする思弁的実在論を、どう位置づけるべきなのか。一連の大転換のなかでカント哲学は、そして哲学それ自体は、どうなるのか。哲学の近年の情景を俯瞰しながら、こうした問いへの答えをつくりあげることは、私には重要だと思われた。この情景を彩ることになる主たるカント読解は、時間、思考と脳の関係、世界の偶然性という三つの問いにかかわっている」 ——本書より 著 者|カトリーヌ・マラブー 訳 者|平野徹 出版社|人文書院 定 価|3,800円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|370 ISBN|9784409030981 初 版|2018年06月 Contents はじめに 序論 第一章 『純粋理性批判』のパラグラフ27 第二章 懐疑的態度におちいるカント読解 第三章 発生と後成的作用の差異 第四章 カントの「最小の前成説」 第五章 胚、種、種子 第六章 「新懐疑論」的テーゼとその進化 第七章 後成説からエピジェネティクスへ 第八章 暗号(コード)から書物へ 第九章 還元しがたきフーコー 第十章 時間、まったき問い 第十一章 〈一致〉はない 第十二章 袋小路のなかで 第十三章 合理性の後成的パラダイムに向けて 第十四章 超越論的なものを放棄することはできるのか 結論 訳者あとがき 参考文献 人名索引 Author カトリーヌ・マラブー Catherine Malabou 1959年生まれ。英キングストン大学近代ヨーロッパ哲学研究センター教授。訳書に、『デリダと肯定の思考』(編著、高橋哲哉、高桑和巳、増田一夫訳、未来社、2001年)、『ヘーゲルの未来 可塑性・時間性・弁証法』(西山雄二訳、未来社、2005年)、『わたしたちの脳をどうするか ニューロサイエンスとグローバル資本主義』(桑田光平、増田文一朗訳、春秋社、2005年)、『新たなる傷つきし者 現代の心的外傷を考える』(平野徹訳、河出書房新社、2016年)がある。 平野徹 Toru Hirano 1967年生まれ。ストラスブール大学哲学部修士課程中退。仏語翻訳者。訳書に、シャルル・ドゥローネ『ジャンゴ・ラインハルト伝 ジャンゴ わが兄弟』(河出書房新社、2009年)、マラブー『新たなる傷つきし者』(河出書房新社、2016年)がある
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暴力とエロスの現代史
¥3,740
「俗悪趣味と死の融合」に訣別せよ——。 米国リベラルの巨頭にして日本の政治・文化にも精通するイアン・ブルマ。ナチスによって父親を失いかけた過去をもつ著者が、ホロコースト・太平洋戦争を主題にした芸術から、福島原発事故後の報道、トランプの芸風までを射程に、歴史的真実に向き合う術を提示する。日本版オリジナル編集。 [出版社より] 著 者|イアン・ブルマ 訳 者|堀田江理 出版社|人文書院 定 価|3,400円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|360 ISBN|9784409510780 初 版|2018年07月 Contents 序 文 Ⅰ 戦争、その歴史と記憶 被害者意識、その喜びと危険性 真珠湾に歓喜して 帝国のための自決 占領下のパリ―無情で甘い生活 ドイツの破壊 Ⅱ 芸術と映画 イーストウッドの戦争 魅惑のナルシシズム―レニ・リーフェンシュタール 愚か者、臆病者、それとも犯罪者? 日本―美しく、野蛮で、無言の国 インドネシアの凶暴な謎 東京の執着 Ⅲ 政治と旅 ル・カレのもう一つの冷戦 イスラエルとパレスチナ―夢を奪われて 日本の悲劇 ヨーロッパの首都で アジア・ワールド 英米秩序の終焉 訳者解説 堀田江理 Author イアン・ブルマ Ian Buruma 一九五一年、オランダ・ハーグ生まれ。ライデン大学で中国史、中国語を修めた後、文部省留学生として日本大学芸術学部に留学し日本の演劇、映画を研究。時事分析、文芸評論、政治など多岐にわたる分野で国際的に定評のある著述家で、現在は『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』の編集長も務める。二作の小説を含む一七の著作には『戦争の記憶 日本人とドイツ人』(TBSブリタニカ、一九九四年)、『近代日本の誕生』(ランダムハウス講談社、二〇〇六年)、『廃墟の零年 1945』(白水社、二〇一五年)など二〇世紀日本に関連する著書も多い。二〇〇八年、ヨーロッパ文化、社会、学術への貢献を評されエラスムス賞を受賞。二〇一八年、アメリカ文学芸術アカデミー外国人名誉会員ならびにアメリカ芸術科学アカデミー会員に選出される。 ©Merlijn Doomernik Translator 堀田 江理 Eri Hotta 一九七一年、東京生まれ。プリンストン大学歴史学部卒業。オックスフォード大学より国際関係修士号、同博士号を取得。オックスフォード、国立政策研究大学院大学、イスラエル国立ヘブライ大学などで研究、執筆活動を継続しJapan 1941: Countdown to Infamyならびに邦訳『1941 決意なき開戦―現代日本の起源』(人文書院、二〇一六年)を上梓。このほか著書に、アジア主義思想と近代日本の対外政策決定過程に迫るPan-Asianism and Japan's War 1941-1945がある。日英米メディアにコラムや書評などの寄稿を多数、行っている。
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もっと速く、もっときれいに——脱植民地化とフランス文化の再編成
¥3,850
家と車が戦後のすべてを変えた——。 『サンフランシスコ・レヴュー・オブ・ブックス』批評家選賞&ローレンス・ワイリー賞、ダブル受賞。 第二次世界大戦後、フランスは急速な資本主義化とアメリカ化による日常生活の根本的な変化を経験する。その変化の速度は無意識のうちに人びとの感覚を変え、思考をも変えた。それは後に世界を席巻するフランス現代思想の誕生にも繋がる。本書は、ゴダールやボーヴォワールなど豊富な映画、文学作品から急速に変化する社会を分析し、起伏に富んだ歴史を斬新な視角からダイナミックに描き出す。フランスのみならず多様な地域で経験された「戦後」の本質に迫る名著。 [出版社より] 著 者|クリスティン・ロス 訳 者|中村督・平田周 出版社|人文書院 定 価|3,500円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|310 ISBN|9784409031025 初 版|2019年04月 Contents 第一章 ミス・アメリカ 自動車の歴史 ビヤンクールの世紀/「商品形態」としての自動車 動くイメージ 自動車と近代化/自動車に関する言説/映画のなかの自動車/自動車産業と映画産業/ 物の知覚の変化/アメリカ化への順応と抵抗/モータリゼーションの拡大 自動車・カップル・カードル 新たな自動車の神話/サガンと自動車/小説のなかの広告的な言葉遣い/ ロシュフォールの小説におけるジェンダー/ ボーヴォワールの小説における新旧ブルジョワジー/ 戦後の知識人カップルの交代あるいはその消滅 第二章 衛生と近代化 家事 清潔さへの欲望/リシャール夫人の道徳的漂白とロブ=グリエの文学的漂白/ 女性誌の五つのカテゴリー/女性誌における家事特集/家庭器具展示会という教科書/ 農村女性の解放と従属/近代化における性差の再編成 家の管理 歴史から離れて-プライベート化する社会/フランスの消費社会とアルジェリアの戦争/ 新たな拷問と現代の産業組織 第三章 カップル 大いなる関係解消 フランスとアルジェリアの婚姻関係 フランス新中間層の形成 新中間層とカップル/新中間層の描き方/雑誌購読と国民共同体 新興ブルジョワジーの空間 近代的なものと非近代的なもの/近代化における排除の論理/ 移民の排除と郊外化/再開発のなかの衛生と治安 第四章 新しい人間 新しい人間と人間の死 民族主義運動における「新しい人間」/構造的人間と「新しい人間」/ 植民者と被植民者あるいは人間と動物 カードル 企業における「新しい人間」/革命的指導者と若いカードルの生活様式 不動の時間 ルフェーヴルによる構造主義およびテクノクラシーへの批判/ ロラン・バルトの不潔さからの退却/第二次世界大戦後における学問領域の再編/ 社会科学と歴史学/「外部」の否認と「生きられた経験」 謝辞 訳者あとがき フィルモグラフィ 主要参照文献一覧 人名索引 Author クリスティン・ロス Kristin Ross 1953年生まれ。