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[増補]お砂糖とスパイスと爆発的な何か——不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
¥990
いつのまにか、「男子」の眼で観てない? ミス・マープルの本当のすごさや、文学史に輝く “キモくて金のないおっさん”を描いた名作、そして新時代のディズニーアニメの悪戦苦闘。あの名作が100倍面白くなり、見たい映画とドラマと本と舞台がどんどん増える、フェミニスト批評集がついに文庫化。 書き下ろし「どうもありがとう、パメラ・アンダーソン」を含む、型にはめない、はまらないものの見方を教えてくれる批評6本を増補してお届けします。 [出版社より] 著 者|北村紗衣 出版社|筑摩書房[ちくま文庫] 定 価|900円+税 判 型|文庫判[並製] 頁 数|368 ISBN|978-4-480-44008-2 発 行|2025年02月 Contents まえがき 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門 1 自分の欲望を知ろう さよなら、マギー ――内なるマーガレット・サッチャーと戦うために バーレスクってなんだろう? BL視点で読む『嵐が丘』 ――関係性のセクシーさを求めて 檻に入っているのは、犬じゃなくて私 ――ヴァージニア・ウルフ『フラッシュ』 女はなぜ悪い男にばかり引っかかるのか? ――『西の国のプレイボーイ』に見る良い男、悪い男 〈コラム〉初任給とヴァージニア・ウルフ 2 男らしさについて考えてみよう キモくて金のないおっさんの文学論 ――『二十日鼠と人間』と『ワーニャ伯父さん』 アメ車、男たちの絆、この惑星最後の美しき自由な魂 ――『バニシング・ポイント』 対等な女を怖がる男たち ――男の幻想に逆襲する喜劇『負けるが勝ち』 プリンセスは男のロマン! ――映画に出てくるお姫様と男たち ロマンティックな映画としての『ファイト・クラブ』 〈コラム〉発展を続けるバーレスク 3 ヒロインたちと出会おう シェイクスピア劇の魅惑のヒロイン、無限に変化する女王クレオパトラ 世紀末の悪女? 自己実現のため戦うヒロイン? ゲイのアイコン? ――オスカー・ワイルドの『サロメ』 べ、別にあんたのためにツンデレを分析してるわけじゃないんだからね! ――シェイクスピア『十二夜』を考える ディズニーに乗っ取られたシンデレラ ――民話の変貌をたどる 理想宮か、公共彫刻か? ――『アナと雪の女王』 〈コラム〉北米のシェイクスピア祭 4 わたしたちの歴史を知ろう 女の子がムラムラしてはいけないの? イギリス文学における女と性欲 「#女性映画が日本に来るとこうなる」の「女性映画」ってなに? ――変わりゆく女たちの映画 女性映画としてのトランスジェンダー女子映画 ――『タンジェリン』と『ナチュラルウーマン』 読書会に理屈っぽい男は邪魔? 女性の連帯を強める読書会の歴史を探る ミス・マープルは何でも知っている ――変わりゆくアガサ・クリスティの世界 〈コラム〉フェミニストの洋服えらび 5 ユートピアとディストピアについて考えよう 愛の理想世界における、ブス ――夢見るためのバズ・ラーマン論 隠れたるレズビアンと生殖 ――『わたしを離さないで』 父の世界からの解放 ――「フェミニスト的ユートピア」を描いた『バベットの晩餐会』 「女だけの街」を考える 女は自由な社会の邪魔者なの? ――ディストピアSFの性差別 〈コラム〉『ダウントン・アビー』と女性参政権運動 6 型にはめない、はまらない 『人魚姫』は何の話なのか? ――『リトル・マーメイド』の原作に戻る ビ ートルズが歌う「ボーイズ」はなぜ面白いか ――歌手のジェンダーと歌詞のジェンダーステレオタイプ ハリー・ポッターとイギリス文学における同性愛 ――『ハリー・ポッターと死の秘宝』精読 レズビアン死亡症候群、サイコレズビアン ――ステレオタイプなマイノリティ描写はなぜ問題? 発達障害と診断された私 ――ASDとADHDだとわかるまでに出会った本や映画について どうもありがとう、パメラ・アンダーソン 単行本版あとがき 批評家は探偵 文庫版あとがき お砂糖とスパイスの賞味期限 Author 北村 紗衣 Sae Kitamura 1983年生まれ。武蔵大学人文学部英語英米文化学科教授。専門はシェイクスピア、舞台芸術史、フェミニスト批評。ウィキペディアンとしても活動する。著書に『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち』(白水社)、『批評の教室』(ちくま新書)、『お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード』(文藝春秋)、『女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選』(書肆侃侃房)がある。
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あなたがいるから
¥3,960
2024年11月30日、相田冬二(Bleu et Rose)は書籍『あなたがいるから』を発刊いたしました。これは、1999年から2024年までに相田が劇場用パンフレットに寄稿した作品評101篇を収録したものです。全4章構成で、368頁。映画と歩んできた四半世紀をこの一冊に託します。 劇場用パンフレットは、相田が最も大切にしている媒体です。基本的に、映画をご覧になった方しか入手できず、また公開が終わるとほぼ入手できなくなる公式の冊子。映画館で販売され、映画のスーべニール(お土産)と呼んでいいこの存在に、こどもの頃から憧れてきました。パンフにレビウを執筆できることは、相田の誇りであり、毎回、その時点で持てる力をすべて投入してきたつもりです。 いま読むと至らない文章もありますが、それらを排除することはせず、ただ公開順に並べました。筆致には、変わった点と変わらない点いずれもがあります。そこも愉しんでいただければ幸いです。 永くお世話になっており心から信頼する編集者、森田真規さんに編集をお願いしました。この本は森田さんのプロデュース作品と言ってもよいと思います。また、森田さんと一緒に『なnD』というジンを10年以上にわたって作っておられるデザイナーの戸塚泰雄さんにデザインを手がけていただきました。さらに戸塚さんを通して、イラストレーターの箕輪麻紀子さんに表紙のイラストレーションを描いていただくことができました。一流のプロフェッショナル3人がコラボレートしたこの本は、わたしが個人的に「欲しいもの」として出来上がりました。本としての新しさ、みずみずしさ、豊潤さ、すべてがあるとおもいます。 ぜひ、あなたの許に置いてほしい。 [発行者より] 著 者|相田冬二 発 行|Bleu et Rose 定 価|3,600円+税 判 型|四六判・上製 頁 数|368 発 行|2024年11月 [限定300部] Contents まえがき *1 黄泉がえり アナーキー・イン・じゃぱんすけ ほとけ トーキョー×エロティカ 黄泉がえり 着信アリ 犬と歩けば チロリとタムラ たまもの カナリア イン・ザ・プール 好きだ、 ストロベリーショートケイクス 魂萌え! キサラギ アヒルと鴨のコインロッカー 転校生〜さよなら あなた 天然コケッコー ジャーマン+雨 全然大丈夫 マイ・ブルーベリー・ナイツ ジャージの二人 トウキョウソナタ レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン わたし出すわ スノープリンス 禁じられた恋のメロディ 半分の月がのぼる空 ブロンド少女は過激に美しく *2 生きてるものはいないのか ゴモラ 孤独な惑星 生きてるものはいないのか さめざめ ル・アーヴルの靴みがき それでも、愛してる ぼっちゃん だいじょうぶ3組 箱入り息子の恋 HOMESICK 潔く柔く きよくやわく ジ、エクストリーム、スキヤキ 神様のカルテ2 友だちと歩こう 東京戯曲 こっぱみじん 神さまの言うとおり 人の望みの喜びよ 極道大戦争 レヴェナント:蘇えりし者 ヒメアノ~ル マネーモンスター ふきげんな過去 ひと夏のファンタジア 白い帽子の女 何者 いたくても いたくても イノセント15 ハクソー・リッジ いつまた、君と ~何日君再来~ 祈りの幕が下りる時 欲望の翼 *3 バーニング 羊の木 去年の冬、きみと別れ ニワトリ★スター 名前 きみの鳥はうたえる 愛しのアイリーン 教誨師 台北暮色 バーニング 劇場版 慶州 ヒョンとユニ 泣くな赤鬼 劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん 蜜蜂と遠雷 あなたを、想う。 ひとよ ラストレター 影裏 水曜日が消えた あなたの顔 ステップ チィファの手紙 窮鼠はチーズの夢を見る モルエラニの霧の中 *4 四月になれば彼女は 海辺の金魚 サマーフィルムにのって 彼女はひとり 麻希のいる世界 イントロダクション 青春の殺人者 女神の継承 百花 夜を越える旅 あなたの微笑み チーム・ジンバブエのソムリエたち 日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜 ひとりぼっちじゃない リボルバー・リリー 台風クラブ まなみ100% めためた すべて、至るところにある 四月になれば彼女は あとがき
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ナチズムの美学——キッチュと死についての考察
¥1,210
ナチズムに民衆を魅了させた、意外なものの正体は何か。ホロコースト史研究の権威が第二次世界大戦後の映画・小説等を分析しつつ迫る。 ー 何によって民衆はナチズムに魅惑されたのか。 本書は、第二次世界大戦後につくられた映画・小説等を中心に言説分析を行うことにより、ナチスに魅入られた大衆心理の意外な正体を暴きだす。『地獄に堕ちた勇者ども』『リリー・マルレーン』『ブリキの太鼓』『ヒトラー、あるいはドイツ映画』等の作品中に、記憶と想像力によって再構成された第三帝国の姿。そこから照射されてくるのはキッチュと死という二要素の「完全な綜合」であり、それこそが第三帝国の美学の本質であると、ホロコースト研究の大家である著者は喝破する。ナチズム研究にいまなお影響を与え続ける古典的名著。 解説=竹峰義和。 [出版社より] 著 者|ソール・フリードレンダー 訳 者|田中正人 出版社|筑摩書房[ちくま学芸文庫] 定 価|1,100円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|256 ISBN|978-4-480-51161-4 発 行|2023年01月 Contents 序論 第1章 ナチズムの美学と言語―キッチュと神話と死 死と破壊のキッチュ アルカイックな伝説の世界 ほか 第2章 二つのヒトラー像―キッチュとニヒリズムの魅惑力 ヒトラーの個人生活の細部についての叙述 日常生活の細部と虚無の力との並置 ほか 第3章 悪魔祓いの諸形態―言語の麻痺と新たなディスクール 過去の無毒化ないし隠蔽としての悪魔祓い 歴史修正主義―意識的な悪魔祓い ほか 第4章 ナチズム解釈の問題点―綜合的視点の必要性 合理的・学術的解釈 全体主義論による解釈 ほか Author ソール・フリードレンダー Saul Friedlander 1932年プラハ生まれ。ナチスの迫害を逃れて少年時代にフランスへ移住。テル・アヴィヴ大学教授等を経て、UCLA名誉教授。専攻、ナチズム研究、ホロコースト研究。著作は多数あり、代表作の二部作Nazi Germany and the Jews: The Years of Persecution, 1933-1939(1997年)、 Nazi Germany and the Jews: The Years of Extermination, 1939-1945(2007年、ピュリッツァー賞)が特に知られる。 Translator 田中 正人 Masato Tanaka 1944年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士課程満期修了。専攻、フランス史・政治史。愛知大学名誉教授。
