SOLD OUT
今後、大切な能力は何? 未来の大学入試とは? 英語教育は本当に必要? 世代を超えて伝えたい教育の「本質」を綴る。巻末に22世紀のための問題集付き。『本』連載を書籍化。
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教育とは、わからない未来を予想して、あるいは来るべき未来社会を予想して、「子どもたちに生きるための能力を授ける」という、いささか無謀な行為である。
それでも20世紀前半くらいまでは、その予想は、ある程度可能だったかもしれない。
たとえば自分の息子が、自分のあとを継いで漁師になることが確実にわかっていれば、その子には、船の動かし方、釣り具や網の整備の仕方、天候の予測のための知識、万が一の時の泳ぎ方といったことを教えておけばよかった。
しかし、いま私たちが直面しているのは、おおよそ以下のような問題である。
・まず、その子が、どんな職業に就くかまったく予想できない。
・たとえ親が子どもを漁師にしたいと考えても、そもそも22世紀に漁師という仕事が
あるかどうかがわからない。
・さらに、たとえ漁師という仕事が生き残ったとしても、そこで必要とされる
能力について予想がつかない。
・それは、漁業ロボットを操作する能力かもしれない。漁から販売までを一元化し、六次産業化していくコーディネート力かもしれない。あるいは、養殖の技術や
遺伝子組み換えについての研究こそが、漁師の本分となるかもしれない。
・私が暮らす兵庫県豊岡市の隣町、カニ漁で有名な香美町では、多くのインドネシア人が
漁業実習生として漁に携わっている。もしかすると、これからの漁師に必要な能力は
インドネシア語の習得や、イスラムの習慣への習熟かもしれない。
本書の中で、私は「教育」について考えていきたいと思う。
2020年の大学入試改革など、教育の大きな転換期を前に、私のこれまでの考えを、
ひとつにまとめて記しておくのも、本書の狙いの一つである。
[出版社より]
著 者|平田オリザ
出版社|講談社[講談社現代新書]
定 価|860円+税
判 型|新書判
頁 数|256
ISBN|9784065190982
初版|2020年03月
Contents
序 章 未来の漁師に必要な能力は何か?
第1章 未来の大学入試(1)
第2章 未来の大学入試(2)
第3章 大学入試改革が地域間格差を助長する
第4章 共通テストは何が問題だったのか?
第5章 子どもたちの文章読解能力は本当に「危機的」なのか?
第6章 非認知スキル
第7章 豊岡市の挑戦
終 章 本当にわからない
付 録 22世紀のための問題集
Author
平田オリザ Oriza Hirata
1962年東京都生まれ。東京藝術大学COI研究推進機構特任教授。大阪大学COデザインセンター特任教授。「東京ノート」で岸田國士戯曲賞を受賞。
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