ニューヨーク大学比較文学部名誉教授。専門はフランス文学・文化研究。邦訳に『68年5月とその後 反乱の記憶・表象・現在』(箱田徹訳、航思社、2014年)、「民主主義、売り出し中」(アガンベン他『民主主義は、いま?』収録、河村一郎他訳、以文社、2011年)など。その他の著作に、The Emergence of Social Space: Rimbaud and the Paris Commune (University of Minnesota Press, 1988), Communal Luxury: The Political Imaginary of the Paris Commune (Verso, 2015)など。 Translator 中村 督 Tadashi Nakamura 1981年生まれ。フランス社会科学高等研究院博士課程修了。博士(歴史学)。現在、南山大学国際教養学部准教授。専門はフランス近現代史。共著に『新しく学ぶフランス史』(ミネルヴァ書房、近刊)、『「1968年」再訪』(行路社、2018年)、共訳にル・ロワ・ラデュリ他『アナール 1929-2010』第V巻(藤原書店、2017年)など。 平田 周 Shu Hirata 1981年生まれ。パリ第8大学博士課程修了。博士(哲学)。現在、南山大学外国語学部准教授。専門は社会思想史、都市理論。共訳にルフォール『民主主義の発明』(勁草書房、2017年)、アガンベン他『民主主義は、いま?』(以文社、2011年)、アリギ『北京のアダム・スミス』(作品社、2011年)など。
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現代思想からの動物論
¥3,850
人文学の動物論的転回。 あらゆる権力支配の基盤に、人間による動物支配をみる力作。 人文学では近年、動物というテーマが盛んに議論され、脱人間中心主義へと向かう現代の思想潮流とも響き合い、ますます熱を帯びたものとなっている。本書はその流れに決定的なインパクトをもたらすだけでなく、あらゆる思想概念に根底的な再考を迫る理論的成果である。フーコー、アガンベン、デリダ、ハラウェイ、スピヴァク、キムリッカなど広範な思想家の理論を通し、「動物」という視角から主権や統治といった概念を批判的再審に付す作業は、現代思想の限界を示すと同時に、新たな可能性をももたらすものとなるだろう。人間と動物との暴力的関係を停止し、存在の新たな関係を構想する、力みなぎる一書。 [出版社より] 著 者|ディネシュ・J・ワディウェル 訳 者|井上太一 出版社|人文書院 定 価|3,500円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|410 ISBN|9784409031056 初 版|2019年10月 Contents 日本語版まえがき 謝辞 緒言(マシュー・カラーコ) 序章 生け吊り 動物たちとの戦争/生政治/間主体的、制度的、認識的暴力 主権は倫理に先行する/戦争と真実 第一部 生政治 第一章 剝き出しの生 アリストテレスの生政治/アガンベンの剝き出しの生 集中生政治/死滅政治/生権力を超えて? 第二章 統治性 統治戦争/牧羊権力/ユダの山羊 第二部 征服 第三章 免疫 免疫と財産/動物免疫 第四章 財産と商品 財産/商品 第三部 私的支配 第五章 私有化と格納 暴力と私有化された統治/格納戦争 第六章 伴侶関係 第四部 主権 第七章 潜在能力 類人猿の主権/市民、野生動物の主権、永住市民権 第八章 愚かさの暴力 デリダの獣/白鯨 終章 停戦 訳者解題 人名索引 Author ディネシュ・J・ワディウェル Dinesh Joseph Wadiwel オーストラリアの人権・社会法学者。市民団体の一員として15年以上にわたり貧困撲滅運動や障害者支援に携わる。2005年、西シドニー大学で博士号を収め、現在、シドニー大学の上級講師。主な研究領域は暴力理論、人種理論、障害者の権利論、批判的動物研究。シドニー大学の人間動物研究ネットワーク(HARN)議長、障害者の権利研究ネットワーク共同議長を務める。共編著にAnimals in the Anthropocene: Critical Perspectives on Non-human Futures (Sydney University Press, 2015)およびFoucault and Animals (Brill, 2016)があるほか、論文多数。 Translator 井上 太一 Taichi Inoue 翻訳家。日本の動植物倫理・環境倫理を前進させるべく、関連する海外文献の翻訳に従事。デビッド・A・ナイバート『動物・人間・暴虐史』(新評論、2016年)、ゲイリー・L・フランシオン『動物の権利入門』(緑風出版、2018年)、ジェームズ・スタネスク+ケビン・カミングス編『侵略者は誰か?』(以文社、2019年)ほか、訳書多数。ホームページ:「ペンと非暴力」(https://vegan-translator.themedia.jp/)
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ポスト・アートセオリーズ 現代芸術の語り方
¥2,530
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拡散する現代アートに対峙する理論とは何か。 芸術の終焉、ポストモダニズム、ポストセオリーの時代を越えて、来るべき理論を探る野心作。 1980年代、アーサー・ダントーは「芸術の終焉」を唱えた。しかし、その後、現代アートはグローバル資本主義の拡大に同伴するかのように爆発的な隆盛を見せる。一方、芸術に向き合ってきた人文学はポストモダニズムの席巻の後、社会主義の崩壊、メディア技術の発展やアート自体の拡散も相俟って、理論的なものが後退してゆく。果たしていまや、この事態に斬り込む言葉はあるのか。本書では、「理論」を牽引するジャーナル『オクトーバー』『クリティカル・インクワイアリー』の変遷を軸に、現代思想とアートの複雑な絡み合いを読み解く。米国を越えて加速する世界規模の知のサーキュレーションを背景に、かつての理論的地平の乗り越えを試みる。 [出版社より] 著 者|北野圭介 出版社|人文書院 定 価|2,300円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|280 ISBN|9784409100448 初 版|2021年03月 Contents はじめに Ⅰ 理論 1 「芸術の終焉」以降のアートの語り方 「ポストアート」という語り方/「芸術とは何か」という問いの深化/「芸術とは何か」という問いとはどのような問いか/デュシャンとウォーホール/メタ実在論としての「芸術の終焉」論 2 ポストモダニズムとはどのようなものであったのか ポストモダニズム美学、その前夜/ポストモダニズム美学、その祭りの後から/記号とは何でなかったのか/記号の前と後、あるいは形而上学の一歩手前/モノを旋回する『オクトーバー』/「対象性」の奈落①/「対象性」の奈落②/分析哲学の「オクトーバー」/作品なる対象を支えるメディウムの彷徨い 3 ポストセオリーという視座 理論の危機の諸相/二一世紀における知の基盤としてのメディア論/モノの迷路を問いただすミュージアム/ひとが作品を欲望するのか、作品がひとを欲望するのか/哲学を穿つメディア論/ポストメディウム論以後のメディア研究/モノ、メディウム、アートの三角形/折り重なるメディウム/「対象」なきあとの芸術実践/参加のダイナミズム/ダイナミズムのなかの参加/アートなる力動態、その形態学/人間、すなわち、イメージと画像が往還するメディウム/三つの展覧会が指し示すもの Ⅱ 批評 1 分断された肉体――寺山修司 2 ポストモダニズムを射抜く――ミックスド・メディア・シアター 3 紅のバラ――ピナ・バウシュ「窓拭き人」 4 イメージのマテリアリティ――アラン・セクーラ 5 イメージの制御、その行方――「渚・瞼・カーテン チェルフィッチュの〈映像演劇〉」 6 呼び覚まされる声――三輪眞弘+前田真二郎「モノローグ・オペラ『新しい時代』」 7 黒いコードの群れ──クリスチャン・ボルタンスキー「Lifetime」 Ⅲ 討議 冷戦終結以降におけるアートと思想のサーキュレーション ――ミハイル・ヤンポリスキーを手がかりに[+乗松亨平、番場俊] ヤンポリスキーと「理論」の行方/アメリカのヤンポリスキー――アヴァンギャルド、『オクトーバー』、ポスト冷戦/メディウムと存在論の狭間で あとがき 人名索引 Author 北野 圭介 Keisuke Kitano 1963年生。ニューヨーク大学大学院映画研究科博士課程中途退学。ニューヨーク大学教員、新潟大学人文学部助教授を経て、現在、立命館大学映像学部教授。映画・映像理論、メディア論。2012年9月から2013年3月まで、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ客員研究員。著書に『ハリウッド100年史講義 夢の工場から夢の王国へ』(平凡社新書、2001年/新版2017年)、『日本映画はアメリカでどう観られてきたか』(平凡社新書、 2005年)、『大人のための「ローマの休日」講義 オードリーはなぜベスパに乗るのか』(平凡社新書、2007年)、『映像論序説 〈デジタル/アナログ〉を越えて』(人文書院、2009年)、『制御と社会 欲望と権力のテクノロジー』(人文書院、2014年)。編著に『映像と批評ecce[エチェ]』1~3号(2009年~2012年、森話社)、訳書にD・ボードウェル、K・トンプソン『フィルムアート 映画芸術入門』(共訳、名古屋大学出版会、2007年)、アレクサンダー・R・ギャロウェイ『プロトコル』(人文書院、2017年)など。
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マテリアル・セオリーズ 新たなる唯物論にむけて
¥2,530
物質に回帰する理論の群れ。 新しい唯物論、思弁的実在論、オブジェクト指向存在論などの新しい現代思想をはじめ、21世紀のバズワードとなった人新世をめぐる議論、あるいはメディア論におけるプラットフォームへの着目、人文社会学における情動論など、今日、人文諸学の基礎理論の周りには、「物質」、「テクノロジー」、「情動」といった言葉がはげしく飛び交っている。世界的規模で爆発的に展開している、その潮流はどこから来たのか。そして、どこへ向かうのか。各分野をまたいで繰り広げられる、濃密な議論の応酬。 建築、美術、哲学、映画研究、フェミニズム、メディア論、社会学など第一線の研究者20名による、8本の討議が浮かび上がらせる、最前線の知の光景。 [出版社より] 編 者|北野圭介 出版社|人文書院 定 価|2,300円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|306 ISBN|9784409030998 初 版|2018年08月 Contents 序 表象からものへ、ものから表象へ Ⅰ ものをめぐる新しい思考 1 新しい唯物論の可能性とその限界――兆候としてのモノ +アレクサンダー・ザルテン ニュー・マテリアリズムの興隆とその起源 セオリーか兆候か アニミズムと資本主義の連関 死と時間の問題 イメージの循環と変化 ものとのあるべき関係を探して 2 人新世とフェミニズム +飯田麻結+依田富子 「人新世」をめぐる問題圏の拡がりと強度 ハラウェイの影響と継承 思考不可能性という問題をどう立て直すか 誰が人新世を語ることができるのか Ⅱ ポストメディア、ポストヒューマン 3 メディアテクノロジーと権力――ギャロウェイ『プロトコル』をめぐって +伊藤守、大山真司、清水知子、水嶋一憲、毛利嘉孝、北村順生 ネットワーク化する権力と対抗運動 〈帝国〉とプロトコルの現在へ プロトコルへの戦術的応答 プロトコルはパワフルなのか 『資本論』と人工生命 読解のための三つのポイント カルチュラル・スタディーズ、人工知能 技術決定論への回帰? 4 ポストメディウム理論と映像の現在 +加治屋健司+門林岳史+堀潤之+前川修 ポストメディウム理論の限界 マノヴィッチ/ベルール クラウスの批評戦略 メディウム以降の美術 メディウム間の棲み分け 5 リダンダンシー・ハビトゥス・偶然性――ポストヒューマニズムの余白に +坂元伝+佐藤良明+リピット水田堯+山内志朗 ポストヒューマンとリダンダンシー 接頭辞「ポスト」の行方 「無意識」以後のit 創発性の建築空間 エンボディメント(身体化)とは何か 「自由」というファンタジー 6 映画をめぐる新しい思考のために +宇野邦一+リピット水田堯 フレームとは何か 映画における過剰なもの 身体の還元不可能性 「見者」の身体 映画と精神分析 Ⅲ 「日本」をめぐって 7 日本哲学のポジショニング +檜垣立哉 日本哲学の現代性 西田幾多郎の強度 ポストモダンと京都学派 哲学と批評の交わらなさ マルチ・ナチュラリズム 未来のテクネー論へ 8 日本社会をいかに語るか――来るべきカルチュラル・スタディーズ +吉見俊哉 バーミンガム学派の役割 カルチュラル・スタディーズとの出会い 『思想の科学』とカルチュラル・スタディーズ 社会学とカルチュラル・スタディーズの関係 アジアとの連携へ 敵と「添い寝」する戦略 グローバリゼーションの渦の中で 「理論」の役割 流行思想からの跳躍 大衆文化とカルチュラル・スタディーズ 日本近代の特殊性 日本に期待されるもの 「文化」を再定義する あとがき――言葉の揺れのなかで 人名索引 Editor 北野 圭介 Keisuke Kitano 1963年生。ニューヨーク大学大学院映画研究科博士課程中途退学。ニューヨーク大学教員、新潟大学人文学部助教授を経て、現在、立命館大学映像学部教授。映画・映像理論、メディア論。2012年9月から2013年3月まで、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ客員研究員。著書に『ハリウッド100年史講義 夢の工場から夢の王国へ』(平凡社新書、2001年/新版2017年)、『日本映画はアメリカでどう観られてきたか』(平凡社新書、 2005年)、『大人のための「ローマの休日」講義 オードリーはなぜベスパに乗るのか』(平凡社新書、2007年)、『映像論序説 〈デジタル/アナログ〉を越えて』(人文書院、2009年)、『制御と社会 欲望と権力のテクノロジー』(人文書院、2014年)。編著に『映像と批評ecce[エチェ]』1~3号(2009年~2012年、森話社)、訳書にD・ボードウェル、K・トンプソン『フィルムアート 映画芸術入門』(共訳、名古屋大学出版会、2007年)、アレクサンダー・R・ギャロウェイ『プロトコル』(人文書院、2017年)など。