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ショットとは何か 歴史編
¥2,750
映画の未来は、革命の未来がそうであるように、きわめて不明確である。 批評史上の必読論文に最新時評、海外誌へ寄稿した“年間ベスト10(2001‐2023年他)を収録した超豪華版!書き下ろしラオール・ウォルシュ論、伝説のロマンチック・コメディー論「スクリューボールまたは禁止と奨励」、異色のレンフィルム=ソ連映画史「署名の変貌」、ロッセリーニのイタリア映画史からルノワール、ゴダール、オリヴェイラをめぐり、ライカート、黒沢清、濱口竜介の新作へ——。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社 定 価|2,500円+税 判 型|四六変型版/並製 頁 数|340 ISBN|978-4-06-534269-5 刊 行|2024年08月 Contents 映画の「未来」に向けて スクリューボールまたは禁止と奨励 ハリウッド30年代のロマンチック・コメディー オーソン・ウェルズはたえずフィルモグラフィーを凌駕しつづける 「黒さ」の誘惑 リタ・ヘイワースの曖昧さはいかにして「フィルム・ノワール」を擁護したか これは、「黄昏の西部劇」である以前に、映画の王道に位置づけらるべき作品である サム・ペキンパー監督『昼下りの決斗』 ロッセリーニによるイタリア映画史 ロベルト・ロッセリーニを擁護する 娘のイザベラを使って、ロッセリーニに『イタリア旅行』のリメイクを撮らせたくてならなかった ジャン・ルノワール論のために レマン湖の畔にて ゴダールにとっての―あるいは、ストローブにとっての―スイスについて 署名の変貌――ソ連映画史再読のための一つの視角 寡黙なるものの雄弁 ホー・シャオシェンの『戀戀風塵』 吹きぬける風のかなたに「黒衣の刺客」 タイプライターとプロジェクターに護られて ここでは、魂と肉体とが、奇蹟のように融合しあっている「アンジェリカの微笑み」 歳をとらずに老いるということの苛酷さについて ペドロ・コスタ『ホース・マネー』 このホークス的なコメディは、文字通りの傑作である ウェス・アンダーソン監督『犬ヶ島』 十字架 シャワー 濡れた瓦…… 『ヴィタリナ』をめぐってペドロ・コスタに訊いてみたい三つのことがら 抒情を排したこの寡黙な呟きに、ひたすら耳を傾けようではないか ―ケリー・ライカート小論― 黒沢清『スパイの妻』『蛇の道』 濱口竜介『悪は存在しない』 映画の「現在」に向けて ゴダールの『奇妙な戦争』に触れて思うこと 年間ベスト10 Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』『ショットとは何か』『ジョン・フォード論』他多数がある。
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ショットとは何か 実践編
¥2,750
「この書物には、その著者による『これこそ映画だ』という呟きがみちている」(あとがきより) 映画批評の最高峰と称されるグリフィス論、ヒッチコックのショット分析からゴダール、イーストウッド、侯孝賢、ヴェンダース論に書き下ろし「殺し屋ネルソン」論まで。単行本未収録作17本を収めた、蓮實映画批評ベスト・オブ・ベスト。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社 定 価|2,500円+税 判 型|四六変型版/並製 頁 数|384 ISBN|978-4-06-534269-5 刊 行|2024年03月 Contents 『殺し屋ネルソン』――あるいはこの上なく不自然な自然さについて 単純であることの穏やかな魅力 D・W・グリフィス論 防禦と無防備のエロス――「断崖」の分析/周到さからもれてくるもの ヒッチコックの『めまい』の一シーン分析 囁きと銃声 ルキノ・ヴィスコンティの『イノセント』 緋色の襞に導かれて ロベール・ブレッソンの『ラルジャン』 揺らぎに導かれて――グル・ダット讃―― エリック・ロメール または偶然であることの必然 透明な痛みのために 『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』 孤独と音響的宇宙 クリント・イーストウッドの西部劇 彷徨える断片の確かな痕跡について ジャン=リュック・ゴダール監督『イメージの本』 寡黙なイマージュの雄弁さについて――侯孝賢試論―― 静穏な透明さを超えて――エドワード・ヤン監督『クーリンチェ少年殺人事件』 ガラスの陶酔――ヴィム・ヴェンダース論 「撮る」ことの成熟、あるいはその理不尽な禁止について――『アネット』をめぐって 「冒険」について――ペドロ・コスタ試論―― 『燃える平原児』 見るものから言葉という言葉を奪う この知られざる傑作について あとがき Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』『ショットとは何か』『ジョン・フォード論』他多数がある。
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眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』
¥1,430
SOLD OUT
ドゥルーズ哲学の創造の原理が、『シネマ』の緻密かつ明快な読解から明かされる。映画という芸術の新しさは、いかにして哲学の新しさへと跳ね返るのか?ドゥルーズに伏在する「言葉と物」の二元論から、今世紀の日本の批評を導いてきた「否定神学批判」の限界に迫る、『非美学』の著者のデビュー作が文庫化。黒嵜想、山本浩貴(いぬのせなか座)との解説座談会を追加収録! [出版社より] 著 者|福尾匠 出版社|河出書房新社[河出文庫] 定 価|1,300円+税 判 型|文庫判/並製 頁 数|368 ISBN|978-4-309-42116-2 初 版|2024年08月 Contents 第1章 映画と哲学、ベルクソンとドゥルーズ 『シネマ』と映画;ベルクソンにおけるイメージと運動 ほか 第2章 運動イメージ―感覚‐運動的に思考する映画 運動イメージの分化―宇宙の構築 運動イメージの種別化―主観性の物質的アスペクト ほか 第3章 運動と時間 運動から時間へ?―ランシエールの『シネマ』批判をめぐって 零次性としての知覚イメージ―物の知覚 ほか 第4章 第一、第二の時間イメージ―視‐聴覚的に思考する映画 結晶イメージの境位―知覚と記憶の同時性 過去の共存と現在の同時性―「脳」と「宇宙」の新しい意味 ほか 第5章 第三の時間イメージ―ひとつのおなじ結論の三つの異なるバージョン 私に身体を与えてください―瞬間に持続を導入する 偽なるものが力能になるとき―『シネマ』の物語論 ほか Author 福尾 匠 Takumi Fukuo 1992年生まれ。哲学者、批評家。博士(学術)。著書に『非美学』、『眼がスクリーンになるとき』、『日記〈私家版〉』、共訳書にアンヌ・ソヴァニャルグ『ドゥルーズと芸術』がある。
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ユリイカ 2022年10月号 セリーヌ・シアマ
¥1,650
SOLD OUT
『秘密の森の、その向こう』9月23日公開。 女性監督初のカンヌ国際映画祭クィア・パルム受賞作である『燃ゆる女の肖像』(2019)が日本公開され大きな話題を呼んでから二年、来たる9月23日に最新作『秘密の森の、その向こう』(2021)が待望の公開となる。祖母、母、娘という三世代の女性が時空を超え出会うことで紡がれる物語において、視線はより複雑に交差しながら、互いを癒す力になってゆく。クィア映画の俊英はいまなにを見つめるか——セリーヌ・シアマのまなざしを追う。 [編集部より] 出版社|青土社 定 価|1,500円+税 判 型|A5変型判/並製 頁 数|238 ISBN|978-4-7917-0422-4 初 版|2022年09月 Contents 特集*セリーヌ・シアマ——『水の中のつぼみ』から『トムボーイ』『ガールフッド』『燃ゆる女の肖像』、そして『秘密の森の、その向こう』へ ❖インタビュー 映画の革命家、一五年の歩み / セリーヌ・シアマ(聞き手=児玉美月) ❖視線を紡ぐ 水平の美学——セリーヌ・シアマによる親密性の技法 / 菅野優香 セリーヌ・シアマのエレメント / 横田祐美子 ❖その物語の先へ 森で黒豹を放つ——映画『秘密の森の、その向こう』のこと / 川口晴美 タコは消えた / 山内マリコ ❖セリーヌ・シアマという眼差し 蛸の誕生——『水の中のつぼみ』における「クィア」な少女たちと同性愛の脱ロマンティック化 / 宮本裕子 『トムボーイ』論——ジェンダーの名乗りと引き受け、そしてその処罰あるいはクィアな時間の可能性/ 古怒田望人/いりや 『ガールフッド』あるいはガールズ・イン・ザ・フッド / 上條葉月 書かれなかった歴史を描きなおす——セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』 / 小澤京子 ❖マンガ 描く女の肖像——『燃ゆる女の肖像』によせて / やまじえびね ❖対談 喪失と癒しの物語——『秘密の森の、その向こう』をめぐって / 斉藤綾子×長島有里枝 ❖水平と円環 慰め、癒やし、回復するための「共助」——『秘密の森の、その向こう』におけるケアの描かれ方 / 関根麻里恵 娘と母の、味蕾の向こう——『秘密の森の、その向こう』にみる少女たちの食事 / 久保 豊 おもちゃ箱の奇跡——子どもについての新たな物語 / 原田麻衣 薄明かりの空き地 / 今村純子 ❖イラスト 消失点の消失 / もぐこん ❖スクリーンを見つめて 哀しみにさえ辿り着けないこの場所で / 戸田真琴 あなたも、私も、誰も悪くない / 枝 優花 ❖変容の輪郭 アクトリスとズッキーニ——セリーヌ・シアマと「女優」のゆくえ / 田村千穂 音楽へ「新たに加わること」をめぐって——セリーヌ・シアマ監督作品における踊ること、歌うこと、聴くこと / 辻 佐保子 脚本家としてのセリーヌ・シアマ——『水の中のつぼみ』から『パリ13区』に至る、未来を創造する試み / 上原輝樹 ❖資料 セリーヌ・シアマ主要作品解題 / 児玉美月 ー ❖忘れられぬ人々*12 故旧哀傷・太田一郎 / 中村 稔 ❖物語を食べる*21 豚は知性的な生き物である / 赤坂憲雄 ❖詩 眠船 / 青柳菜摘 ❖今月の作品 渋井孔太・立一 祐・江田つばき / 選=大崎清夏 ❖われ発見せり 勢いが気になる / 指田菜穂子 表紙・目次・扉……北岡誠吾 表紙図版……『秘密の森の、その向こう』9月23日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー ©︎2021 Lilies Films / France 3 Cinéma 配給:ギャガ
