プロパガンダの文学——日中戦争下の表現者たち
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文学は芸術表現なのか、それとも軍・官の情報を宣伝・拡散するツールにすぎないのか? 1937年7月に勃発した日中戦争下のさまざまな資料を駆使して、軍による報道・宣伝・検閲の実態に肉薄し、火野葦平や石川達三ら従軍作家の《書法》を読みとく。ブックデザイン=宗利淳一。
「現在の議論の地平でも、「文学は戦争に拮抗できるのか」という問いが立てられることがある。だが、あえて厳しい言い方をするが、戦時下における文学者の個人的な責任のみを問題化する姿勢は、問題を個々の書き手に帰責することで、文学というジャンル自体を無垢で非=政治的な言説領域として免責し、そのようなものとして文学を延命させることにつながりかねない。もし文学言説の対抗的な可能性について言及したいなら、過去の文学が、その名前において何をしてきてしまったかという問題から目を背けてはならないとわたしは思う。〔……〕むしろ、「紙の上」にこそ、どんな言葉で、何を、どのように書きつけていくかというレベルにこそ、テクストという名の戦場があるはずだ」——「はじめに」より
[出版社より]
著 者|五味渕典嗣
出版社|共和国
定 価|4,200円+税
判 型|四六判/上製
頁 数|448
ISBN|978-4-907986-45-2
発 行|2018年05月
Contents
はじめに
1. 本書の視角
2. 対象・方法・議論の射程
3. 本書の構成
第1章 プロパガンダとしての文学:戦記テクストの情報戦争
1. 交差するテクスト
2.「生きてゐる兵隊」事件の問題性
3. プロパガンダとしての『麦と兵隊』
4. 戦記テクストの情報戦争
第2章 文学・メディア・思想戦:〈従軍ペン部隊〉の歴史的意義
1.〈従軍ペン部隊〉とは何だったのか
2. 武漢作戦の宣伝戦略
3. 思想戦と文学者
4.〈従軍ペン部隊〉の歴史的意義
第3章 戦場を書く文体:戦記テクストの戦場表象
1. 問題の所在
2. 戦場を書く文体
3. 制約と変形
4. テクストの破綻
第4章 スペクタクルの残余:戦記テクストにおける想像力の問題
1. 禁じられた記憶
2. 記憶の動員
3. スペクタクルの残りのもの
第5章 曖昧な戦場:戦記テクストにおける他者の表象
1.〈敵の顔〉の不在
2. 戦場の教養小説
3. 戦場と〈人間性〉
4.〈われわれ〉の中の断層
第6章 言語とイメージのあいだ:プロパガンダをめぐる思考空間
1. 言語とイメージのあいだ
2.〈思想戦=宣伝戦〉論の問題構成
3. 内攻する「思想戦」
4. 戦時体制下の言説管理
第7章 中国の小林秀雄:戦争と文学者
1. 問題の所在
2. 文学(者)の領土
3. それぞれの戦場
4. 友情の効用
第8章 歴史に爪を立てる:金史良「郷愁」を読む
1. 問題の所在
2. 帝国の総力戦
3. 親日と反日
4. 金史良「郷愁」に響く声
5. テクストという名の戦場
おわりに 坂口安吾の一二月八日
注
[附録] 日中戦争期戦記テクスト関連略年表
あとがき
Author
五味渕 典嗣 Noritsugu Gomibuchi
1973年、栃木県生まれ。大妻女子大学文学部教授。慶應義塾大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門は、近現代日本語文学・文化研究。
単著に、『言葉を食べる――谷崎潤一郎、1920~1931』(世織書房、2009年)、『谷崎潤一郎読本』(共編、翰林書房、2016年)、『漱石辞典』(共編、翰林書房、2017年)などがある。