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人新世の哲学——思弁的実在論以後の「人間の条件」
¥2,530
一万年に及んだ完新世が終わり、新たな時代が始まっている。 環境、物質、人間ならざるものたちとの共存とは何か。メイヤスー、ハーマン、デランダ、モートン、チャクラバルティ、アーレントなどを手掛かりに探る壮大な試み。 人類の活動による大規模な環境変動は地球の姿を変え、地質学的に新たな時代「人新世」に突入している、ノーベル賞受賞科学者クルッツェンはそう述べた。21世紀に入り分野を越えたホットワードとなったこの概念は、あらゆる側面で現実の捉え方に再考を迫っている。近年思想界において登場した思弁的実在論や新たな唯物論といった議論も、こうした潮流と無関係ではない。本書では、人新世という概念や現代の思想潮流を全面的に引き受け、思想の更新を図るとともに、新時代における「人間の条件」をアーレントを手掛かりに探ってゆく。人間と自然が溶け合う世界の本質に迫る、著者の飛翔作。 [出版社より] 「本書は、メイヤスーの後に展開し広がりつつある思想潮流で提示されている人間と自然という問題系を踏まえ、そのうえでアーレントが考えようとした人間の条件について、あらためて考えようとするものである。ただし、ただ新しい思想の紹介を自己目的化するものではない。むしろ、これらの思想が生じつつある時代的状況がいかなるものかを考えることを重視したい」 ——本書より 著 者|篠原雅武 出版社|人文書院 定 価|2,300円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|260 ISBN|9784409030967 初 版|2018年01月 Contents 序論 第一章 人間と自然とのかかわり 1 人間の世界と自然の世界 2 自然のなかにある人間の世界 3 自然世界とは何か 第二章 人間世界の離脱 1 人間世界と自然世界の連関 2 人間世界と自然世界の相互連関的な掻き乱し 第三章 人間世界の脆さ 1 前代未聞の事態への意識――科学技術化・地球からの離脱・人間の条件の崩壊 2 人間世界の限界とエコロジカルな現実との出会い 第四章 エコロジカルな世界 1 エコロジカルなもののリアリティとは何か 2 エコロジカルな時代におけるリアリズムの再生 3 エコロジカルな世界を受けいれる 第五章 事物の世界と詩的言語の可能性 1 事物のリアリティと詩的言語 2 「物化」への詩的実験 第六章 エコロジカルな共存 1 自己完結的な世界の論理とその無理 2 共存空間とは何か あとがき Author 篠原 雅武 Masatake Shinohara 1975年生まれ。京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。哲学・環境人文学。現在、京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定准教授。単著書に『公共空間の政治理論』(人文書院、2007年)、『空間のために』(以文社、2011年)、『全‐生活論』(以文社、2012年)、『生きられたニュータウン』(青土社、2015年)、『複数性のエコロジー』(以文社、2016年)、『「人間以後」の哲学』(講談社選書メチエ、2020年)。主な翻訳書として『社会の新たな哲学』(マヌエル・デランダ著、人文書院、2015年)、『自然なきエコロジー』(ティモシー・モートン著、以文社、2018年)。
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笑いオオカミ
¥3,740
シベリアが見えるところまで——。 父と墓地に暮らす少年は、ある夜、男女の心中を目撃した。数年後、少年は死んだ男の娘を連れて列車の旅に出る。二人の眼に映る、敗戦下の日本とは。生を奪われた無数の子どもたちに想いを馳せ描く冒険譚。単行本未収録「犬と塀について」併録。 [出版社より] 「津島佑子に飛躍をもたらしたのは、彼女が安吾の作品に見出した「ひんやりとした、熱い風」である。それこそが「兄」である。以後、津島佑子はこの「兄」に連れられて、オオカミ=遊動民の旅に出たのである」 ——柄谷行人「津島佑子とオオカミ」より 著 者|津島佑子 解 説|柄谷行人 出版社|人文書院 定 価|3,400円+税 判 型|四六判 頁 数|440 ISBN|9784409150337 初 版|2018年06月 Contents 笑いオオカミ 犬と塀について 解説 柄谷行人 Author 津島 佑子 Yuko Tsushima 一九四七年、 東京都生まれ。白百合女子大学卒業。七六年『葎の母』で第一六回田村俊子賞、七七年『草の臥所』で第五回泉鏡花文学賞、七八年 『寵児』で第一七回女流文学賞、 七九年『光の領分』で第一回野間文芸新人賞、八三年 「黙市」で第一〇回川端康成文学賞、 八七年 『夜の光に追われて』 で第三八回読売文学賞、 八九年『真昼へ』で第一七回平林たい子文学賞、九五年『風よ、空駆ける風よ』で第六回伊藤整文学賞、九八年 『火の山―山猿記』で第三四回谷崎潤一郎賞及び第五一回野間文芸賞、二〇〇二年『笑いオオカミ』で第二八回大佛次郎賞、〇五年 『ナラ・レポート』 で第五五回芸術選奨文部科学大臣賞及び第一五回紫式部文学賞、 一二年 『黄金の夢の歌』で第五三回毎日芸術賞を受賞。二〇一六年二月一八日、 逝去。
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嘔吐[新訳]
¥2,090
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港町ブーヴィル。ロカンタンを突然襲う吐き気の意味とは……一冊の日記に綴られた孤独な男のモノローグ。 「物が「存在」であるように、自分を含めた人間もまた「存在」であることにロカンタンは気づく。そうだとすれば、われわれがこの世界に生きているのも偶然で、何の理由もないはずだろう。われわれはみな「余計な者」である。この発見は強烈で、作品全体に一種のアナーキーな空気を漂わせている。(中略)これは政治運動としてのアナーキズムの意ではなく、独りきりの孤立した人間が練り上げたラディカルな思想を指している。」(訳者あとがきより) [出版社より] 著 者|ジャン=ポール・サルトル 訳 者|鈴木道彦 出版社|人文書院 定 価|1,900円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|340 ISBN|9784409130315 初 版|2010年07月 Author ジャン=ポール・サルトル Jean-Paul Charles Aymard Sartre 1905〜80年。パリに生れる。海軍技術将校だった父を亡くし、母方の祖父のもとで育つ。高等師範学校で哲学を学び、生涯の伴侶となるボーヴォワールと出会う。小説『嘔吐』(1938)、哲学論文『存在と無』(1943)で注目され、戦後「レ・タン・モデルヌ(現代)」誌を創刊。実存主義哲学の旗手として文筆活動を行い、知識人の政治参加を説いた。1964年、ノーベル文学賞に指名されるが辞退。 鈴木道彦 Michihiko Suzuki 1929年東京生まれ。東京大学文学部仏文学科卒業。一橋大学、獨協大学教授を経て、獨協大学名誉教授。M.プルースト『失われた時を求めて』(全13巻、集英社)の個人全訳で、2001年度讀賣文学賞、日本翻訳文化賞受賞。
