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ホロコーストとアメリカ

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ナチス・ドイツによるホロコーストはユダヤ人の生命を奪っただけでなく、宗教や文化などあらゆる「ユダヤ的なもの」を破壊した。その結果、数千のユダヤ人コミュニティが消滅し、1億冊以上の書籍が失われた。ユダヤ人の犠牲は600万にのぼり、これはヨーロッパ大陸のユダヤ人人口全体の実に72パーセント以上にあたる。

しかし、国際社会は絶望の淵に追い込まれたユダヤ人の運命に非情であった。ユダヤ人の祖国パレスチナを委任統治するイギリスは、彼らの入国を厳しく制限した。アメリカは制限的移民法を改正し、門戸を広く開放するつもりはなかった。この両国だけでも政策を見直していれば、多数の人命が失われずにすんだ。

国家が頼りにならなければ、自分たちで不幸な難民を救うしかない。19世紀以来、欧米諸国にはユダヤ人の救援組織がつぎつぎと誕生し、国際的な絆で結ばれていた。そのひとつ、第一次世界大戦を機に発足したアメリカ・ユダヤ人合同配分委員会(「ジョイント」)が、ナチス支配下で苦悩する同胞を救うため、すべての組織、資金、人材を動員する。そのスタッフは戦乱の地に派遣され、身の危険を顧みずに救済活動をおこなった。しかし、彼らの行く手には国益と官僚主義の壁が立ちはだかる。

本書は、危機の時代における「ジョイント」と、そのひとりの女性ソーシャルワーカーの活動に焦点をあてながら、ユダヤ難民の辿ってきた道のりを詳細に跡づける。
[出版社より]


著 者|丸山直起
出版社|みすず書房
定 価|4,600円+税
判 型|四六判/上製
頁 数|448

ISBN|978-4-622-08734-2
初 版|2018年12月


Contents
序章 ホロコーストへの道
一 ホロコーストとは何か
二 最終解決へ
三 本書の視点

第1章 難民はアメリカをめざす
一 アメリカの移民問題
二 制限的移民法の成立
三 ユダヤ難民とアメリカ
四 ユダヤ系団体の救援活動

第2章 危機の時代とアメリカのユダヤ人
一 ジョイント
ニ ナチ政権の登場とアメリカのユダヤ人
三 マーゴリス家の人びと
四 アメリカのマーゴリス

第3章 ドイツの反ユダヤ政策とアメリカ政府の対応
一 エヴィアン会議
二 政府間難民委員会とドイツ側の交渉
三 ユダヤ人はどこへ向かうのか
四 アメリカ入国の壁

第4章 セントルイス号の悲劇
一 キューバ
二 悲劇の豪華客船
三 交渉決裂
四 新世界と旧世界

第5章 戦時下のジョイント
一 第二次世界大戦の勃発
二 中国のユダヤ難民
三 マーゴリスの上海派遣
四 開戦と上海のユダヤ難民
五 指定地区

第6章 解放の年
一 解放
二 活動再開
三 大戦後のジョイントの救援活動
四 イスラエルへ

終章 なぜアウシュヴィッツは爆撃されなかったのか
一 アウシュヴィッツ
ニ アメリカ政府とユダヤ人社会
三 ローズヴェルト大統領の評価
四 ベルリン、1998年

註記
あとがき

図版出典一覧
略語一覧
事項索引
人名索引


Author
丸山 直起 Naoki Maruyama
1942年、長野県生まれ。1965年、早稲田大学政経学部卒業、1973年、一橋大学大学院単位取得退学。小樽商科大学、国際大学、明治学院大学で教える。明治学院大学名誉教授。法学博士(一橋大学)。専門は国際政治学・外交史。主な著書に『太平洋戦争と上海のユダヤ難民』(法政大学出版局、2005)『ポスト冷戦期の国際政治』(共編、有信堂、1993)『アメリカのユダヤ人社会』(ジャパンタイムズ社、1990)『国際政治ハンドブック』(共編、有信堂、1984)など。

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