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シモーヌ VOL.4 アニエス・ヴァルダ
¥1,540
1954年の第一作から2019 年の遺作まで、フランスを代表する映画監督として、生涯現役で数多くの作品を撮り続けたアニエス・ヴァルダ(1928-2019)の映画人生と哲学をフェミニズム視点で学び直す一冊。 2015 年にカンヌ国際映画祭でパルムドール名誉賞、2017年にはアカデミー名誉賞を受賞(どちらも女性の映画監督としては初)した、ヌーヴェル・ヴァーグ唯一の女性映画作家。2018年のカンヌでは、映画に携わる82名の女性たちとレッドカーペットを歩き、業界の男女格差是正を訴える抗議声明を読み上げた。「ジャック・ドゥミの妻」、「ヌーヴェル・ヴァーグの祖母」だけではない、ヴァルダ独自のフェミニスト美学をさまざまな作品を通して追究する。 [編集部より] 出版社|現代書館 定 価|1,400円+税 判 型|A5判・並製 頁 数|140 ISBN|978-4-7684-9104-1 初 版|2019年11月 Contents 【特集 アニエス・ヴァルダ】 ・楠本まき アニエス・ヴァルダへの手紙 ・アニエス・ヴァルダ/相川千尋訳 トロントについての覚え書き(1974年) ・斉藤綾子 女が流離うとき:ヴァルダのシネエクリチュールと抵抗の意味 ・林瑞絵 アニエス・ヴァルダと二つのフェミニズム映画 ・菅野優香 最愛の夫 ヴァルダの「ドゥミ映画」を読む ・園山水郷 アニエス・ヴァルダ 変革の時代を生きた証として ・小林美香 写真の目線で読み解くアニエス・ヴァルダの映画作品 ・飛幡祐規 小さき存在を拾う映像詩人 ・ミニコラム寄稿 松田青子、福岡南央子、野中モモ ・ヴァルダをめぐる旅 ・ヴァルダ・ストーリー ・フィルモグラフィー 【特集2 映画界のハラスメントを考える】 UPLINK Workers' Voices Against Harassment 多様で公正な世界を映し出すために 【オンラインイベントレポート】 荒井裕樹×石川優実×伊是名夏子×松波めぐみ 障害者の声はワガママなの? 【寄稿】 ・中村桃子 世界の女性は『女ことば』を話す ・井谷聡子 オリンピック問題からジェンダーを考える 【連載】 ・アトランさやか ・インベカヲリ★ ・江戸川ずるこ ・小野春 ・栗田隆子 ・SAW & LAW(漫才コンビ) ・高島鈴 ・二三川練 ・書店からはじまるフェミニズム(沖縄くじらブックス/渡慶次美帆) ・フェミニズム勉強会#猫研 ・シネマレビュー(浅野百衣) ・シモーヌブックガイド
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お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード——ジェンダー・フェミニズム批評入門
¥1,760
SOLD OUT
貞淑という悪徳、“不真面目な”ヒロインたち、不条理にキラキラのポストモダン、結婚というタフなビジネス……。 「男らしさ」「女らしさ」の檻を解き放て! 注目の批評家が贈る〈新しい視界がひらける〉本 ・ジュリエットがロミオにスピード婚を迫った訳とは? ・フェミニズムと優生思想が接近した危うい過去に学ぶ ・パク・チャヌク映画『お嬢さん』の一発逆転!〈翻案の効用〉とは ・『マッドマックス』の主人公がもつケアの力と癒やし ・「マンスプレイニング」という言葉はなぜ激烈な反応を引き起こすのか……etc. 閉塞する現代社会を解きほぐす、鮮烈な最新批評集! [出版社より] 著 者|北村紗衣 出版社|文藝春秋 定 価|1,600円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|288 ISBN|978-4-16-391560-9 初 版|2022年06月 Contents プロローグ:ザ・マスタープラン フェミニストの鍵貸します あの服が着てみたいけど…素敵なドレスの誘惑と抑圧 スモームのBB、スタイネムのマリリン——フェミニストが愛したセックスシンボルたち ありがとう、ミス・オルセン——『アパートの鍵貸します』 フェミニズムと優生思想が接近した「危うい過去」から学べること——未来を見据えたフェミニストになるため ほか 時をかけるヒロイン 女の子のためのおバカ映画——不真面目なヒロイン映画の系譜 反恋愛映画としての『ハーレイン・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』 ほか 男たちのデス・ロード なぜ、説教したがらない男たちも「マンスプレイニング」と言われると驚くのか?——言葉が持つ力を考える 男の子はいかにして「男らしさの檻」に入れられるのか——自由は実は自由じゃない ほか 結婚というタフなビジネス ジェーン・オースティンとジョージ・ムアのヒロインたち シェイクスピア劇のカップルたち スピード婚の背景とは? ほか めぐりあう女たち 私たちは帝国だったんだけど、とはいえ私はストームトルーパーにすらなれないかもしれない——『スター・ウォーズ』とファンガール あしながおばさんとシンデレラ——『SKIN/スキン』における女性 ほか Author 北村 紗衣 Sae Kitamura 1983年、北海道士別市生まれ。専門はシェイクスピア、フェミニスト批評、舞台芸術史。東京大学の表象文化論にて学士号・修士号を取得後、2013年にキングズ・カレッジ・ロンドンにて博士号取得。現在、武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授。著書に『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち──近世の観劇と読書』 (白水社、2018)、訳書にキャトリン・モラン『女になる方法──ロックンロールな13歳のフェミニスト成長記』(青土社、2018)など。
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ジョン・フォード論
¥3,410
「古典的な西部劇の巨匠」というレッテルからジョン・フォードを解き放ち、画面そのものを見つめる快楽へとひたすら誘う――『監督 小津安二郎』と双璧をなす著者集大成。主要監督作の詳細なフィルモグラフィや貴重なスチール写真を多数収録。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|文藝春秋 定 価|3,100円+税 判 型|A5版/上製 頁 数|440 ISBN|978-4-16-391574-6 刊 行|2022年07月 Contents 序章 フォードを論じるために 第一章 馬など 第二章 樹木 第三章 そして人間 第四章 ―「囚われる」ことの自由― 第五章 身振りの雄弁 あるいはフォードと「投げる」こと 第五章 フォードを論じ終えぬために Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』他多数がある。
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ユリイカ 2022年03月号 アピチャッポン・ウィーラセタクン
¥1,650
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待望の長篇最新作『MEMORIA メモリア』3月4日公開。 タイに生まれ、とりわけ東北地方イサーンの記憶——精霊、民話、森——を写し続けてきた作家アピチャッポン・ウィーラセタクン。『ブリスフリー・ユアーズ』、『トロピカル・マラディ』、そしてタイ映画史上初のパルムドール受賞作『ブンミおじさんの森』に続く四度目のカンヌ国際映画祭受賞作となった『MEMORIA メモリア』では、南米コロンビアという“異郷の地”をいかに写したのか。いまこそ、アジアそして世界にとって最重要の映像作家に迫る。 [編集部より] 出版社|青土社 定 価|1,500円+税 判 型|A5変型判/並製 頁 数|253 ISBN|978-4-7917-0414-9 初 版|2022年02月 Contents 特集*アピチャッポン・ウィーラセタクン——『世紀の光』『ブンミおじさんの森』『光りの墓』、そして『MEMORIA メモリア』へ ❖インタビュー ぼく自身という家 / アピチャッポン・ウィーラセタクン 聞き手=福冨 渉 ❖映画と記憶 科学と神秘 / 佐々木 敦 アピチャッポンの耳、『MEMORIA メモリア』の音 / 長門洋平 記憶、儀礼、投影——アピチャッポン作品をつなぐ「アンテナ」 / 中村紀彦 よそものたちの記憶の旅——アピチャッポンのコロンビア / 新谷和輝 ❖共振する幻 Memoria——記憶の残響 / 清水宏一 シンクロニシティ / 久門剛史 「アピチャッポン・ウィーラセタクン 亡霊たち」の記憶 / 田坂博子 ❖不可視なるもの 横断するガイストの振動——アピチャッポン・ウィーラセタクンの霊性美術 / 伊藤俊治 異化されたゾミアの物語——アピチャッポン・ウィーラセタクン『真昼の不思議な物体』をめぐって / 石倉敏明 イサーンの森からの帰還——『ブンミおじさんの森』と精霊の民族誌 / 津村文彦 ❖芸術と政治 諦観からの応答——『世紀の光』を『光りの墓』の伏線として読む / 綾部真雄 アピチャッポンのカメラに写るもの、写らないもの / 足立ラーベ加代 新たなる二院制?——アピチャッポン作品における政治、科学、記憶 / 福島真人 ❖対談 未知なる〈映画〉との遭遇 / 富田克也×相澤虎之助 ❖光の地層 映画の神様なんかいらない——『MEMORIA メモリア』をめぐって / 福間健二 『光りの墓』を思い出す / 金子由里奈 今立っているその場所に、すでにある多世界——抵抗者としてのアピチャッポン・ウィーラセタクン試論 / 太田光海 無口な彫像たちの声をきく——《Fireworks(Archives)》の舞台から / 椋橋彩香 ❖巡り会うふたり Blissfully Yours——森と夢と2つの世界 / 夏目深雪 ゲイ・ロマンス、精霊、シャーマン、虎、フレンドリーな「おばさん」——『トロピカル・マラディ』の魅力を叫ぶ / 溝口彰子 タイ“クィア映画”天文図の素描——アピチャッポンを主星として / 児玉美月 ❖映画の旅路 タイ映画史にアピチャッポンは接続できるのか? / 石坂健治 アピチャッポン・ウィーラセタクンと実験映画 / 阪本裕文 スローシネマ、アピチャッポン、マジックリアリズム / 銭 清弘 ❖資料 アピチャッポン・ウィーラセタクン クロニクル / 中村紀彦 ー ❖忘れられぬ人々*5 故旧哀傷・岸薫夫 / 中村 稔 ❖物語を食べる*14 愛と痛みと恐怖が運命をひらく / 赤坂憲雄 ❖詩 三月日より / 山岡ミヤ ❖今月の作品 川窪亜都・秋葉政之・シーレ布施・江田つばき / 選=大崎清夏 ❖われ発見せり ワードローブから本棚へ / 赤阪辰太郎 表紙・目次・扉=北岡誠吾 表紙図版=『MEMORIA メモリア』©Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF/Arte and Piano, 2021.