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嘔吐
¥2,420
SOLD OUT
サルトルの精神形成を知るうえで欠かすことのできない「実存主義の聖書」であり、また実存主義思潮の熱い季節が去った後も、人生とは何かを真正面から純粋に追求した類稀な小説。実存と不条理を描く現代文学の古典。 存在の不条理に「吐き気」を感じる青年ロカンタンの日常を、内的独白と細かな心理描写で見事に展開させた20世紀十大小説の一つ。 [出版社より] 著 者|ジャン=ポール・サルトル 訳 者|白井浩司 出版社|人文書院 定 価|2,200円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|312 ISBN|9784409130193 発 行|1994年01月 Author ジャン=ポール・サルトル Jean-Paul Charles Aymard Sartre 1905〜80年。パリに生れる。海軍技術将校だった父を亡くし、母方の祖父のもとで育つ。高等師範学校で哲学を学び、生涯の伴侶となるボーヴォワールと出会う。小説『嘔吐』(1938)、哲学論文『存在と無』(1943)で注目され、戦後「レ・タン・モデルヌ(現代)」誌を創刊。実存主義哲学の旗手として文筆活動を行い、知識人の政治参加を説いた。1964年、ノーベル文学賞に指名されるが辞退。 Translator 白井 浩司 Koji Shirai
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文化の窮状 二十世紀の民族誌学、文学、芸術
¥6,600
これまで一般的に信じられてきた文化概念では、グローバルな移動が日常になっている現代世界を理解することはもはやできなくなっている。脱植民地化の過程において、文化の諸断片はただよい、根を断たれたアイデンティティにこの世界はみたされてしまった。そこでは忘れたはずの植民地主義の遠い記憶が、突如として現在生起しつつある事態と結びついてしまう。脱植民地化の時間は往還する時間なのである。 では空間的にも、時間的にも錯綜している現代世界を把握するためにどのような方途があるのだろうか。著者クリフォードは文化概念そのものの変更を主張する。「有機的な一体性をもち、ある土地に根ざした固有のもの」という硬直した文化概念を捨てること。純粋で真正な文化などもはやありえないことを知り――それを嘆くのではなく――、断片的で混淆した文化のありようを評価し、根(ルーツ)をなくしたものの経路(ルーツ)をたどること。こうすることで、これまでとは違った世界が見えてくる。 原書刊行からすでに10年以上を経過しているが、その衝撃力はいまだ衰えていない。熱讃者は後を絶えず、引用・言及される頻度や範囲においても第一級の基本文献といえる。【叢書 文化研究】の続編として、日本でクリフォード的実践をおこなう第一人者による最新インタヴューと超力作解説を付して万全の構えで刊行する。 [出版社より] 著 者|ジェイムズ・クリフォード 訳 者|太田好信・慶田勝彦・清水展・浜本満・古谷嘉章・星埜守之 出版社|人文書院 定 価|6,000円+税 判 型|A5判/上製 頁 数|580 ISBN|9784409030684 発 行|2003年01月 Contents 序章 純粋なものは、狂ってしまう 第一部 言説 民族誌の権威について/民族誌における権力と対話――マルセル・グリオールのイニシエーション/民族誌的自己成型――コンラッドとマリノフスキー 第二部 転置 民族誌的シュルレアリスムについて/転置の詩学――ヴィクトル・セガレン/君の旅について話してくれ――ミシェル・レリス/新語のポリティクス――エメ・セゼール/植物園――ポストカードより 第三部 収集 部族的なものと近代的なものの歴史/芸術と文化の収集について 第四部 歴史 『オリエンタリズム』について/マシュピーにおけるアイデンティティ 原注/訳注 往還する時間 ジェイムス・クリフォードへのインタヴュー 解説 批判的人類学の系譜(太田好信) Author ジェイムズ・クリフォード James Clifford 1945年生。カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校(意識の歴史プログラム)教授。 Translator 太田 好信 Yoshinobu Ota 1954年生。ミシガン大学大学院博士課程修了。九州大学大学院比較社会文化研究院教授。文化人類学。
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バナナ・ビーチ・軍事基地——国際政治をジェンダーで読み解く
¥6,380
女性たちがグローバルな搾取と向き合うために。 性産業、食品加工工業、軍事基地、観光産業、家事労働、外交の場まで……。世界の不平等が凝縮された場所から、国境を越えて女性が連帯し、平等で平和な社会を実現するには。 背景の異なる様々な女性の声に耳をすませた鮮やかな政治学的分析。 グローバルな資本主義市場、パワーゲームが支配する国際情勢の中で、女性は自らを取り戻すためにどうあるべきか。ナショナリズムの陰で女性たちは家父長制にとりこまれることなくどう戦略をたてるべきか? 消費者である富裕層の女性と生産者である貧困層の女性はどう連帯できるのか? 私たちは何に気づくべきだろうか? フェミニズムの分析フレームから好奇心と関心をもって世の中を眺める方法を示しつつ女性たちの置かれている状況を鋭く暴く。 [出版社より] 著 者|シンシア・エンロー 訳 者|望戸愛果 出版社|人文書院 定 価|5,800円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|484 ISBN|9784409241349 初 版|2020年11月 Contents 第二版への序文 初版への序文 第一章 ジェンダーが世界を動かす---女性はどこにいるのか? 権力はどこで行使されるか? トランスナショナル・フェミニストの考えを真剣に受けとめるのは誰か? 私たちが見落とすこと---二つの短いケーススタディ 男性はどこにいるのか? グローバルな被害者を超えて 第二章 レディ・トラベラー、美人コンテスト優勝者、スチュワーデス、そして客室係のメイド---観光の国際ジェンダー・ポリティクス どこへでも自由に行ける、そしてジェンダー化されている 女性性、進歩、そして万国博覧会 パッケージツアーとリスペクタブルな女性 発展のための観光の方程式 美人コンテストと観光 スチュワーデスと客室係のメイド グローバル化された客室係のメイド 国際政治におけるセックス観光 結論 第三章 ナショナリズムと男性性---ナショナリズムの物語は終わらない---そしてそれは単純な物語ではない 女性、植民地主義、反植民地主義 ジェンダー化された植民地主義 ナショナリズムとヴェール ナショナリズム運動内部の家父長制 もう一つのノスタルジア 結論 第四章 基地の女性たち 不沈空母上の人種と性 軍人の妻「問題」 軍事基地は女性兵士にとって安全か? 