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個体としての「私」が雑多な現実の中でどのように普遍・倫理と出会うのか。九鬼周造の「偶然性」を、西洋哲学との関連性や位置づけも整理しながら、感性ではなく論理的帰結として確立した哲学に昇華させた近年随一の明晰な九鬼論。
[出版社より]
著 者|宮野 真生子
出版社|堀之内出版
定 価|4,000円+税
判 型|四六判/上製
頁 数|328
ISBN|978-4-909237-42-2
初版|2019年9月
Contents
はじめに
第一部 九鬼哲学の来歴
序 章 九鬼哲学を考えるための準備作業
第一節 九鬼哲学研究への視点
第二節 近代日本哲学の問題圏―生と論理―
第三節 九鬼哲学の根本問題
第一章 「哲学」とは何か
第一節 ヴィンデルバントの学問論と「偶然論(Die Lehre vom Zufall)」
1.新カント派の位置づけ
2.ヴィンデルバント「自然科学と歴史」における二つの学的方法
3.「偶然論(Die Lehre vom Zufall)」
第二節 九鬼周造の「人間観」と「哲学」
1.「人間学とは何か」
2.「哲学私見」における哲学観
第三節 『偶然性の問題』から考える九鬼哲学の問題設定
1.偶然性とは何の問題なのか
2.『偶然性の問題』概要
3.偶然性をいかに扱うべきか
第二部 存在論理学としての九鬼哲学
第二章 「存在論理学」への道
第一節 人間の現実と哲学―「講義 偶然性」―
第二節 存在と無をめぐる問題系
第三節 「文学概論」における問題の発見
第四節 存在論理学の狙い
1.ハイデガー『存在と時間』からの影響
2.「哲学私見」から見る存在論理学の全体像
第三章 「存在論」と「様相論理」―ニコライ・ハルトマンの批判的受容―
第一節 新たなる様相論理へ
1.様相性の三体系
2.ハルトマンにおける存在論的現実性
3.九鬼のハルトマン批判
第二節 ハルトマンの「存在論」と「様相論理」
1.『存在論の基礎付け』から見るハルトマンの存在論
2.『可能性と現実性』における様相分析
3.ハルトマンの問題点
第四章 「存在論理学」とは何か
第一節 存在形態と存在様相
第二節 現実と様相
第三節 現実の生産点としての偶然性
第五章 存在論と実存論的分析―ハイデガーからの影響―
第一節 第一の批判―実存論的視点から
1.実存をめぐる問題設定
2.『存在と時間』へのまなざし
3.偶然性という結び目
第二節 第二の批判―存在論的視点から
1.「現在」をいかに捉えるか
2.他と出会うことと超越の構造
3.なぜ、「出会いの今」を重視するのか
第三部 偶然を生きる倫理を目指して
第六章 偶然性の形而上学と個体論
第一節 田辺元・九鬼周造往復書簡からみる問題の所在
1.九鬼周造博士論文「偶然性」
2.往復書簡における二つの批判
第二節 初期田辺における偶然性と合目的性
第三節 『偶然性の問題』における個体性の真相
1.分裂する形而上的絶対者と個体
2.「個物の起源」と他者との出会い
第七章 偶然と選択、あるいは運命について
第一節 田辺元における個体と偶然性
1.生成する身体と現在の動性
2.「社会存在の論理」から考える「個体」と九鬼偶然論の問題点
3.「社会存在の論理」における個体の行方
第二節 運命を生きるとはどういうことか?
1.『マラルメ覚書』における絶対偶然
2.偶然性を生きるという選択をめぐって
3.九鬼周造の運命論
第八章 偶然性の倫理とは何か
第一節 二つの間柄論
1.「私である」ということ
2.「私がある」ということ
第二節 実存と「がある」「である」こと
1.二つの「存在」と「実存」
2.「この私がある」とはどういうことか?
第三節 九鬼と和辻の交差する地点
1.日常における「私がある」ことの唯一性とは何か
2.「やましさ」という倫理
結論
引用文献リスト
九鬼周造関係年譜
追悼―あとがきに代えて 伊藤徹
Author
宮野 真生子 Makiko Miyano
福岡大学人文学部准教授。一九七七年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか』(ナカニシヤ出版、二〇一四年)、共著に『急に具合が悪くなる』(晶文社、二〇一九年)、『愛・性・家族の哲学』シリーズ全三巻(ナカニシヤ出版、二〇一六)。論文に「九鬼周造の存在論理学」(『西日本哲学年報』第19号、二〇一一年、西日本哲学会若手奨励賞受賞)、「個体性と邂逅の倫理―田辺元・九鬼周造往復書簡から見えるもの」(『倫理学年報』第55集、二〇〇六年、日本倫理学会和辻賞受賞)、他。
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