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映像のポエジア 刻印された時間
¥1,540
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うちに秘めた理想への郷愁——。映画の可能性に応える詩的論理とは何か。映像の詩人がおよそ二十年に及ぶ思索を通し、芸術創造の意味を問いかける。 「それ独自の事実のフォルムと表示のなかに刻み込まれた時間――ここにこそ、私にとって芸術としての映画の第一の理念がある」。 その理念が有機的統一をもって結晶する〈イメージ〉。『惑星ソラリス』『鏡』『サクリファイス』など、生み出された作品は、タルコフスキーの生きた世界の複雑で矛盾に満ちた感情を呼び起こす。俳優や脚本のあり方をはじめとする映画の方法は、現代において涸渇した人間存在の源泉を甦らさんとする意図とともに追求された。戦争と革命の時代である二十世紀に、精神的義務への自覚を持ち続けた映画作家の思考の軌跡。 [出版社より] 著 者|アンドレイ・タルコフスキー 訳 者|鴻英良 出版社|筑摩書房[ちくま学芸文庫] 定 価|1,400円+税 判 型|文庫版/並製 頁 数|416 ISBN|978-4-480-51130-0 初 版|2022年07月 Contents 序 章 第一章 はじまり 第二章 芸術―理想への郷愁 第三章 刻印された時間 第四章 使命と宿命 第五章 映像について 第六章 作家は観客を探究する 第七章 芸術家の責任 第八章 『ノスタルジア』のあとで 第九章 『サクリファイス』 終 章 訳者あとがき 文庫版訳者あとがき 年譜・フィルモグラフィ Author アンドレイ・タルコフスキー Andrey Tarkovsky 1932-86年。ロシア(ソ連)の映画監督。ショットの中を流れる時間とそれを表現するリズムに注目し、独自の映像を創出。1984年に亡命。作品に『惑星ソラリス』『鏡』『ノスタルジア』など。映画は人間存在の精神的実在に迫れると確信しながら、映像を文明批評の水準に高めた。86年パリで客死。『サクリファイス』が遺作となる。 Translator 鴻英良 Hidenaga Otori 1948年生まれ。東京大学大学院修士課程ロシア文学専攻修了。演劇研究者。
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黄昏映画館 わが日本映画誌
¥7,700
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50年にわたる日本映画論を集成。練達の案内人(チチェローネ)が誘う異貌の映画史。 映画評論家上野昂志による50年分の日本映画論を集成。鈴木清順、大島渚、吉田喜重、加藤泰、黒木和雄、川島雄三、山田洋次、北野武、阪本順治などの作品評論を監督別に収録、異貌の映画史を形作る。 [出版社より] 「外国映画も存分に見ている上野昻志は、伊藤大輔から鈴木清順を介して濱口竜介まで、一世紀を超えんとする日本映画を語ることにもっぱら集中し、主張よりも描くことに徹しているさまは、本人にその意識があろうとなかろうと、ひたすら優雅である。不意に視界に浮上したその「優雅さ」の歴史的な意味を噛みしめよ。試されているのは、われわれ読者なのだから」 ——蓮實重彦 「上野昻志は声高には話さない。ぼそぼそと独り言のように語る。そこで気楽に聴いていると、どきりとする瞬間がある。映画についての文章も同じで、軽口めく調子で始まることが多いが、ギラリと批評の刃が飛び出す。なぜそうなるのだろう。見たという体験にこだわり、考え、言葉を紡ぎ、映画を発見しつづけるからにちがいない。本書はその動態のドキュメントである」 ——山根貞男 著 者|上野昻志 出版社|国書刊行会 定 価|7,000円+税 判 型|四六変型判/上製・函入 頁 数|984 ISBN|978-4-336-07297-9 初 版|2022年06月 Contents 伊藤大輔 われわれはほとんど伊藤大輔を知らない 清水宏 清水宏が山道を歩く人を撮るとき 楽しげな軍事練習――『花形選手』 小津安二郎 小津の戦後における家庭劇が行き着いた地平 成瀬巳喜男 成瀬巳喜男の一九六〇年代と現在 マキノ雅弘 複数的なるもの――マキノ 感性の反応にこだわる 映画に飢えてマキノを見る 甘美にして残酷な経験を強いたマキノ映画――マキノ雅広追悼 山中貞雄 山中貞雄を読む快楽と悲哀――『山中貞雄作品集』『監督山中貞雄』書評 加藤泰 一生活者の不断の格闘――『遊侠一匹 加藤泰の世界』にふれて 〈生〉への痛恨の想い――加藤泰論 黒い画面とひとつの光 情熱と力の行方――『日本侠花伝』に見る“裸形の生” 加藤泰監督の一周忌に『ざ・鬼太鼓座』の公開を望む これからの加藤泰 加藤泰の女の映画五本 語りがそのまま生きた映画史に――『加藤泰資料集』『加藤泰、映画を語る』書評 川島雄三 川島雄三の場所 残酷な忘却装置、東京 田中徳三 女の愛を描く作家 鈴木清順 振り出しに戻る監督 魯迅が魯迅であるためには 『悲愁物語』の前後 鈴木清順の運動――『ツィゴイネルワイゼン』 無垢の魂を隠しもつ――『孤愁』書評 泉鏡花と鈴木清順――『陽炎座』をめぐって ナイーヴな男は罰せられる――『陽炎座』 聞こえるはずのない歌――清順映画の媚薬 すべてを解体する――『カポネ大いに泣く』 みなづきに時代錯誤の贅沢を求めて 一人の批評家の死、そして理不尽ということ 『夢二』――贅沢な映画 清順、ロッテルダムを行く 鈴木清順の過激な批評――『ピストルオペラ』 世界は一瞬のうちに変貌する――追悼鈴木清順 石井輝男 石井輝男の新しい一歩――『ゲンセンカン主人』 活動屋・石井輝男の『ねじ式』 増村保造 愛の化身、そして若尾文子は、いつ微笑むのか? 道行きの道はいつも上り坂――『曽根崎心中』 森崎東 森崎東のボトム 現在のただ中に描き出された老荘的な共同体への熱い思い ――『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』 森崎東における炭鉱と原発 現在と過去を自由に往還することで見えてくるもの――『ペコロスの母に会いに行く』 土本典昭 『ドキュメンタリーの海へ 記録映画作家・土本典昭との対話』から土本典昭の仕事を考える 深作欣二 深作欣二と笠原和夫 黒木和雄 敗北への志向、あるいは複数の空間と時間――黒木和雄論 山田洋次 死との過激な戯れ、そしてその喪失 山田洋次論 帰ってくる男 続・山田洋次論 夏が過ぎ、そして秋が来ました…… 続々・山田洋次論 キネマは何処に消えたか――『キネマの天地』 大島渚 大島渚論 創造社時代の大島渚 大島渚、創造社時代の幕あけ 大島渚の一九六八年 創造社の終焉 終わりの始まり 性愛の政治学へ――ポスト創造社時代 ワイセツでケッコウ 改めて「わいせつ」を生きる 漆黒の闇に塗り込めた希望――『天草四郎時貞』 買われる女、買う男――『悦楽』 楕円運動の遠心力と求心力――『無理心中 日本の夏』 スクリーンの破れ目としての穴――『愛の亡霊』 大島渚ベスト3――いま見直した作品こそが最高なのだ 〈顔〉の映画――『マックス、モン・アムール』、そして『ゆきゆきて、神軍』 批評的な作家からの挑戦状――『大島渚1960』書評 吉田喜重 曖昧さのなかへ――『煉獄エロイカ』 記憶を喚起しながら、それを絶えず破砕していく運動――『鏡の女たち』から 吉田喜重全映画+α 映画にもっとプロの力を!――『戒厳令』の現場 二・二六事件と『戒厳令』 記憶を修正しない姿勢貫く――『吉田喜重 変貌の倫理』書評 三村晴彦 『天城越え』あるいは対応の方法 曽根中生 閉された空間を作る――『天使のはらわた 赤い教室』 小沼勝 ロマン・ポルノ、小沼勝の揺るぎない磁場 澤井信一郎 資質も好みも違うが、澤井信一郎と森崎東は虚実が互いに入れ替る場を共有している ――『ロケーション』と『Wの悲劇』 「永遠の現在」を映画に転換する工夫――『めぞん一刻』 アクションとしての演奏あるいは横顔のドラマ――『わが愛の譜 滝廉太郎物語』 サスペンシブな『日本一短い「母」への手紙』は決して母もの映画ではない 布川徹郎とNDU NDUは、境界を往く 原一男 『ゆきゆきて、神軍』の言の葉 柳町光男 新たなる地図を描く――『十九歳の地図』 外に向けられた映画の開放感――『旅するパオジャンフー』 長谷川和彦 死体、その後――『青春の殺人者』 弾むモノとしての原爆――『太陽を盗んだ男』 荒戸源次郎 死出の旅路に導かれ――『赤目四十八瀧心中未遂』 原作の埃を入念に払った後に映画が見つめたもの――『人間失格』 荒戸源次郎――ある風雲児の記憶 北野武 歩く人と見る人――映画作家、北野武 『ソナチネ』には絶えず胸騒ぎを覚える 生の不可逆的な時間を捉える――『キッズ・リターン』① 世界の残酷さに触れる――『キッズ・リターン』② たけしの顔、そして絵――『HANA-BI』 アクションとしてのチャンバラという明確な戦略意識――『座頭市』 組織暴力の純粋形態――『アウトレイジ ビヨンド』 飯塚俊男 土と手と水の映画――縄文三部作に寄せて 相米慎二 運動体としての「世界」――『魚影の群れ』 この映画には秩序が要請する滑らかさとは逆の凸凹があり、 それが饒舌とは反対の絶句へとわれわれを導くのである――『ションベン・ライダー』 夏の終りに――『台風クラブ』 『お引越し』は相米慎二の見事な成熟ぶりを示す 『トカレフ』や『夏の庭』は、アホな評論家の頭を越えて映画の現在に向かう 相米慎二は新しい境地に立った――『あ、春』 崔洋一 必要不可欠な筋肉だけでできてる映画――『友よ、静かに瞑れ』 散逸する物語――『月はどっちに出ている』 ピカレスクロマンの快作――『犬 走る DOG RACE』 小手先の演技を超えた陰影――『刑務所の中』 歴史を個の肉体の体現として描いた強固な志――『血と骨』 原将人 原将人の旅、そして『初国知所之天皇』 井筒和幸 「日常」に風穴をあける―― 『ガキ帝国』 井筒和幸は深化する――『ヒーローショー』に寄せて 『ガキ帝国 悪たれ戦争』を巡って 黒沢清 『地獄の警備員』は潔く倫理的な映画である 『CURE』は、バモイドオキ神を顕現する 虚から現への反復――『スパイの妻』 山本政志 アホもまた進化する――『アトランタ・ブギ』 佐藤真 映画、その奇蹟的時間――『阿賀に生きる』 見ることのレッスン――『SELF AND OTHERS』 表現を受けとめるということの大事さ 映画『花子』を見て 世界が立ち現れる瞬間に出会う――『ドキュメンタリー映画の地平』書評 ドキュメンタリー映画はどこに向かうのか 阪本順治 久しぶりだぜ。