売春、売春に携わる女性、そして国家安全保障のジェンダー化された国際政治 スービックの閉鎖---反基地運動の成功 結論 第五章 外交的な妻と外交的ではない妻 帝国の結婚外交 外交を家庭化する 「苦悶するな、組織せよ!」 外交的家事労働に賃金を アメリカ国務省のジェンダー革命 結論 第六章 バナナに夢中!---バナナの国際政治において女性はどこにいるのか? カルメン・ミランダ、ハリウッド、そしてフルーツ 「私はチキータバナナ、お話をしにきたの」 バナナ共和国の女性たち 女性たちが食物を育て、バナナを洗う 売春宿とバナナ 女性生産者と「バナナ戦争」 バナネラス----女性バナナ労働者は団結する 結論 第七章 女性の労働は決して安くはない---グローバルなブルージーンズと銀行家のジェンダー化 ドアは内開きだった ジェンダーが重要だ 女性の労働はいかにして安くされるか? ブルージーンズは歴史的である—あなたのグローバルなクローゼットを調べること ベネトンモデル---一九八〇年代に内職をグローバル化すること 銀行家とお針子 家父長制は時代遅れではない 軽工業、重工業---女性はどこにいるのか? 男性はどこにいるのか? 韓国---「虎」になるための代価を払うのは誰か? メキシコ---地震はほんの始まりにすぎなかった 中国---前進中の女性たち 結論 第八章 グローバル化されたバスタブをごしごし洗う---世界政治における家事使用人 メイド、女性家庭教師、そして帝国のリスペクタブルな女性たち 「ダブルの日」のジェンダー化された歴史 連帯は決して自動的ではない 家事労働者たちは組織する 結論 第九章 結論---個人的なことは国際的なこと、国際的なことは個人的なこと 索引 注 訳者解題 Author シンシア エンロー Cynthia Enloe 1938年、ニューヨーク生まれ。1967年、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。現在、クラーク大学国際開発・コミュニティ・環境学部研究教授。専門は政治学、女性学、ジェンダー研究。日本語に訳されている著書・講演録に『<家父長制>は無敵じゃない』(佐藤文香監訳、岩波書店、2020年)、『策略――女性を軍事化する国際政治』(上野千鶴子監訳、佐藤文香訳、岩波書店、2006年)、『フェミニズムで探る軍事化と国際政治』(秋林こずえ訳、御茶の水書房、2004年)、『戦争の翌朝――ポスト冷戦時代をジェンダーで読む』(池田悦子訳、緑風出版、1999年)。その他の著書に、 Seriously!: Investigating Crashes and Crises as If Women Mattered (University of California Press, 2013)など。 Translator 望戸 愛果 Aika Mouko 一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。現在、立教大学アメリカ研究所特任研究員。専門は、国際社会学、歴史社会学、ジェンダー研究。著書に『「戦争体験」とジェンダー――アメリカ在郷軍人会の第一次世界大戦戦場巡礼を読み解く』(単著、明石書店、2017年)、『ナショナリズムとトランスナショナリズム――変容する公共圏』(共著、法政大学出版局、2009年)。論文に「退役軍人としての女性――第一次世界大戦後アメリカにおける女性海外従軍連盟の組織化過程」『戦争社会学研究』第3巻(2019年)、「退役軍人巡礼事業における「戦争の平凡化」の過程――アメリカ在郷軍人会による西部戦線巡礼と「聖地」創出」『社会学評論』第63巻第4号(2013年)など。
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文化大革命[上巻]
¥3,300
革命に翻弄される人民のあまりにも苛酷な日々。激動の時代、なぜ暴力の連鎖は起こったのか。 飢餓、紅衛兵、粛清、裏切り、恐怖と混乱……。毛沢東の野望と権力闘争の犠牲になった民衆たちの姿を圧倒的筆致で抉り出す! 優れたノンフィクションにおくられるサミュエル・ジョンソン賞受賞の著者が、綿密な聞き取りと圧倒的な史料をもちいて文革の悲惨な歴史を明らかにする! 本書はディケーターの毛沢東三部作の一冊にあたる。 「著者は、一方では上層部指導者の権力闘争とめまぐるしい政策の変化を詳細に跡付け、他方ではそのような暴政に対する民衆一人ひとりの対応やイニシアティブを描くことに力を注いだのではなかろうか。つまり著者は、国家権力・政治指導者側の横暴と歪んだロジックをまず明らかにしたうえで、それに対する民衆一人ひとりの支持、同調、抵抗、逃避、無関心、創意工夫といったいわばサバイバル戦略ともいうべきものを描きたかったのではなかろうか。(…) これまで文化大革命についての研究成果は、その複雑さ難解さゆえになかなか一般の読者に伝わりにくかったように思える。本書は、最新の研究成果を吸収しつつ、文化大革命の全体像をわかりやすく、また独自の視点も加えて書かれており、関連書の中でも一般の読者にとっては最良の一冊であるといえる。できるだけ多くの読者にお読みいだだき、中国現代史における未曾有の動乱期についての理解を深めていただきたいと切に希望している。」(監訳者解説より) [出版社より] 著 者|フランク・ディケーター 監訳者|谷川真一 訳 者|今西 康子 出版社|人文書院 定 価|3,000円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|280 ISBN|9784409510827 初 版|2020年03月 Contents 口絵 序文 年表 地図 第一部 大飢饉後(1962-1966) 第1章 二人の独裁者 第2章 階級闘争を決して忘れるな 第3章 文化戦線 第4章 四人の反革命集団 第二部 紅色の年代(1966-1968) 第5章 大字報闘争 第6章 赤い八月 第7章 旧社会の破壊 第8章 毛沢東崇拝 第9章 経験大交流 第10章 造反派と保皇派 第11章 軍隊の出動 第12章 武装競争 第13章 鎮火 Author フランク・ディケーター Frank Dikotter 香港大学人文学院講座教授。檔案館(党公文書館)資料を利用した研究の先駆者で、名著『The Discourse of Race in Modern China』(1992)、サミュエル・ ジョンソン賞受賞作『Mao’s Great Famine』(2010)(『毛沢東の大飢饉』(2011年,草思社))、最新著書『The Tragedy of Liberation』(2013) をはじめとする10冊の著書は、歴史学者の中国に対する見方や認識を変えた。 Translator 谷川 真一 Shinichi Tanigawa [監訳] スタンフォード大学大学院社会学研究科博士課程修了(Ph.D.)。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科教授。専門は現代中国の政治と社会、国際関係。主な著書・論文に、『中国文化大革命のダイナミクス』(御茶ノ水書房、2011年)、“The Policy of the Military ‘Supporting the Left’ and the Spread of Factional Warfare in China’s Countryside: Shaanxi, 1967-1968,” Modern China 44 (Jan. 2018), pp. 35-67、訳書に、アンドリュー・ウォルダー『毛沢東時代の中国――脱線した革命』(ミネルヴァ書房、近刊)がある。 今西 康子 Yasuko Imanishi 神奈川県生まれ。訳書に、ジョセフ・ヘンリック『文化がヒトを進化させた』(白揚社)、ジャスティン・シュミット『蟻と蜂に刺されてみた』(白揚社)、カール・ジンマー『ウイルス・プラネット』(飛鳥新社)、エイミィ・ステュワート『ミミズの話』(飛鳥新社)、キャロル・S・ドゥエック『マインドセット』(草思社)、アンドリュー・パーカー『眼の誕生』(共訳、草思社)、エドワード・ホフマン『カバラー心理学』(共訳、人文書院)など。
