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ヨーゼフ・ロート ウクライナ・ロシア紀行

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戦間期の1920年代。オーストリアの文豪・ヨーゼフ・ロートが旅した、言語・文化・宗教のモザイクのような世界、ウクライナ・ロシアの諸都市の人々の暮らしと現実の記録。

キエフ、モスクワ、そしてオデッサへ、さらにレンベルク、バクーあるいはアストラハンへの探査旅行の途上、作家でありジャーナリストでもあるヨーゼフ・ロートは、変幻きわまりない東欧の宇宙空間に潜り込む。1920年代に書かれた彼のレポートとエッセーは、当時のこの世界の現実を生き生きと伝える感動的な目撃証言録。

ロートの注意深い眼差しは、異なった言語や文化や宗教が隣り合わせにひしめき合うソヴィエト連邦の人々と、彼らの暮らしの現実の姿へ向けられる。この眼差しこそは、レニングラードの路上で繰り広げられる日常の雑踏の中でも、ネゴレロイエの国境検問所でも、あるいはヴォルガ川を航行する蒸気船の上でも、どこであれ、ロートが事実に基づいた調査とその独特な文体によって描き出した世界を貫くものだ。

その際彼は、国家と教会、独裁政治と言論・表現の自由、貧富の格差など、この社会に存在する抜き差しならない対立関係を描き出す。それと同時に、故郷を失った彼のような者が、旅に身を任せ、ペンを走らせながら、批判的に物事を理解することを通じて、自分自身の故郷を少しずつ回復していく様子が描かれる。それは、彼自身の言葉という故郷だった。
[出版社より]


原 書| Joseph Roth Reisen in die Ukraine und nach Russland
著 者|ヨーゼフ・ロート
編 者|ヤン・ビュルガー
訳 者|長谷川圭
出版社|日曜社
定 価|1,600円+税
判 型|四六判/並製
頁 数|126

ISBN|978-4-9909696-3-9
発 行|2021年06月


Contents
一 東からの便り

 ウクライナブーム ベルリンの最新流行
 ウクライナ少数民族
 リヴィウ
 障害者の葬列

二 ロシアの風景

 トコジラミと過ごした夜
 レニングラード

三 ソビエトの現実

 国境のネゴレロイエ
 モスクワの亡霊
 ヴォルガ川をアストラハンまで
 アストラハンの不思議
 カフカスの民族模様
 ロシアの大通り
 アメリカを目指すロシア
 女性と新しい性道徳と売春
 教会、無神論、宗教政治
 村に広がる町
 世論と新聞と検閲
 ロシアの神

あとがき
編集者あとがき
謝辞


Author
ヨーゼフ・ロート  Joseph Roth
1894年、東ガリシアのブロディに生まれる。1939年、亡命先のパリで死亡。1923年からドイツの代表紙「フランクフルト新聞」の特派員となり、ヨーロッパ各地を巡ってユニークな紀行文を書き送り、売れっ子ジャーナリストとなった。その傍ら創作にも手を染め、1930年の長編小説『ヨブ─ある平凡な男のロマン』は現代のヨブ記と称された。1932年にはかつての祖国ハプスブルク帝国の没落を哀惜の念を込めて描いた『ラデツキー行進曲』を発表し、小説家ロートの名をも不動のものにした。

Editor
ヤン・ビュルガー
1968年生まれ。文学研究科、小説家。文芸雑誌『リテラトゥーレン』編集者。2002年からは、マールバッハ所在のドイツ文学アーカイブにて従事。ハンス・へニー・ヤン、マックス・フリッシュおよびゴットフリート・ベンに関する著書の他に、『ネッカー川、ある文学旅行』がある。

Translator
長谷川 圭 Kei Hasegawa
高知大学卒業後、ドイツのイエナ大学でドイツ語と英語の文法理論を専攻し、1999年に修士号取得。同大学での講師職を経たあと、翻訳家および日本語教師として独立。訳書に『樹木たちの知られざる生活』(早川書房)、『カテゴリーキング Airbnb、Google、Uberはなぜ世界のトップに立てたのか』(集英社)、『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』(角川書店)、『ポール・ゲティの大富豪になる方法』(パンローリング)、『メイク・ザット・チェンジ』(日曜社、共訳)などがある。

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