『どついたるねん』で日本映画に興奮する 再生のための闘い――『鉄拳』 大阪で『王手』を見よう 非対称の視線――『トカレフ』 素朴なアクションがファンタジーを支える――『ビリケン』 『顔』を支える肯定の力――阪本順治の新作を追いかけて 二〇〇七年は阪本順治の『魂萌え!』で始まる! 痛みを体感すべく映画に向かう――『闇の子供たち』 弱点をも凌駕するほどパッションが噴出した――『行きずりの街』 ハバロフスクの『人類資金』 単純であることの強さ――『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』 理想が失われた時代に向けて――『エルネスト』 瀬々敬久 瀬々敬久の軌跡――アテネ・フランセ文化センター講演 『雷魚』の風景にうたれる 誰ともしれぬ主観の影が重なるように――『ユダ』 諏訪敦彦 決定的な時間が流れた――『2/デュオ』 青山真治 悲しみの風景を疾走する――『死の谷'95』書評 圧倒的な音の渦――『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』 大いなる父の死と女たちの力――『共喰い』 豊田利晃 敗者たちの覚醒――『アンチェイン』 明確な輪郭で描く画面と確かな構成力に感じる力――『青い春』 滑稽にして悲惨な色に染まりながらも、純な魂は……――『ナイン・ソウルズ』 小栗判官から『鋳剣』へと蘇る豊田利晃――『蘇りの血』 雪に埋もれた山中から、いま、孤独なテロリストが降り立つ――『モンスターズ・クラブ』 大森立嗣 新たなる混沌に向けて……――『ゲルマニウムの夜』 大森立嗣は直球勝負でくる!――『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 煉獄をさまよう孤独な魂――『ぼっちゃん』 隔たりを生きるということ――『さよなら渓谷』 横浜聡子 生死の彼岸 陽人は超人か?――『ウルトラミラクルラブストーリー』 一人の少女の成長に立ち会う――『いとみち』 濱口竜介 日本映画では極めて稀な純粋恋愛映画――『寝ても覚めても』 日本映画ベスト50――映画状況の変化に独断も偏見もままならず選んだベスト あとがき 索引(人名・映画題名) Author 上野 昻志 Koshi Ueno 1941年東京生まれ。評論家。66年、東京都立大学大学院在籍中(専攻は中国文学)に漫画雑誌「ガロ」の社会時評的コラム〈目安箱〉連載で執筆活動に入る。69年から山根貞男・波多野哲朗・手島修三編集の雑誌「シネマ69」にて映画批評も執筆し始める。2008~10年、日本ジャーナリスト専門学校校長。著書に『沈黙の弾機 上野昂志評論集』(青林堂、71年)『魯迅』(三一書房、74年)『巷中有論 街にケンカのタネを拾う』(白夜書房、78年)『現代文化の境界線』(冬樹社、79年)『紙上で夢みる 現代大衆小説論』(蝸牛社、80年/清流出版、2005年)『映画=反英雄たちの夢』(話の特集、83年)『肉体の時代 体験的60年代文化論』(現代書館、89年)『ええ音やないか 橋本文雄・録音技師一代』(橋本文雄と共著、リトル・モア、96年)『映画全文 1992~1997』(リトル・モア、九八年)『写真家 東松照明』(青土社、九九年)『戦後60年』(作品社、05年)、編著に『鈴木清順全映画』(立風書房、86年)、『映画の荒野を走れ プロデューサー始末半世紀』(伊地智啓著、木村建哉と共編、インスクリプト、15年)がある。
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大島渚全映画秘蔵資料集成
¥13,200
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各所に秘蔵されていた膨大な製作時の未公開写真・ノート類など新発見資料や生々しい記録、記事スクラップなどを作品ごとに集大成し、それぞれ詳細に解説。また別途映画本編についての詳細な解説を付し、さらにそれぞれの時代についての大島渚本人の回想をも加えて贈る、大島映画の根本資料にして時代の記念碑。戦後日本映画史研究に必備の書。2021年キネマ旬報映画本大賞・第1位受賞。 [出版社より] 監 修|大島渚プロダクション 編 著|樋口尚文 出版社|国書刊行会 定 価|12,000円+税 判 型|B5判/上製 頁 数|820 ISBN|978-4-336-07202-3 初 版|2021年12月 Contents 第一章 出生から学生時代、そして撮影所へ 第二章 ヌーヴェル・ヴァーグの旗手として 『愛と希望の街』 『青春残酷物語』 『太陽の墓場』 『日本の夜と霧』 【アルバム】生涯の伴走者、小山明子 第三章 松竹退社と模索の季節 『飼育』 『天草四郎時貞』 『忘れられた皇軍』とテレビドキュメンタリー 『小さな冒険旅行』とPR映画 『アジアの曙』とテレビドラマ 『悦楽』 『ユンボギの日記』 第四章 独立プロ・創造社の挑戦 『白昼の通り魔』 『忍者武芸帳』 『日本春歌考』 『無理心中 日本の夏』 『絞死刑』 『帰って来たヨッパライ』 『新宿泥棒日記』 『少年』 『東京战争戦後秘話』 『儀式』 『夏の妹』 【アルバム】作家の肖像 *《センターカラー・未公開カラーショット集》 第五章 創造社の解散と国際的活躍 『愛のコリーダ』 『愛の亡霊』 『戦場のメリークリスマス』 『マックス、モン・アムール』 第六章 大島映画の美的参謀、戸田重昌 【アルバム】各国の映画人との交流 第七章 幻の企画と晩年 未実現企画の数々 未実現企画『日本の黒幕』 未実現企画『ハリウッド・ゼン』 『御法度』 幻の出演作 テオ・アンゲロプロス作品『憶えているかい、君は』 【アルバム】闘病、そして逝去 大島渚略年譜 人名索引 おわりに Editor 樋口 尚文 Naofumi Higuchi 映画評論家、映画監督。著作に『秋吉久美子 調書』(秋吉久美子共著・筑摩書房)、『実相寺昭雄 才気の伽藍――鬼才映画監督の生涯と作品』(アルファベータブックス)、『万華鏡の女――女優ひし美ゆり子』(ひし美ゆり子共著・筑摩書房)、『黒澤明の映画術』(筑摩書房)、『「砂の器」と「日本沈没」――70年代日本の超大作映画』(筑摩書房)、『大島渚のすべて』(キネマ旬報社)などがある。
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ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク
¥2,860
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ここでなければ、どこへでもーー。 『ピンク・フラミンゴ』『ヘアスプレー』で知られる伝説のカルト映画監督ジョン・ウォーターズは66歳にして突如アメリカ横断ヒッチハイクを計画した。「刺激がほしいんだ!」 2つのフィクション「最高の旅」「最悪の旅」、そしてノンフィクション「現実の旅」で構成された新しいエンターテインメントの誕生。 「訳しながら笑いが止まらなくなったのはこれが初体験。この本は活字で読むジョン・ウォーターズの新作映画だ!」――柳下毅一郎 ー アメリカが誇る伝説的カルト映画監督にしてバッドテイスト(悪趣味)の王様、ジョン・ウォーターズは66歳にして突如アメリカ横断ヒッチハイクを計画した。ボルチモアからサンフランシスコまで、それはウォーターズにとってのアメリカを再発見する旅となった。 現実の旅の前の予行演習として、2つの中篇小説「最高の旅」「最悪の旅」が書かれる。新作映画の資金を現金でポンとくれる大金持ちの麻薬売人に出会ったり、サーカスに入ってフリークショーに出演したり、懐かしい映画仲間に再会したり、と最高に幸せなヒッチハイク。つづいて、考えるうる限り最低で最悪なヒッチハイクで出会うのは、ウォーターズ映画マニアの親子、アル中の無免許運転手、ゲイ至上主義の過激派、狂った動物愛護運動家ほか多数! そして「事実は小説より奇なり」の言葉通り、最悪で最高な「現実の旅」が始まる。最後にウォーターズを待ち受けるのは果たして天国か、地獄か!? フィクションとノンフィクションで構成された新しい形のエンターテインメントにして、活字で読むジョン・ウォーターズ映画、そしてトウェイン~スタインベック~ケルアックに続く偉大なるアメリカ放浪者文学の誕生。 [出版社より] 著 者|ジョン・ウォーターズ 訳 者|柳下毅一郎 出版社|国書刊行会 定 価|2,600円+税 判 型|四六変型判/上製 頁 数|386 ISBN|978-4-336-07320-4 初 版|2022年01月 Contents プロローグ 我が道を行く? 起こりうるかぎり最高のこと 起こりうるかぎり最悪のこと 本物の旅 Author ジョン・ウォーターズ John Waters 1946年アメリカ・メリーランド州ボルチモアの中流家庭に生まれる。72年にカルト映画史上の古典として不滅の輝きをもつ『ピンク・フラミンゴ』を発表、全世界にショックを与えて〈バッドテイストの王様〉として名を馳せる。以後、メジャー映画シーンで『ヘアスプレー』(88年)『クライ・ベイビー』(90年)『シリアル・ママ』(94年)などヒット作を監督。現在はショーのホストやエッセイストとしても活躍している。ボルチモア在住。 Translator 柳下毅一郎 Kiichiro Yanashita 1963年大阪府生まれ。映画評論家・翻訳家。雑誌『宝島』の編集者を経てフリー。ガース柳下の筆名で『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社/文春文庫)を町山智浩と共著。著書『興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史』(青土社)、『新世紀読書大全 書評1990-2010』(洋泉社)など多数。訳書にR・A・ラファティ『第四の館』(国書刊行会)、アラン・ムーア/J・H・ウィリアムズⅢ『プロメテア1~3』(小学館集英社プロダクション)、監訳書に〈J・G・バラード短編全集〉(東京創元社)など。