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文化大革命[下巻]
¥3,300
未曽有の政治的混乱と暴力。人びとはあの時代をどう生き抜いたのか? 軍の介入、闇経済、林彪事件、四人組裁判、そして第一次天安門事件へ……。中国共産党の権力闘争の内幕と人民生活への影響を余すところなく描き出す! 優れたノンフィクションにおくられるサミュエル・ジョンソン賞受賞の著者が、綿密な聞き取りと圧倒的な史料をもちいて文革の悲惨な歴史を明らかにする! [出版社より] 著 者|フランク・ディケーター 監訳者|谷川真一 訳 者|今西 康子 出版社|人文書院 定 価|3,000円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|246 ISBN|9784409510834 初 版|2020年03月 Contents 口絵 第三部 黒色の年代(1968-1971) 第14章 階級隊列の純潔化 第15章 上山下郷 第16章 戦争準備 第17章 大寨に学べ 第18章 更なる粛清 第19章 後継者の死 第四部 灰色の年代(1971-1976) 第20章 修復 第21章 静かなる革命 第22章 第二社会 第23章 反潮流 第24章 その後 注 文献 謝辞 解説(谷川真一) 索引 Author フランク・ディケーター Frank Dikotter 香港大学人文学院講座教授。檔案館(党公文書館)資料を利用した研究の先駆者で、名著『The Discourse of Race in Modern China』(1992)、サミュエル・ ジョンソン賞受賞作『Mao’s Great Famine』(2010)(『毛沢東の大飢饉』(2011年,草思社))、最新著書『The Tragedy of Liberation』(2013) をはじめとする10冊の著書は、歴史学者の中国に対する見方や認識を変えた。 Translator 谷川 真一 Shinichi Tanigawa [監訳] スタンフォード大学大学院社会学研究科博士課程修了(Ph.D.)。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科教授。専門は現代中国の政治と社会、国際関係。主な著書・論文に、『中国文化大革命のダイナミクス』(御茶ノ水書房、2011年)、“The Policy of the Military ‘Supporting the Left’ and the Spread of Factional Warfare in China’s Countryside: Shaanxi, 1967-1968,” Modern China 44 (Jan. 2018), pp. 35-67、訳書に、アンドリュー・ウォルダー『毛沢東時代の中国――脱線した革命』(ミネルヴァ書房、近刊)がある。 今西 康子 Yasuko Imanishi 神奈川県生まれ。訳書に、ジョセフ・ヘンリック『文化がヒトを進化させた』(白揚社)、ジャスティン・シュミット『蟻と蜂に刺されてみた』(白揚社)、カール・ジンマー『ウイルス・プラネット』(飛鳥新社)、エイミィ・ステュワート『ミミズの話』(飛鳥新社)、キャロル・S・ドゥエック『マインドセット』(草思社)、アンドリュー・パーカー『眼の誕生』(共訳、草思社)、エドワード・ホフマン『カバラー心理学』(共訳、人文書院)など。
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現実界に向かって
¥2,640
SOLD OUT
ラカンの継承者ミレール、初めての入門書 ラカン自身により「私を読むことのできる少なくとも一人の人物」と評され、ラカン派の領袖として活躍する精神分析家ミレールの初めての入門書。哲学と精神分析、臨床、政治などのテーマのもと、その思想がコンパクトに論じられる。ラカンとともに、そしてラカンを超えて独自の歩みをみせる、現代ラカン派の良質な見取り図となる一冊。 「本書は、読者がミレールという人物について自分の意見をもつために十分な情報を提供する機会となるだろう。すくなくとも、私たち(筆者)はそうなることを望んでいる。とはいっても、本書がジャック= アラン・ミレールの思想のすべてを復元ないし要約していると主張する気はまったくない。しかしながら、私たちは彼の思想からアウトラインを引き出し、主要なテーゼを抜き出し、主張を明確にしたいと思う。一言でいえば、ミレールの思想の軌跡を描くことを試みたいのである」 [出版社より] 著 者|ニコラ・フルリー 訳 者|松本卓也 出版社|人文書院 定 価|2,400円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|220 ISBN|9784409340554 初 版|2020年09月 Contents 序 言葉を愛する者 解明への情熱 政治的プラグマティズム 第一章 哲学から精神分析へ サルトルの読解者としてのミレール ルイ・アルチュセールからジャック・ラカンへ 真理の理論 主体の理論 ラカンの論理学的教義? 精神分析の方へ 第二章 精神分析臨床 分析経験 精神分析、心理学と精神医学 「繊細なもの」、あるいは実存の特異的なもの 精神分析は特異的なものの「科学」か? 精神医学臨床から精神分析臨床へ 精神病の問題 普通精神病 分析経験における情動 症状とファンタスム 症状の形式的外被 ファンタスムの論理 ファンタスムの横断――パス 第三章 ラカン的政治 毛沢東主義から政治の懐疑論へ 精神分析の倫理 精神分析からどのような政治が演繹できるか 文化における現実的袋小路 欲望は政治へと回帰するのか? 第四章 現実界に向かって 精神分析のパラダイムの変化 意味と現実界を分けること シニフィカシオンから享楽へ 身体の出来事 現実的無意識 精神分析的解釈についての新たな帰結 解釈の時代の終焉 無意識は解釈する ファンタスムの横断から症状への同一化 精神分析は偽装した快楽主義か? 人はみな妄想する 訳者解説 ミレールの著作目録 Author ニコラ・フルリー Nicolas Floury 1978年生まれ。パリ第10大学にて、臨床心理士の資格と哲学の博士号を取得。主な著作に、『Elisabeth Roudinesco : une psychanalyste dans la tourmente』(2011)や、『De l'usage addictif : une ontologie du sujet toxicomane』(2016)などがある。現在は哲学と精神分析の関係についての研究に取り組んでいる。 Translator 松本 卓也 Takuya Matsumoto 1983年高知県生まれ。高知大学医学部卒業、自治医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。専門は精神病理学。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。著書に『人はみな妄想する ジャック・ラカンと鑑別診断の思想』(青土社、2015年)、『発達障害の時代とラカン派精神分析』(共著、晃洋書房、2017年)、『創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで』(講談社メチエ、2019年)、『心の病気ってなんだろう』(平凡社、2020年)など。訳書にヤニス・スタヴラカキス『ラカニアン・レフト ラカン派精神分析と政治理論』(共訳、岩波書店、2017年)がある。
