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植民地支配の歴史を生きた者たちの、人種と性をめぐる抑圧と懊悩を、ノーベル賞作家が鮮烈に描いた、濃密な、狂気の物語。語りと思考のリズムを生かした新訳決定版。
「父さん、許して、そんなつもりじゃなかった、愛してる、だからやったの」
20世紀初頭の南アフリカ。異人種間の結婚や性交が禁じられていた時代。白人と褐色の肌の人々が生きる隔絶された空間で事態は推移する。石と太陽で造られた屋敷の仄暗い廊下では、昼も夜も時計が時を刻む。
孤独で不美人な未婚の娘マグダ、農場を支配する厳格な父、使用人ヘンドリックと美しく幼い花嫁、不在の兄。肩の上に一気に手斧が振りあげられ、ライフル銃の薬莢が足元で音を立てる。やがて屋敷の秩序は失われ、暴力と欲望が結びつく……。
ノーベル賞作家が、検閲の網をかいくぐり、植民地社会の歴史と制度への批判をこめて織りあげた幻視的長篇。新訳決定版。
[出版社より]
「欲望、堕落、幻想を見極めようとする力作」
──オブザーバー紙
「めくるめく緊迫感が最後までゆるまない筆致」
──デイリーテレグラフ紙
著 者|J・M・クッツェー
訳 者|くぼたのぞみ
出版社|河出書房新社
定 価|2,900円+税
判 型|四六変型判/上製
頁 数|260
ISBN|978-4-309-20907-4
初 版|2024年07月
Author
J・M・クッツェー John Maxwell Coetzee
1940年南アフリカ生まれ。現在の世界文学を代表する作家のひとり。74年『ダスクランズ』で作家デビュー。『マイケル・K』(83)と『恥辱』(99)ではブッカー賞受賞。2003年ノーベル文学賞受賞。
Translator
くぼた のぞみ Nozomi Kubota
北海道生まれ。翻訳家、詩人。『J・M・クッツェーと真実』で読売文学賞受賞。訳書にクッツェー『マイケル・K』、アディーチェ『なにかが首のまわりに』『アメリカーナ』ほか多数。
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