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さらば、ベイルート
¥2,992
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中東から西サハラヘ、さらにヴェトナムへ——。瓦礫のなかで女性たちの人生を見つめ、歴史の証言者たろうとしたドキュメンタリスト、ジョスリーン・サアブ。 骨髄を癌で犯され余命いくばくもない彼女から、わたしは最後の作品への協力を依頼される。それは元日本赤軍幹部・重信房子と娘メイの、母娘の絆の物語だった。だが、そんなことがはたして可能なのだろうか……。 歴史は無慈悲に進行し、記憶は両手から零れ落ちる砂のように消えていく。死の直前まで彼女が見つめていたものは何だったのか? 知られざる女性映画作家の足跡をベイルートに辿り、その生涯を凝視する珠玉のノンフィクション。 [出版社より] 「遠い鏡に映った他人を映画に撮ろうとするのは、死が目の前まできているから――。ここ数年読みたかった本が実際に存在した」 ――多和田葉子(作家) 「永遠を横切りながら、切り裂きながら撮る女。移動の情熱、零れ落ちる命、そしてフィルムは生き延びる」 ――斎藤真理子(翻訳家) 著 者|四方田犬彦 出版社|河出書房新社 定 価|2,720円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|240 ISBN|978-4-309-03039-5 初 版|2022年05月 Author 四方田 犬彦 Inuhiko Yomota 1953年生まれ。あらゆるジャンルを横断する批評家。著書『ルイス・ブニュエル』『親鸞への接近』『大島渚と日本』『詩の約束』など。
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ショットとは何か
¥2,420
グリフィス、ジョン・フォード、ドン・シーゲルから小津安二郎、コッポラ、トニー・スコット、デイヴィッド・ローリーら映画監督。スタンダード、ヴィスタヴィジョン、シネマスコープなどスクリーンの変遷。FOX、MGM、ワーナーブラザース、パラマウント等スタジオの歴史など。映画を彩るさまざまな要素をわかりやすく解説し、自身の映画体験と重ねて始めて語られる「ショット論」。世界中の映画ファン、必読かつ垂涎の書。 [出版社より] 著 者|蓮實重彦 出版社|講談社 定 価|2,200円+税 判 型|四六版/並製 頁 数|304 ISBN|978-4-06-524879-9 刊 行|2022年04月 Contents 1 『殺し屋ネルソン』に導かれて 2 物語を超えて 3 映画崩壊前夜とショットの誕生 4 「理論」的な問題について 5 ショットを解放する Author 蓮實 重彦 Shigehiko Hasumi 仏文学者、映画批評家、文芸批評家、小説家。1936年、東京都生まれ。東京大学仏文学科卒業。パリ大学にて博士号取得。東京大学教授を経て、東京大学第26代総長。78年、『反=日本語論』で読売文学賞、89年、『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、2016年、『伯爵夫人』で三島由紀夫賞を受賞。1999年にはフランス芸術文化勲章コマンドールを受章する。著書に『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』他多数がある。
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虚像培養芸術論 アートとテレビジョンの想像力
¥3,850
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1960年代、テレビジョンの想像力=「虚像」がアートを起動した。 磯崎新は都市デザインを虚業と称し、横尾忠則は虚像となり、高松次郎は影を演じた。今野勉はテレビの日常性を主張し、東野芳明は「テレビ環境論」を書いた。マスメディアの想像力を分母に、現代を逆照射する戦後日本芸術論。 本書の目的は、現代芸術がマスメディアを分母とした表現活動を再配置し、テレビジョン=「虚像」が想像力とされた時代の作家像、作品概念を、現代の視点で分析することである。 マスメディア(放送文化と出版文化)を介してはかられる領域横断は、芸術家相互の新たなネットワークを生成し、旧来の制度化された芸術諸分野を解体していた。「虚像の時代」を問い直すこと、つまりオールド・メディア成熟期をテーマにすることは、ニュー・メディア成熟期を迎える現在の批判理論に繋がる。 本書では、東野芳明・磯崎新・今野勉の思考を軸にマスメディアの中の芸術家像を検証しながら、現代美術、現代思想、現代メディア論を縦横無尽に横断し、メディア芸術の歴史的な視座を編み直していく。現代芸術は、抵抗文化としてのラディカルな戦略をいかに設計してきたのかを分析する。 [出版社より] 著 者|松井茂 出版社|フィルムアート社 定 価|3,500円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|312 ISBN|978-4-8459-2030-3 初 版|2021年03月 Contents プロローグ:テレビをつける 第一部 虚像培養国誌 第一章 知覚のボディ・ビルディング──その日常性への上昇 第二章 東野芳明と横尾忠則──ポップ・アートから遠く離れて 第三章 戦後日本におけるマスメディア受容と現代芸術の文化学──高松次郎の場合 第二部 磯崎新論──出来事(ハプニング)の編纂(アーキテクチヤ) 第四章 出来事(ハプニング)の編纂(アーキテクチヤ)──都市デザインとしての《SOMETHING HAPPENS》 第五章 イソ、サム、トーノの《建築空間》──福岡相互銀行大分支店にみる建築と美術の協働 第六章 「かいわい」に「まれびと」が出現するまで──「お祭り広場」一九七〇年 第七章 繰り返し語り、騙られる《コンピューター・エイディド・シティ》をめぐって──一九六八年のテレヴィジョンと幻視者(ヴイジヨナリー) 第三部 アートとテレビジョンの想像力 第八章 マスメディア空間における芸術表現と情報流通──雑誌『現代詩』を事例に 第九章 テレビ環境論 その2──《あなたは…》と《ヴォイセス・カミング》と 第一〇章 流通するイメージとメディアの中の風景 エピローグ:ゼロ地点から向かいます──放蕩娘たちのストリーク あとがき Author 松井 茂 Shigeru Matsui 1975年東京生まれ。詩人、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]准教授。共編に『虚像の時代 東野芳明美術批評選』(河出書房新社、2013)、『日本の電子音楽 続 インタビュー編』(engine books、2013)等。共著に『FABに何が可能か 「つくりながら生きる」21世紀の野性の思考』(フィルムアート社、2013)、『キュレーションの現在 アートが「世界」を問い直す』(フィルムアート社、2015)、『テレビ・ドキュメンタリーを創った人々』(NHK出版、2016)等。監修に『美術手帖』の特集「坂本龍一」(2017)、「平成の日本美術史 30年総覧」(2019)、『現代思想』「磯崎新」(2020)等。キュレーションに「磯崎新12×5=60」(ワタリウム美術館、2014)、「磯崎新の謎」(大分市美術館、2019)等。詩集に『二●二●』(engine books、2020)等。
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愛蔵版 お楽しみはこれからだ
¥2,970
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イラストレーター・グラフィックデザイナーとして活躍し、さらにエッセイスト・映画監督・作曲家など多彩な顔をもつ和田誠(1936–2019)の代表作にして、映画エッセイの名著が愛蔵版で復活! 書き下ろしエッセイ=村上春樹。 記憶に残る〈映画の名セリフ〉をイラストレーションとともに紹介する本シリーズは、「キネマ旬報」で1973年から23年のあいだ断続的に連載され、全7巻の単行本にまとまり長年映画ファンに愛されてきた。今回オリジナルのまま再現した本体を函に入れた特別仕様で復刊、各巻に書き下ろしエッセイを掲載した栞を付す。 *次回配本『お楽しみはこれからだPART2』2022年2月刊。 [出版社より] 著 者|和田誠 出版社|国書刊行会 定 価|2,700円+税 判 型|A5判/函入 頁 数|256 ISBN|978-4-336-07300-6 初 版|2022年01月 Author 和田 誠 Makoto Wada 1936年大阪生まれ。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)卒業。1959年デザイン会社ライトパブリシティ入社。68年よりフリーのイラストレーター、デザイナーとして活躍。タバコ「ハイライト」のデザイン、「週刊文春」の表紙イラストレーション、2000冊以上の書籍の装丁を手がける。著書は200冊以上にのぼる。映画に関する著書も多く『お楽しみはこれからだ(全7巻)』『シネマッド・ティーパーティ』、『たかが映画じゃないか』(山田宏一との共著)、『これもまた別の話』(三谷幸喜との共著)など。映画監督として『麻雀放浪記』『快盗ルビイ』『怖がる人々』『真夜中まで』などの作品がある。2019年逝去。