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ボランティアとファシズム
¥4,950
それは自発か、強制か? 日本のボランティアは、東京帝大の学生たちによる関東大震災後の救護活動およびセツルメントの開設に端を発する。だが、ヒトラー・ドイツに学んだ日本国家は彼らの社会貢献を制度化し、「勤労奉仕」に組み換える形で戦時体制に取り込んでゆく。20世紀史を鏡に、私たちの自発性と強制性の境を揺さぶる渾身の書。 [出版社より] 著 者|池田浩士 出版社|人文書院 定 価|4,500円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|400 ISBN|9784409520772 初 版|2019年05月 Contents 序章 いまなぜ「ボランティア」なのか? Ⅰ 日本の「ボランティア元年」――デモクラシーの底辺で 1 この私を待つ人たちがいる! 2 自発性と社会貢献の歴史を見つめなおすために Ⅱ 自発性から制度化へ――奪われたボランティア精神 1 発展する国家を巨大自然災害が襲った 2 震災救護活動のなかで――ある大学生たちの歩み 3 「東京帝国大学セツルメント」の創生 Ⅲ ヒトラー・ドイツの「労働奉仕」――日本が学んだボランティア政策 1 ボランティア労働とナチズム 2 労働奉仕と自発性――そもそもボランティアとは何か? 3 自発性とファシズム――労働奉仕が歩んだ道 Ⅳ ボランティア国家としての「第三帝国」――結束と排除の総活躍社会 1 国民だれもがボランティアとなる 2 「帝国労働奉仕」の日々――数字と証言 3 ボランティアの日々、ホロコーストへの道 Ⅴ 「勤労奉仕」と戦時体制――日本を支えた自発性 1 大きな目標の達成に向けて――労働が青少年を組織する 2 銃後のボランティアたち――期待される女性と家庭 3 大陸の花嫁、特攻隊、愛路村――戦時下ボランティアの諸相 終章 迷路のなかのボランティア 1 世の中がボランティアを必要とする… 2 ボランティアの歴史と現実 Author 池田 浩士 Hiroshi Ikeda 1940年生まれ。ドイツ文学・ファシズム文化研究。京都大学名誉教授。主著に『ルカーチとこの時代』(平凡社、1975年)、『ファシズムと文学』(白水社、1978年)、『抵抗者たち』(TBSブリタニカ、1980年/増補新版=共和国、2018年)、『池田浩士コレクション』(インパクト出版会、刊行中)など。主編訳書として、『ルカーチ初期著作集』全4巻(三一書房、1975-76年)、『ドイツ・ナチズム文学集成』(柏書房、刊行中)など。
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技術の完成
¥4,950
ハイデガーに影響を与えた技術批判論の重要作。 技術文明の本質を多方面から根本的に考察し、ハイデガーにも影響を与えた技術批判論の重要作、本邦初訳。 「近代のエコロジー論争を先取りした、驚嘆するほどに広い視野を持つ本である」(社会学者シュテファン・ブロイアー) 著者はエルンスト・ユンガーの三歳下の弟。 [出版社より] 著 者|フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー 訳 者|F G ユンガー研究会 出版社|人文書院 定 価|4,500円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|340 ISBN|9784409031018 初 版|2018年10月 Contents 緒言 一 〔技術とユートピア〕 二 〔労働とゆとり〕 三 〔富と貧困〕 四 〔技術的組織と損失経済〕 五 〔技術による収奪と合理性〕 六 〔経済的思考の技術的思考への敗北 七 〔エコノミーと大地の掟〕 八 〔自動化の増大と時間〕 九 〔技術的搾取過程の基盤としてのデカルト理論〕 一〇 〔ガリレイ=ニュートン力学が時間概念に及ぼす影響〕 一一 〔自然科学と機械化された時間概念〕 一二 〔死んだ時間〕 一三 〔歯車装置としての技術〕 一四 〔決定論と統計的蓋然性〕 一五 〔意志の非自由性〕 一六 〔労働の専門化と細分化、労働者の諸組織〕 一七 〔労働問題の成立〕 一八 〔機械と労働者組織、労働者の失意〕 一九 〔労働者と搾取、安全性〕 二〇 〔意図的な技術と意図的でない技術、目的論と力学〕 二一 〔因果論的思考と目的論的思考の協働〕 二二 〔技術的合目的性の限界〕 二三 〔機械機構と人間組織の相互関係〕 二四 〔機能主義と自動化〕 二五 〔技術的組織と他の諸組織、技術と法〕 二六 〔科学と技術〕 二七 〔技術的組織と貨幣・通貨制度〕 二八 〔技術的組織と教育〕 二九 〔技術と栄養摂取〕 三〇 〔技術的人間組織による国家の機械的改変〕 三一 〔科学的悟性の収奪的特徴〕 三二 〔科学的真理の概念〕 三三 〔技術の消費力と惑星規模の組織化、恒常的革命の時代、工場の稼働事故〕 三四 〔技術的完成の概念〕 三五 〔技術と大衆形成〕 三六 〔機械機構とイデオロギー、俳優〕 三七 〔イデオロギーと剥離〕 三八 〔動員(流動化)としての技術〕 三九 〔ローマ史の理論〕 四〇 〔技術とスポーツ〕 四一 〔映画のメカニズム〕 四二 〔自動化の麻酔的魅力〕 四三 〔惑星規模で組織化された収奪、総動員、総力戦〕 四四 〔欠乏諸組織の課題〕 四五 〔ライプニッツ、カント、ヘーゲルの哲学〕 四六 〔機械的進歩と根源的退行〕 補遺 世界大戦 内容外観 訳者解説1「技術をめぐる交友、ユンガー兄弟とハイデガー」今井敦 訳者解説2「エコロジーの書としての『技術の完成』」中島邦雄 訳者解説3「フリードリヒ・ゲオルク・ユンガーにおける社会思想の視座」桐原隆弘 訳注 Author フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー Friedrich Georg Jünger 1898‐1977年。ドイツの詩人、小説家、思想家。同じく作家であったエルンスト・ユンガーの三歳下の弟。第一次世界大戦に志願兵として出征、西部戦線で負傷したあと、大学で法律を修めたが、文筆活動に入る。文学作品に『罌粟』(詩)『ダルマツィアの夜』(短編集)『第一行程』(長編)『二人の姉妹』(長編)『ハインリヒ・マルヒ』(長編)、回想記として『緑の枝々』『年の鏡』、批評に『ナショナリズムの行進』『ギリシアのミュートス』『ニーチェ』『言語と思考』などがある。 Translator F G ユンガー研究会 監訳者 今井敦(龍谷大学) 桐原隆弘(下関市立大学) 中島邦雄(水産大学校) 翻訳担当者 島浦一博(九州国際大学) 能木敬次(日本経済大学) 福山美和子(ドイツ語通訳) 熊谷エミ子(龍谷大学非常勤講師) 西尾宇広(慶応義塾大学) 小長谷大介(龍谷大学) 稲葉瑛志(京都大学非常勤講師) アドヴァイザー 飯森伸哉(龍谷大学非常勤講師) 増田靖彦(龍谷大学) 川野正嗣(京都大学大学院生)