ミシェル・フーコー(一九二六―八四)は顔を持たない哲学者だ.今の自分にとって「正しい」とされることを徹底的に疑いぬき,自己を縛り付けようとする言説に抗い,危険を冒してでも常に変化を遂げようとした.だからこそ彼の著作は,一冊ごとに読者を新たな見知らぬ世界へと導いていく.その絶えざる変貌をたどる.
[出版社より]
著 者|慎改康之
出版社|岩波書店
定 価|820円+税
判 型|新書判
頁 数|206
ISBN|9784004318026
初版|2019年10月
Contents
序章 顔を持たぬために書くこと
フーコーとは誰か/自分自身からの離脱/本書の構成/フーコーは何を為したのか
第一章 人間学的円環――『狂気の歴史』とフーコーの誕生
1 心理学と人間学――「前フーコー的」テクスト
心理学者フーコー/夢と実存/疎外と脱疎外/人間学的思考
2 理性,狂気,病――『狂気の歴史』
新たな問い/理性と狂気/監禁制度の創設/狂気と病
3 狂気と人間の真理――人間学の問題化
人間学的公準/有限性の傷痕/人間学的錯覚目
第二章 不可視なる可視性――『臨床医学の誕生』と離脱のプロセス
1 疎外された狂気――人間学的思考の残滓
狂気それ自体/沈黙の考古学/狂気の疎外/悲劇的構造
2 近代医学の成立――『臨床医学の誕生』
医学的視線の考古学/臨床医学から病理解剖学へ/表層と深層,生と死
3 終わりのない任務――離脱の決定的契機
不可視なる可視性/暴露と隠蔽/ネガティヴなものの力/事物の暗い核
第三章 人間の死――『言葉と物』
1 無限と有限――現象学との対決
有限性をめぐる逆転/有限性と現象学/フーコーと有限性
2 エピステーメーとその変容――類似,表象,人間
類似の解読から表象の分析へ/「人間」の不在/深層の発明/客体の越えがたい厚み
3 人間と有限性――人間学の陥穽
「人間」の登場/有限性の分析論/人間学の眠り
第四章 幸福なポジティヴィスム――『知の考古学』
1 主体,構造,歴史――歴史をどう書くか
構造主義/映画と幻灯/人間学からの解放/「考古学」の定義
2 連続的歴史――主体の避難所
歴史と主体/幾何学の起源/科学の統一性/歴史的アプリオリ
3 解釈――「再我有化」の努力
あらゆる解釈の外/再我有化/解釈と稀少性/視線の転換
第五章 「魂」の系譜学――『監獄の誕生』と権力分析
1 言説と権力――『言説の領界』
言説の稀少化/逆転の原則/GIPとコレージュ講義
2 監視と処罰――『監獄の誕生』
「君主権的権力」から「規律権力」へ/パノプティコン/権力と知
3 身体の監獄――自己を自己自身に繫ぎ止める権力
非行者と非行性/監獄の成功/魂と裁判権力/権力と「人間」
第六章 セクシュアリティの歴史――『性の歴史』第一巻『知への意志』
1 性と言説――煽動する権力
性の歴史という企図/抑圧の仮説/告白
2 従属化――主体であると同時に臣下である者の産出
「同性愛」の誕生/主体の学/戦術上の逆転/「従属化」との闘い
3 生権力――「生かすか,それとも死ぬに任せておくか」
身体と「人口」/性と生/統治の技法
第七章 自己をめぐる実践――『性の歴史』第二~四巻と晩年の探究
1 新たな離脱――同じままであり続けぬために
いくつかの出来事/欲望の解釈学/別のやり方で思考すること
2 欲望する主体の系譜学――新たな『性の歴史』
『性の歴史』の再編成/生存の美学/自己への専心/欲望と主体
3 自己の技術――晩年のコレージュ・ド・フランス講義
自己への配慮と自己認識/自己と真理/パレーシア
終章 主体と真理
あとがき
参考文献
略年譜
Author
慎改康之 Yasuyuki Shinkai
1966年長崎県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程中途退学。フランス社会科学高等研究院(EHESS)博士課程修了。現在明治学院大学文学部フランス文学科教授.20世紀フランス思想.
著書に『フーコーの言説――〈自分自身〉であり続けないために』(筑摩選書),『現代フランス哲学に学ぶ』(共著,放送大学教育振興会)など。訳書にミシェル・フーコー『言説の領界』『知の考古学』(河出文庫),『ミシェル・フーコー講義集成』1・4・5・8・13(筑摩書房)など。
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