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新映画論 ポストシネマ
¥3,300
あらゆる動画がフラットに流通する時代に、映像を語ることが意味するものは? サイレントから応援上映までを渉猟し、ポストシネマの美学を切り拓く。 『新記号論』『新写真論』に続く、新時代のメディア・スタディーズ第3弾。Netflix、TikTok、YouTube、Zoom……。プラットフォームが林立し、あらゆる動画がフラットに流通する2020年代。実写とアニメ、現実とVR、リアルとフェイク、ヒトとモノ、視覚と触覚が混ざりあい、映画=シネマの歴史が書き換えられつつあるこの時代において、映像について語るとはなにを意味するのだろうか? サイレント映画から「応援上映」まで1世紀を超えるシネマ史を渉猟し、映画以後の映画=ポストシネマの美学を大胆に切り拓く、まったく新しい映画論。作品分析多数。 [出版社より] 「著者の正体は、本書に登場する「半・野良猫」かも。好奇心に導かれ、様々な領域を軽々と越境し、自由闊達に論じた映画論だ」 ――想田和弘(映画作家) 「すずさんは「空を飛ばない少女」、上昇に限界がある。そんな彼女にとっての「下降」の意味を語る本書。そうだ、りんさんは桜の木から「下降」して消えていったのだった」 ――片渕須直(アニメーション映画監督) 著 者|渡邉大輔 出版社|ゲンロン[ゲンロン叢書] 定 価|3,000円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|480 ISBN|978-4-907188-44-3 発 行|2022年02月 Contents はじめに――新たな映画の旅にむけて 第1部 変容する映画――カメラアイ・リアリティ・受容 第1章 カメラアイの変容――多視点的転回 第2章 リアリティの変容――ドキュメンタリー的なもののゆくえ 第3章 受容の変容――平面・クロースアップ・リズム 第2部 絶滅に向かう映画――映画のポストヒューマン的転回 第4章 オブジェクト指向のイメージ文化――ヒト=観客なき世界 第5章 映画の多自然主義――ヒト=観客とモノ 第6章 「映画以後」の慣習と信仰――ポストシネフィリーの可能性 第3部 新たな平面へ――幽霊化するイメージ環境 第7章 アニメーション的平面――「空洞化」するリアリティ 第8章 インターフェイス的平面――「表象」から遠く離れて 第9章 準-客体たちの平面――インターフェイスとイメージの幽霊性 おわりに――ポストシネマのアナクロニズム あとがき 提供図版一覧 索引 Author 渡邉 大輔 Daisuke Watanabe 1982年生まれ。映画史研究者・批評家。跡見学園女子大学文学部准教授。専門は日本映画史・映像文化論・メディア論。映画評論、映像メディア論を中心に、文芸評論、ミステリ評論などの分野で活動を展開。著書に『イメージの進行形』(2012年)、『明るい映画、暗い映画』(2021年)。共著に『リメイク映画の創造力』(2017年)、『スクリーン・スタディーズ』(2019年)など多数。
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中動態の映像学――東日本大震災を記録する作家たちの生成変化
¥2,420
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酒井耕・濱口竜介、鈴尾啓太、小森はるか――。 震災を記録してきた3組の作家たちの実践から、映像メディア理論の新境地を開く。 今日のメディア・テクノロジーは、世界のあれこれの出来事をほとんどリアルタイムに私たちに見せる一方で、それらを次々と処理していくことを同時に要求している。そのなかで私たちは、日々膨大な情報に埋もれてしまい、眼前に存在する他者や未知の出来事をアクチュアルに見る能力を著しく低下させてはいないだろうか? 東日本大震災を記録した3組の「作家」たちの実践を通じて、「中動態」という概念を手がかりに他者と共生するための想像力の可能性を探る。 [出版社より] 「東日本大震災後に生まれた市民アーカイヴ、せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター(通称:わすれン!)」という場の重要性はどれだけ語っても語り尽くせないが、本書の記述の瑞々しさは当時のざわめきを甦らせてくれた。事態のただ中へと巻き込まれ、学び、変わってゆくこと。「中動態の映像学」はここから始まる」 ――濱口竜介(映画監督) 「映像テクノロジーの歴史性や、環境映像環境学の成果をとりいれつつ、東日本大震災にまつわる膨大な映像群を「芸術的中動態」の概念からとらえ、ドゥルーズの『シネマ』論の「世界への信」へと至る。本書は、「見ること」と「作ること」を巡り、「災害」と全員が当事者でありうるこの時代の映像のあり方を鮮烈に示す必読書」 ――檜垣立哉(哲学者) 著 者|青山太郎 出版社|堀之内出版 定 価|2,200円+税 判 型|四六判/並製 頁 数|273 ISBN|978-4909237637 初 版|2022年01月 Contents はじめに 序 章 〈見る〉をめぐる困難について 第一節 〈見る〉と映像生態系 第二節 〈見る〉の上滑り 第三節 震災をめぐる表現への批判 第四節 〈隔たり〉を行き来する回路 第五節 ポストメディア概念と〈見る〉 第一章 〈見る〉とメディア・テクノロジーの系譜学 第一節 マスメディア批判の言説の系譜 第二節 日本における映像受容空間の変遷 第三節 「意識の技術」としてのニューメディアへの疑念 第四節 フランスのメディア事情の変遷 第五節 ポストメディア論の輪郭 第二章 様々なるアーカイブ論への問い 第一節 アーカイブ理念の再検討 第二節 東日本大震災をめぐるデジタルアーカイブ 第三節 災害アーカイブにおける映像記録の位置づけ 第四節 災害アーカイブ論批判 第三章 映像生態系としての「わすれン!」の特異性 第一節 〈作る〉を支えるせんだいメディアテーク 第二節 「わすれン!」の理念と役割 第三節 コミュニティ・アーカイブとしての位相 第四節 〈見る〉と〈作る〉をアップデートさせる「場」 第四章 三つの映像制作論と作家たちの生成変化 第一節 酒井耕・濱口竜介と〈いい声〉 東北記録映画三部作の概要 対話を記録するという方法 〈いい声〉をめぐる編集 第二節 鈴尾啓太の反復 『沿岸部の風景』という作品について 震災をめぐる姿勢と葛藤 逡巡と葛藤のなかで成立する制作 第三節 小森はるかの触発的記録 記録と表現のあわいをゆく 『あいだのことば』の方法論 『波のした、土のうえ』の方法論 第四節 イメージが立ち現れるということ 第五節 未知なるイメージをつかまえるということ 第五章 〈作る〉と〈見る〉を結び直す中動態論 第一節 中動態をめぐる言語学的検討 第二節 芸術学への中動態の導入 第三節 複眼的中動態と主体性の生成変化 終 章 〈見る〉から〈信じる〉へのイメージ論 第一節 世界への信を回復するということ 第二節 「より深い外部」のイメージ 第三節 〈わからなさ〉を探索するということ おわりに 参考文献 Author 青山 太郎 Taro Aoyama 1987年、愛知県生まれ。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(学術)。現在、名古屋文理大学准教授。今日のメディア環境における映像制作の美学と倫理学のあり方を探求している。また、映像デザイナーとして国内外で制作・展示活動を手がける。
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映画の声を聴かせて フランス・ヨーロッパ映画人インタビュー
¥3,520
