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主体と存在、そして所有。著者の重ねる省察は、われわれを西欧近代的思惟が形成してきた「鉄のトライアングル」の拘束から解き放つ。
「ほかならぬこのわたし」がその身体を労して獲得したものなのだから「これはわたしのものだ」。まことにもっともな話に思われる。しかし、そこには眼には見えない飛躍があるのではないか……?
ロックほか西欧近代の哲学者らによる《所有》の基礎づけの試みから始め、譲渡の可能性が譲渡不可能なものを生みだすというヘーゲルのアクロバティックな議論までを著者は綿密に検討する。そこで少なくともあきらかにできたのは、「所有権(プロパティ)」が市民一人ひとりの自由を擁護し、防禦する最終的な概念として機能しつつも、しかしその概念を過剰適用すれば逆にそうした個人の自由を損ない、破壊しもするということ。そのかぎりで「所有権」はわたしたちにとって「危うい防具」だという根源的な事実である。
主体と存在、そして所有。著者の重ねる省察は、われわれを西欧近代的思惟が形成してきた「鉄のトライアングル」の拘束から解き放ち、未来における「手放す自由、分ける責任」を展望する。
[出版社より]
著 者|鷲田清一
出版社|講談社
定 価|3,000円+税
判 型|四六版/上製
頁 数|576
ISBN|978-4-06-534272-5
刊 行|2024年02月
Contents
だれのもの?
所有と固有
ロックの問題提示
所有と労働
糧と労働
身体という生地
法と慣行
関係の力学
所有権とそのあらかじめの剥奪
所有と譲渡可能性
人格と身体の連帯性の破棄
演戯と所有
所有をめぐる患い
解離
清潔という名の強迫
“棄却”から“本来性”へ
直接性をめぐって
空白のトポス?
形式的なものと自己関係性
制度から相互行為へ
“受託という考え方”
“共”の縮滅
共にあることと特異であること
“場所”と“死”と
所有と固有、ふたたび
危うい防具
Author
鷲田 清一 Kiyokazu Washida
1949年京都生まれ、哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。大阪大学文学部教授などを経て、大阪大学総長(2007~2011年)。2015~2019年、京都市立芸術大学理事長・学長。現在はせんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。医療や介護、教育の現場などに哲学の思考をつなぐ臨床哲学を提唱・探求する。朝日新聞一面に「折々のことば」を連載。『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』(ちくま学芸文庫、桑原武夫学芸賞)、『「ぐずぐず」の理由』(角川選書、読売文学賞)など著書多数。
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