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なぜ人はものをつくるのか──。
文化人類学、ジェンダー研究、美術・工芸史、ファッション研究…さまざまな視点から、いちばん身近なものづくり=「手芸」の輪郭をあぶり出す。
「つくる」「教える」「仕分ける」「稼ぐ」「飾る」「つながる」の6つのアプローチで迫る、はじめての手芸論。
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かつて「女らしさ」や「素敵な家庭」といった価値と結びつけられていた手芸も、いまや従来の概念を超え、世界各地で余暇的・趣味的な仕事として多様な展開をみせている。それらは男性も担い手に含み、アート、フェアトレード商品、エスニック雑貨などとして美術や市場の領域にも進出している。
また手軽なキットやインターネット上のハンドメイドマーケットの登場により、誰でもつくれて誰でも売れる環境となっているのが、現代の手芸をめぐる状況である。
さらに趣味を通じた人的ネットワークの形成や、それらの災害後におけるケアとしての機能なども注目を集めている。
これまで批評・研究の世界で取り上げられてこなかった未開拓の分野=「手芸」について、
「つくる」「教える」「仕分ける」「稼ぐ」「飾る」「つながる」の6 つのテーマから迫る、画期的な一冊。
[出版社より]
編 者|上羽陽子・山崎明子
出版社|フィルムアート社
定 価|2,400円+税
判 型|四六判/並製
頁 数|312
ISBN|978-4-8459-1911-6
初版|2020年09月
Contents
序論:「手芸的なるもの」を探る 上羽陽子
1章 つくる
論考:「手芸」と技術
──「つくること」に与えられた社会的意味 山崎明子
コラム:手芸的なるものにつき動かされる男子にとって、手芸とは何か? 中谷文美
手芸でない織物・手芸である織物 金谷美和
つくりたくないものは、つくりたくない 上羽陽子
座談会:つくる×技術
2章 教える
論考:手芸空間の同床異夢
──何のために教えるのか/何のために習うのか 杉本星子
コラム:伝えられる知識と伝えられない知識 新本万里子
“アイヌ文様刺繍”を教える 齋藤玲子
芸術へとひらかれる学び ひろいのぶこ
座談会:教える×伝承
3章 仕分ける
論考:手芸とファッションから美術史を描き直す 蘆田裕史
コラム:「工芸」と「手芸」の仕分けの現場 木田拓也
モノから探るネパールの「手芸」 南真木人
私の制作と手芸 野田凉美
南アジアの美術作家が用いる「工芸・手芸」イメージ 五十嵐理奈
座談会:仕分ける×アイデンティティ
4章 稼ぐ
論考:商品化する手芸
──「手芸」から「ハンドメイド」へ 木田拓也
コラム:近代アメリカ女性に見る針仕事と階級の関わり 平芳裕子
ハンドメイド、「人気」と「稼ぎ」の向かう先 村松美賀子
中国・モンの衣装を商売にする 宮脇千絵
座談会:稼ぐ×社会階層
5章 飾る
論考:女が住まいを飾るとき
──手芸の「過剰性」をめぐって 中谷文美
コラム:機能的な装飾 蘆田裕史
戦後の少女と手芸 山崎明子
隙間を埋める刺繍作業 上羽陽子
座談会:飾る×自己表現
6章 つながる
論考:手芸がつくる「つながり」と断絶 金谷美和
コラム:手芸と平和――そして小さい経済を考える 塩本美紀
団地の手芸 山崎明子
東日本大震災避難ママたちの「お裁縫会」 杉本星子
座談会:つながる×社会空間
Editor
上羽 陽子 Yoko Ueba
国立民族学博物館人類文明誌研究部・准教授。専門は染織研究。特にインドを対象として、つくり手の視点に立って染織技術や布の役割などについて研究。2007年に第4回木村重信民族藝術学会賞受賞。著書に『インド・ラバーリー社会の染織と儀礼──ラクダとともに生きる人びと』(昭和堂 2006年)、『インド染織の現場──つくり手たちに学ぶ』(臨川書店 2015年)、論文に「NGO商品を作らないという選択──インド西部ラバーリー社会における開発と社会変化」(『地域研究』10(2)(昭和堂 2010年)などがある。
山崎 明子 Akiko Yamasaki
奈良女子大学研究院生活環境科学系・教授。専門は視覚文化論、ジェンダー論。近現代の手芸文化をジェンダー視点から研究している。著書に『近代日本の「手芸」とジェンダー』(世織書房 2005年)、共編著『<妊婦>アート論:孕む身体を奪取する』(青弓社 2018年)、論文に「『ジュニアそれいゆ』にみる少女の手芸」神野由紀ほか編『趣味とジェンダー:<手づくり>と<自作>の近代』(青弓社 2019年)、「アイヌ文様に触発されて──山脇敏子と三宅喜久子」「アイヌ文化をめぐる表象の現在──「誰」が「何」を作るのか」池田忍編『問いかけるアイヌ・アート』(岩波書店 2020年)などがある。
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