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パリ在住映画ジャーナリストによる待望の映画インタビュー集。 アンナ・カリーナ、エリック・ロメール、ラウル・クタール、ジュリエット・ビノシュ、アヌーク・エーメ、マノエル・ド・オリヴェイラらが語るそれぞれの映画人生とは。総勢29名のインタビュイーたちが映画について語り尽くした証言集。 ヌーヴェル・ヴァーグから現在まで「映画の声」に耳を傾ける。 [出版社より] 「これまで雑誌などで断続的、断片的に読んできただけだったが、映画ファンの心の琴線に触れるインタビューだった。いつか一冊の本にまとまって全体を読めるのを心待ちにしていた。 パリ在住の気鋭のジャーナリストで飛び切りの映画ファン、魚住桜子さんの魅惑の映画インタビュー集だ。映画の秘密を聴き出すために、インタビューはパリを中心にしながらも縦横に移動するシネ・サロンのホステスとゲストたちの親密な語らいになって、ときには緊迫した静寂のなかの官能的なささやきのように、ときには洪笑とともに意気投合するかと思えば丁丁発止の議論さながらに聴こえてくるのだ──たしかな「映画の声」として」 ——山田宏一 著 者|魚住桜子 出版社|森話社 定 価|3,200円+税 判 型|A5判/並製 頁 数|416 ISBN|978-4-86405-161-3 発 行|2021年07月 Contents フォト・アルバム まえがき Ⅰ ヌーヴェル・ヴァーグをたずねて [1 アンナ・カリーナ、ゴダールを語る] アンナ・カリーナ=恋と映画の時代 [2 フランソワ・トリュフォーを探して] クロード・ド・ジヴレー=私は生きている限りフランソワのことを語り続けるでしょう ジャン・グリュオー=ピンポンのラリーのように共作する セルジュ・トゥビアナ=暴力的な感情と情熱の映画作家 [3 エリック・ロメールのために] エリック・ロメール=私の映画は「場所」ありきです バーベット・シュローダー=これこそが私の求めていた映画だ! ジャン・ドゥーシェ=映画の本質は言葉にある フランソワーズ・エチュガライ=孤高の人の素顔 クロード・シャブロル=グラン・モモの軽やかさ マリー・リヴィエール=感情や思想、愛をめぐる考察 アマンダ・ラングレ=「ロメリエンヌ」と呼ばれて シャルロット・ヴェリ=ロメールの世界に飛び込みたい! [4 ジャック・リヴェットと舟でゆく] パスカル・ボニゼール=リヴェットとの冒険は、新しい挑戦の連続だった [5 アニエス・ヴァルダの台所にて] アニエス・ヴァルダ=〝マミー・パンク〟(パンクなお婆ちゃん)と呼ばれて Ⅱ ヌーヴェル・ヴァーグの波のひろがり [6 天才カメラマンのまなざし] ラウル・クタール=ヌーヴェル・ヴァーグのまなざし レナート・ベルタ=撮影監督と映画作家との〝共犯関係〟 カロリーヌ・シャンプティエ=撮影においての革命はヌーヴェル・ヴァーグの前か後、その時だけに起こった ピエール・ロム=『美しき五月』が私の映画人生を導いてくれた [7 映画史を〝書いた〟男] ジャン=クロード・カリエール=脚本という万華鏡 [8 映画の親子] フィリップ・ガレル=永遠の青年を生きる ルイ・ガレル=映画で起こる出来事は、その監督に実際に起こったのだと信じ込んでいました [9 映画の兄妹] ジュリエット・ビノシュ=私は演技を通して真実を追求していく オリヴィエ・アサイヤス=僕は永遠の青年のように生きている アヌーク・エーメ=女優の歓び クロード・ルルーシュ=映画は人生とスピードだ! [10 シネアストとその分身] マチュー・アマルリック=映画を作ることは、僕の人生そのものだ ドニ・ラヴァン=同じような体格で、年は一歳違い。そして、傲慢なレオスの分身=アレックスを、僕は演じてきたのです Ⅲ 映画の終わり… [11 一〇〇歳を超えてなお…] マノエル・ド・オリヴェイラ=映画で最も大切なこと、それは「記憶」です [12 ピエール・リシアンを偲んで] ベルトラン・タヴェルニエ=ピエールとは、新たな映画を発見する歓びを幾たびも分かち合いました ティエリー・フレモー=彼は映画が良くなることだけを考えていたのです ジェリー・シャッツバーグ=あるがままの映画を愛する イ・チャンドン=彼が亡くなったことで、映画の一つの時代も終わったのだと思います 初出一覧 主要人名索引 映像作品名索引 Author 魚住 桜子 Sakurako Uozumi 1973年生まれ。パリ在住ジャーナリスト。 1998年から3年間のフランス留学を経て、2004年からパリ在住。 『映画芸術』『キネマ旬報』などに映画人のインタビュー記事を中心に寄稿。映画のほかにも、食やフランス文化、暮らしにまつわる取材、執筆を行う。 フランス映画批評家協会、フランス外国人映画記者協会「リュミエール」会員。
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ビデオランド レンタルビデオともうひとつのアメリカ映画史
¥3,740
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銀幕を包んだ闇を抜け出し、映画の新たな「配給網」となったレンタルビデオ店。その創世から終幕、そして「配信」の現在へとつづくアメリカ映画のもうひとつの歴史。 「いまやレンタルビデオ店はアメリカ人の暮らしからは既に遠くなったけれど、願わくば本書『ビデオランド』が、かつての生き生きとした社会生活のなにものかを伝え、とりわけ日本の読者諸賢にとっても、遠いどこかの話ではなく、いまや消え去ろうとしている文化になんらかの親しさや近しさを感じてもらえるようなものでありますようにと思う。……ビデオストアはありふれた、つかのまの、記憶されることさえないふるまいとやりとりに溢れた何の変哲もない場だった。けれどそういうものはえてして、消え去って初めて気づくものだと、そんなふうにつくづく思うのである」(「日本語版への序文」より) [出版社より] 著 者|ダニエル・ハーバート 訳 者|生井英考・丸山雄生・渡部宏樹 出版社|作品社 定 価|3,400円+税 判 型|四六判・並製 頁 数|381 ISBN|9784861828751 初 版|2021年12月 Contents 第1部 レンタルビデオの歴史と文化 長い物語 実践的な分類 第2部 ビデオストアと映画文化のローカル化 ビデオ資本 スモールタウン・アメリカのレンタルビデオ 第3部 流通するビテオストア文化 価値の配給 選択に寄り添う―批評、アドヴァイス、メタデータ 終章 Author ダニエル・ハーバート Daniel Herbert ミシガン大学映画・テレビ・メディア学科准教授。南カリフォルニア大学で映画研究の博士号を取得。専門はメディア産業論・文化論。 Translator 生井 英考 Eiko Ikui 立教大学アメリカ研究所員。政治社会学、映像人類学 丸山 雄生 Yuki Maruyama 東海大学文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科准教授。アメリカ文化史、動物研究 渡部 宏樹 Koiki Watabe 筑波大学助教/エジプト日本科学技術大学客員助教。表象文化研究
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サイコマジック
¥4,180
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世界中の人々の意識を変えた、現実を変革するアート——。 アートとセラピーを融合させた、新しい癒しの提言。時代の不安を拭い去り、希望を創る独自の心理療法〈サイコマジック〉。待望の書、ついに邦訳刊行。 「論理的であってほしいと望むこの人生は、気違いじみて、ショッキングで、驚異的で残酷だ。私たちの行動は論理的で、意識的な振りをしているが、実際には、非理性的で、狂っていて、矛盾している」 「ひとは自分自身の狂気を通過することによってのみ、賢者になるんだ」 「蓮の花は泥の中から咲くことを決して忘れてはならない。浄められた空に向かって昇るためには、泥濘を探求し、死と泥に触れる必要がある」 「一度もしたことのない何かをする瞬間に、もう私たちは治癒の道にいる。ルーティーンを破らなければならない」 [出版社より] 著 者|アレハンドロ・ホドロフスキー 訳 者|花方寿行 出版社|国書刊行会 定 価|3,800円+税 判 型|四六判/上製 頁 数|460 ISBN|978-4-336-07035-7 初 版|2021年06月 Contents 日本語版への序 プロローグ ▶第一部 サイコマジック――パニック・セラピーの素描 (ジル・ファルセットとの対話) 序文(ジル・ファルセット) 詩的行為 演劇的行為 夢的行為 魔術的行為 サイコマジック行為 サイコマジック行為数例 サイコマジック書簡抄 想像力に力を ▶第二部 ミュータントのためのレッスン (ハビエル・エステバンとのインタビュー) 魂の鍵 人生の航路 不可視の橋 幻視 治癒させる芸術 生を理解する ▶第三部 創造力速修講座 序 想像力のエクササイズ 想像力のテクニック セラピーへの応用 訳者解説 アートからセラピーへ――ホドロフスキーの宇宙 Author アレハンドロ・ホドロフスキー Alexandro Jodorowsky Prullansky 1929年、チリでロシア系ユダヤ人の子として生まれる。映画監督、映画プロデューサー、芸術家、劇作家、俳優、詩人、作家、音楽家、漫画作家、タロット研究家、サイコセラピスト。『エル・トポ』(1970)、『ホーリー・マウンテン』(1973)など前衛的作風の映画がカウンターカルチャーを代表する人々に絶賛され、カルトムービーの鬼才として名を馳せる。日本のアートシーンにも熱狂的なファンが多く、2013年には〈実現しなかった映画〉として知られる『DUNE』を題材とするドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』が話題を集めた。タロット研究家、サイコセラピストとしての活動も長年おこなっており、フィリップ・カモワンとともに製作した〈カモワン・タロット〉によるリーディングセラピーで知られるほか、科学によって精神を治療するのではなく芸術によって魂を解放する独自のセラピー〈サイコマジック〉の取り組みをライフワークとしている。現在はパリを拠点に活動しており、自伝『リアリティのダンス』を原作とする映画2作『リアリティのダンス』(2013)『エンドレス・ポエトリー』(2016)に続く3作目、『エッセンシャル・ジャーニー』を2021年現在製作準備中である。 Translator 花方寿行 Kazuyuki Hanagata 静岡大学人文社会科学部教授。専門は比較文学文化、スペイン・ラテンアメリカ文学。著書に『我らが大地――19世紀イスパノアメリカにおけるナショナル・アイデンティティのシンボルとしての自然描写』(晃洋書房)、共著書に今野喜和人編『翻訳とアダプテーションの倫理』(春風社)、共訳書に『ホセ・マルティ選集1 交響する文学』(日本経済評論社)、フォンターナ『鏡のなかのヨーロッパ』(平凡社)がある。