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「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。日本人の想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、この戦いが顕現させた生き地獄を見過ごすことになるだろう。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
[出版社より]
「冷戦期のプロパガンダによって歪められた独ソ戦像がいまだに日本では根強く残っている。本書は明快な軍事史的叙述を軸に、独ソ両国の政治・外交・経済・世界観など多様な面からその虚像を打ち払う。露わになった実像はより凄惨なものだが、人類史上最悪の戦争に正面から向き合うことが21世紀の平和を築く礎となるだろう」
——呉座勇一
著 者|大木 毅
出版社|岩波書店
定 価|860円+税
判 型|新書判
頁 数|270
ISBN|9784004317852
初版|2019年7月
Contents
■はじめに 現代の野蛮
未曾有の惨禍/世界観戦争と大祖国戦争/ゆがんだ理解/スタートラインに立つために
■第一章 偽りの握手から激突へ
第一節 スターリンの逃避
無視される情報/根強い対英不信/弱体化していたソ連軍
第二節 対ソ戦決定
征服の「プログラム」/想定外の戦局/三つの日付/陸軍総司令部の危惧/第一八軍開進訓令
第三節 作戦計画
マルクス・プラン/ロスベルク・プラン/「バルバロッサ」作戦
■第二章 敗北に向かう勝利
第一節 大敗したソ連軍
驚異的な進撃/実情に合わなかったドクトリン/センノの戦い/自壊する攻撃
第二節 スモレンスクの転回点
「電撃戦」の幻/ロシアはフランスにあらず/消耗するドイツ軍/「戦争に勝つ能力を失う」/隠されたターニング・ポイント
第三節 最初の敗走
戦略なきドイツ軍/時間は浪費されたのか?/「台風」作戦/二度目の世界大戦へ
■第三章 絶滅戦争
第一節 対ソ戦のイデオロギー
四つの手がかり/ヒトラーの「プログラム」/ナチ・イデオロギーの機能/大砲もバターも/危機克服のための戦争
第二節 帝国主義的収奪
三つの戦争/東部総合計画/収奪を目的とした占領/多元支配による急進化/「総統小包」
第三節 絶滅政策の実行
「出動部隊」の編成/「コミッサール指令」/ホロコーストとの関連/餓えるレニングラード
第四節 「大祖国戦争」の内実
スターリニズムのテロ支配/ナショナリズムの利用/パルチザン/ソ連軍による捕虜虐待
■第四章 潮流の逆転
第一節 スターリングラードへの道
ソ連軍冬季攻勢の挫折/死守命令と統帥危機/モスクワか石油か/「青号」作戦/妄信された勝利/危険な両面攻勢/スターリングラード突入/ネズミの戦争
第二節 機能しはじめた「作戦術」
「作戦術」とは何か/「赤いナポレオン」の用兵思想/ドイツ東部軍の潰滅を狙う攻勢/解囲ならず/第六軍降伏/戦略的攻勢能力をなくしたドイツ軍
第三節 「城塞」の挫折とソ連軍連続攻勢の開始
「疾走」と「星」/「後手からの一撃」/暴かれた実像/築かれていく「城塞」/必勝の戦略態勢/失敗を運命づけられた攻勢/「城塞」潰ゆ
■第五章 理性なき絶対戦争
第一節 軍事的合理性の消失
「死守,死守,死守によって」/焦土作戦/世界観戦争の肥大化/軍事的合理性なき戦争指導
第二節 「バグラチオン」作戦
戦後をにらむスターリン/「報復は正義」/攻勢正面はどこか/作戦術の完成形
第三節 ベルリンへの道
赤い波と砂の城/「共犯者」国家/ドイツ本土進攻/ベルリン陥落/ポツダムの終止符
終章 「絶滅戦争」の長い影
複合戦争としての対ソ戦/実証研究を阻んできたもの/利用されてきた独ソ戦史
文献解題
略称,および軍事用語について
独ソ戦関連年表
おわりに
Author
大木 毅 Takeshi Oki
1961年生まれ.立教大学大学院博士後期課程単位取得退学(専門はドイツ現代史,国際政治史).千葉大学ほかの非常勤講師,防衛省防衛研究所講師,陸上自衛隊幹部学校講師などを経て,現在,著述業.
著書に『 「砂漠の狐」ロンメル』(角川新書,2019),『ドイツ軍事史』(作品社,2016)ほか.訳書にエヴァンズ『第三帝国の歴史』(監修.白水社,2018─),ネーリング『ドイツ装甲部隊史1916─1945』(作品社,2018),フリーザー『「電撃戦」という幻』(共訳.中央公論新社,2003)ほか.
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